第四章「ハイパー小江戸川越デートタイム~強敵現る!?~」
第26話「猫系女子VS犬系女子~三人でランチタイム~」
「今日もカップラーメンは至高ね」
「ああ」
いつもの合宿所。
俺は西亜口さんと日常となったカップラーメンタイムを楽しんでいた。
「今日も元気だ! 弁当がうまーい!」
そして、里桜が加わっていた……。
「あら、あなたもいたのね? 存在感が希薄だから気がつかなかったわ」
「気づいてよーーーーーーーー!? めっちゃガツガツ弁当食べてるよ!」
西亜口さんの冷たいツッコミに里桜が過剰なリアクションで応える。
「……あなた、わたしがカップラーメンにお湯を入れにいっている間に忍び込んでいたのね。泥棒猫みたいな女ね」
「えぇえっ!? 一応、今日行くって祥平にメール送っておいたんだけど!?」
「……ああ、そういえば。そんなメールも来てたらしいわね。わたしも見せてもらったけど、わたしロシア語しか読めないので気がつかなかったわ」
「いつも授業受けてるんでしょ!?」
「あれは生き別れの姉が授業受けてるのよ。わたしはお昼だけ食べに来てるの」
「そうなの!?」
さすが西亜口さん、メチャクチャなことを言って里桜を混乱させている。
しかも、脳味噌筋肉な里桜は信じそうになっていた。
「冗談よ。今のはロシアン・ジョーク。まあ、いいわ。許可するわ」
「あ! そうだ! おかーさんの手作りプリン持ってきてるんだ!」
「ふにゃあっ!?」
里桜は保冷材入りのバッグから梅香さんの手作りプリンを三つ取り出した。
今回は通常サイズである。
しかし、西亜口さんにはあの出来事はトラウマになっているのだろう。
奇声(というか猫声)を上げて動揺している。
「ききき、昨日のことは忘れなさい! 祥平も! 里桜も!」
急激にポンコツ化し始める西亜口さん。
いつもクールなのにパニックになりやすい。
クーデレならぬクーパニ(?)なのか。
「って、あたしの下の名前呼んでくれた! いえーい!」
里桜は変なところで喜んでいた。
「べべ、別にあなたを友達として認めたんじゃないからね! というよりも北瀬山って苗字が呼びにくいってだけよ! 勘違いしないでよね!」
なんかちょっと今のはツンデレっぽい。
まだまだ西亜口さんの生態には謎が多い。
クーデレなのかヤンデレなのかツンデレなのか。
「……ともかく。今はカップラーメンを食べるわ。カップラーメンの麺が伸びてしまうのはカップラーメンの神への冒涜になるから。なので今は全身全霊全力でカップラーメンを食べるのよ。ほら、祥平も」
カップラーメンへの崇敬がすごいな。
もはやカップラーメン教の教祖になれるレベル。
「んじゃ、まずはラーメンを食べるか」
ちなみに今日のカップラーメンはご当地ラーメン(佐野ラーメン)。
西亜口さんは、ネギ味噌ラーメンだ。
今日も西亜口さんの持ってきたカップラーメンはうまい、うますぎる。
「うぅ、カップラーメンおいしそうだなぁ~」
里桜から恨めしげかつうらやましそうな声が発せられた。
「……あなた、昨日、わたしのカップラーメン生活を健康に悪いとかなんとか言って否定してたんじゃないかしら?」
「うぐっ!? そ、それはぁ~……だけど、目の前でおいしそうに食べられると心が揺らぐ!」
「ふむ……」
西亜口さんは箸で麺を摘まんだまま、里桜に見せつけるように揺らし始めた。
「ほぉーら、ほら、そんなに食べたいのかしら? この濃厚なネギ味噌ラーメンを!」
「うぐぐっ……た、食べたいっ……!」
「浅ましいサムライね。まるであなたはお腹を空かせた浪人のよう」
カップラーメンという優位性を手にしている西亜口さんは、再び余裕を取り戻していた。
「ど、どうか、拙者に武士の情けを……!」
「わたしは武士じゃなくて日露ハーフよ。情けという概念はないわ」
里桜が武士のような口調になり土下座せんばかりの勢いで頼むが、西亜口さんは冷たく斬り捨てる。さすが日露ハーフ。おそロシア。
「そ、そこをどうにか! このとおりでござる!」
「……ふぅむ……まぁ、そこまで言うなら仕方ないわね。わたしは気まぐれなのよ。許可してあげるわ」
西亜口さんはズルルッと麺をすすると、カップラーメンを里桜の前に置いた。
「わーい!」
里桜はカップラーメンを両手で引き寄せると、ズルルルル~! と激しく音を立てて勢いよくラーメンを食べ始めた。
「ふふっ、犬のように浅ましいわね。今日からあなたはポチよ。北瀬山ポチ。語呂的にもいいわね」
「って、あたし犬扱いされてる!? ま、いいか! ラーメンおいしいし!」
里桜のメンタルも強いんだか弱いんだかわからないな……。
ともあれ、俺もラーメンを食べることに集中した。
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