シベリアからやってきた日露ハーフツンドラ美少女はクールでエキセントリックで殺伐としているけれどポンコツでかわいくて俺のことが大好き!?
第17話「ラブコメ怪文書永久保存と日露ハーフ式エキセントリックチャット」
第17話「ラブコメ怪文書永久保存と日露ハーフ式エキセントリックチャット」
俺は今送った原稿を破棄するようにメールして、すぐに修正済み原稿を送った。
しかし……。
西亜口さんからメールが返ってこない。
「……まさか西亜口さん、さっき送ったほうの原稿読んでるんじゃないだろうな? うわあ……やばい、あんな怪文書を西亜口さんに読まれたら!」
我ながらキモいものを書きすぎた。下手すれば通報されるレベル。
やがて、スマホが震えた。
俺は審判を待つ罪人のような気分でメールを読んだ。
『あなたわたしを殺す気?』
『だから、かかかかかわいくないって言ってるでしょうが!』
『わたしはかわいくにゃいのよ!』
『やっぱりあなたは危険人物ね。最重要危険人物だわ!』
西亜口さんから怒涛の勢いでメールが返ってきた。
西亜口さんにかなりのダメージを与えることができたようだが、俺自身のダメージも甚大だ。
少しして、西亜口さんからさらにメール。
『修正済原稿のほうも読んだわ。アップするなら修正済みのほうがいいわね。まあ、修正前のほうが破壊力あるけど通報レベルだわ。一応記念に保存しておくわ』
記念って、なんの記念だ。
『記念というより証拠? あなたが最重要危険人物であることがこれでハッキリしたわ。印刷して子々孫々に語り継いでいけばこの怪文書も三百年後くらいには古文書としての価値を持つ日が来るかもしれないわね』
そんな歴史の残り方は嫌だ!
って、西亜口さんまで怪文書だと思っているのか!
「あんな怪文書が保存されるなんて拷問すぎる!」
西亜口さんにデータを削除するようにメールで頼んだが――。
『嫌よ。ここまで見事な怪文書はなかなかないわ。未来永劫残しておくべきよ。そして、あなたがわたしを裏切るようなマネをしたときは、これを全世界に流出させる』
「ぎゃー!」
俺は頭を抱えた。
西亜口さん、えげつない。
おそロシア。
「ま、まぁ……冗談だよな?」
どうか冗談であってほしい。
西亜口さんはどこまで冗談でどこまで本気なのか判別がつかないから困る。
「ともかく、小説アップするか……」
しかし、ファンタジーを書くときよりラブコメのほうがスピード上がるな。
まあ、西亜口さんとの実際の会話を元にしているので楽という面はあるが。
「よし、投稿だ」
怪文書のほうを選択しないように気をつけて、ちゃんと修正済のほうをコピペして投稿した。
「やはり世の中はラブコメブームか……」
俺がこれまで書いていたファンタジーよりもブクマの伸びがよい。
そして、キャラも生き生きと書けている。
「当たり前だな。実際に生きているキャラ……西亜口さんをモデルにして書いているんだから」
しかし、西亜口さんは存在自体がエキセントリックだな。
こうして改めて読み直してみると、その奇抜さがわかる。
『ネットにアップされたほうも読んだわ。わたしってこんなにエキセントリックだったかしら?』
エキセントリックモードの西亜口さんはパニック状態みたいになってからな。
本人も必死なのだろう。
しかし、服を脱いでパンツ一丁になれという指示はメチャクチャだった。
小説の感想欄に「こんなこと実際にあったらいいな」とか書かれたが、これは実際にあったことなのだ。
『まあ、今日はこんなところで勘弁してあげるわ』
『というか、わたしのメンタルも持たないわ』
西亜口さんから次々とメールが来る。
って、ここまで頻繁だとメールじゃないほうがいいのでは……。
俺は西亜口さんにチャットアプリを使うことを提案した。
『べ、別にスマホのアプリの使い方を知らなかったんじゃないからね!』
西亜口さんは文明の利器を使いこなせないタイプのようだった。
本当にスパイなのか?
ともかく、俺は西亜口さんはチャットアプリを通して会話することにした。
俺:会話テスト
西:爆発しなさい
いきなり不穏なコメントが投稿された。
俺:西亜口さん、いきなりどうしたの?
西:日露ハーフならではのコメント投稿テストよ。爆殺!
そんなものあるのか。
まぁ、どう考えても西亜口さんオリジナルだろうけど。
西:これだと楽に会話できるわね
俺:ああ。それじゃ今度はメールじゃなくてなんかあったらこのチャットアプリで。
西:了解よ。これであなたを常時監視できるわ。
いや、監視はやめてほしいのだが……。
ほんと、俺の生活は西亜口さんに支配されつつある気がする。
西亜口さんとの距離がここまで縮まるなんて、少し前まで思いもしなかったな。
一気に縮まりすぎな気もするが……。
「昔、幼稚園の頃に遊んだ子が……まさか本当に西亜口さんなのか?」
西亜口さんと話していると懐かしい気分になる。
すでに昔会っていたあの子なら、そう感じてもおかしくない。
「でも、髪の色については答えてもらえなかったしな……」
ただ、あそこまで慌ててトップシークレットだのノーコメントだの言うところは怪しい。
しかし、あのあとに訊かれた『約束』というものについて俺はまったく覚えがないのだ。
「うーん……ま、いいか。そのうちわかる日も来るかな……」
さすがに幼稚園の頃の会話まで思い出すのは難しい。
ただ、その女の子と一緒に遊んでいたときは楽しかった覚えはある。
「ともかく、明日以降の更新分も書きためておくか」
基本的に俺はボッチなので、やることと言えば読むか書くかだ。
創作意欲が高まっているし、こういうときに執筆しておこう。
俺は再びパソコンに向きあうと、軽快な指使いでタイピングを始めた。
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