21 ドラゴン退治にゃ~
「にゃんだ~。ドラゴンにゃんて居ないにゃ~」
ドラゴン捜索を始めて一時間、探知魔法を飛ばしながら竜の山の頂上まで登って来たのだが、ドラゴンの姿なんてどこにも見付からなかった。
「どこかに横穴があるんじゃない?」
「そんにゃおっきな穴にゃら、気付いてもおかしくないんだけどにゃ~……裏側かもしれにゃいし、そっち見に行こうにゃ~」
ここまで来てドラゴンを拝めず帰るのはちと寂しいので、わし達は煙の立ち上がる山頂をぐるっと回る。そうしてわいわいと火口を見ながら歩いていたら、コリスの頭の上に電球が浮かび、背中に乗っていたべティが
「つぅ~……かすった……実体があったわよ!」
「にゃんの話??」
「だから、コリスちゃんの頭の上に電球が出たのよ!!」
わしは見ていなかったから理由を聞いたらべティの焦りはわからないこともないが、電球が出たということは何かに気付いたこと。コリスが忘れないうちに聞いてあげる。
「にゃんか思い付いたにゃ?」
「このあな、おっきくな~い?」
「この穴って……火口のことにゃ??」
「そう。おっきいにゃ~」
「ああ。にゃるほど……さすがコリスにゃ~」
「ホロッホロッ」
コリスがいいことを教えてくれたので、撫で回したらご満悦。あ~んしてたからケーキを入れてあげたら、超ご機嫌だ。
「ドラゴンも見付かってないのに何してんのよ」
「にゃ? べティは察しが悪いにゃ~」
「察しが悪い??」
「ま、わしも人のことを言えた義理はないけどにゃ。わしもべティも、まだまだ頭が堅くてファンタジーについて行けてなかったにゃ~」
「頭が堅いって……あっ!」
「うわ~だよ~!」
べティの頭の上にも電球が浮かんだと思ったら、その上に乗っていたノルンが飛んで行った。どうやらこの電球は、人の頭の中央から直に出ているようだ。
この事態にも驚きだがノルンは空を飛べるから大丈夫そうだったので、べティは話を続ける。
「つまり、ドラゴンならばマグマにも適応できている可能性があるのね!」
「ご明察にゃ。コリスは賢いにゃろ~?」
「エライエライ~」
「ホロッホロッ」
べティに撫でられたコリスはご満悦。わしを見てあ~んしてたからチョコを入れてあげた。こっちが目的だったのかも?
コリスのおかげでドラゴンの住み処の当たりは付いたが、火口に下りるには熱やら有毒ガスで死に兼ねないので、皆にわしお手製魔道具を配布。
熱羽織という体温が常に平熱で守られる魔道具と、空気を作り出す魔道具を内蔵したマスクを使えば、直接マグマが掛からない限り大丈夫だろう。
マグマには猫耳マントで対応。超強かった生き物の皮で作られているので、マグマが少し掛かった程度ならなんとかなると思う。
わしとコリスには必要ないと思うので、アオイにはリータの猫耳マントを渡し、べティにはわしの猫耳マントを貸してあげようかと思ったら、収納袋から猫耳マントが出て来た。
「べティもそれ、作ってたんにゃ……」
「エミリがお揃いがいいって言うから……」
わしとしては猫耳マントが流行っているのが嫌なのでしかめっ面。べティは嫌なら断ればよかったのに……
準備が整ったら、アオイが止めるのを聞かずに崖をぴょんぴょん飛び下りる。
「おお~。アレ、ドラゴンじゃにゃい? マグマの温泉に浸かってるにゃ~」
その途中、少し見えづらいがマグマの中に巨大な赤い物体が目に入ったので皆に教えてあげた。
「デッカ……あんなの見て、よくのん気にしてられるわね」
「そそそ、そうですよ! アレはドラゴンの最上位種……紅蓮竜ですよ! に、逃げましょう!!」
全長30メートル以上のドラゴンならば、べティが怖がっても仕方がない。この世界の住人に有名ならば、アオイが恐怖に震えても仕方がない。
「あ、べティはやりたくないんにゃ。じゃあ、わしが一人でやるにゃ~。写真だけお願いにゃ。かっこよく撮ってにゃ~?」
「どこまでのん気なのよ……」
「逃げましょうよ~」
べティにカメラを預けたら呆れられ、アオイは帰りたそう。しかし、一人で逃げるにも急勾配の山登りが待っているので、危険は一緒。コリスと一緒に居るほうがまだ安全なので動けなくなっている。
火口の一番下まで滑り下りたら、わしは皆の心配を他所に歩き出した。
「もう撮ったから、さっさと行きなさいよ」
わしが途中で振り向いてピースを何度かしたら、べティに冷たい声で怒られたので、真面目に歩き出したのであった。
* * * * * * * * *
「グオオオオォォォォ!!」
シラタマが近付くと紅蓮竜は大きな体を動かし、マグマを撒き散らして
「シ、シラタマさん、大丈夫なんですか!? もう、シラタマさんには犠牲になってもらって逃げたほうがいいんじゃないですか!?」
トンでもなく焦っているアオイは、シラタマを
「またピースしてるから大丈夫じゃない? てか、ピースすんな! シャッターチャンスはあたしが決める!!」
いや、なんだかべティはムカついている模様。最初は怖かった紅蓮竜でも、シラタマがここまで余裕を見せるので怖くなくなったようだ。
「あっ! ブレスが!!」
「大丈夫そうね」
「なんですかあの光の盾は!?」
「だからこっち見るな!!」
紅蓮竜から放たれた炎のブレスは、シラタマの魔法【光盾】で完全にシャットアウト。後ろを向いてポーズまで決めてるので、べティはシャッターは切らず。
「来ました!」
「よし! いまのはいい一枚が撮れたかも」
「なんで紅蓮竜が横に跳んだのでしょう……」
「シラタマ君が何かしたんでしょ。だから、なんなのよそのポーズ!」
シラタマのポーズは、サイドチェストからのフロントダブルバイセップス。突撃して来た紅蓮竜の顔を殴ってぶっ飛ばしたから、ボディービルのポーズで筋肉アピールをしていると思われる。
「グオオオオォォォォ!!」
それで怒った紅蓮竜は、翼をはためかせて空中からマグマ弾を発射。その燃える岩は、シラタマを押し潰したように見えた。
「真っ二つに割れた……」
「かっこつけてないで後ろ見ろ! こっちに転がって来てんのよ!!」
紅蓮竜の放ったマグマ弾は真っ二つ。シラタマが刀を掲げてかっこつけているところを見ると、刀で斬ったアピールをしてるっぽい。
しかし、べティの怒鳴り声が聞こえたのか、めっちゃ焦ってマグマ弾を追いかけて斬っていたので、そこもべティに激写されていた。
「すっごい空中戦です……」
「なに遊んでんのよ……ちょっとかっこいいけど……」
上空では、紅蓮竜の放つブレスや魔法をシラタマが刀で斬ったり魔法で打ち消したり。それを空を駆け回りながら行っているので、アオイだけでなくべティも感動しているようだ。
「あっ……」
「シャッターチャンス!!」
ラストは、シラタマの刀による一刀両断。紅蓮竜は首を切断され、地面に落ちて行くのであった……
* * * * * * * * *
「ドラゴン……討ち取ったりにゃ~! にゃ~はっはっはっはっ」
わしはいまだに消えていない紅蓮竜の頭に乗り、刀を掲げて決め顔。
「はいはい。もう撮ったわよ」
「じゃあ、次はあっちから撮ってにゃ~」
「シラタマ君はもう三枚も撮ったんだから、代わってよ~」
べティはわしの指示を聞いてくれずに紅蓮竜の頭に登って来たので致し方ない。わしはカメラを持ってベストポジションに移動する。
「アオイさんも撮って欲しいにゃら急ぐんにゃよ~?」
「いいんですか!?」
アオイは指を
「あ、ありがとう……」
「にゃはは。気にするにゃ~」
わしに掛かれば一瞬で落下地点に入れるので、アオイはお姫様抱っこでキャッチ。お礼を言うアオイに笑顔で答えたら……
「シラタマ君の歯がキランと光った!? 何その王子様エフェクト!!」
なんか光ったらしい。べティはそこも激写してたっぽい。
「かっちょいい~。ヒューヒュー」
「ヒューヒューなんだよ~」
「にゃにからかってるにゃ~」
「アオイちゃんも満更でもない顔をしてるわよ~? きゃはっ」
「ちっ、ちがっ……」
「真っ赤なんだよ。きゃははは」
「違いますから~!!」
「「きゃはははははは」」
べティ&ノルン、絶好調でウザイ。わしより反応のいいアオイをターゲットにしてるから、まぁいっか。
アオイがからかわれる中、わしはドロップアイテムを回収。魔物を倒すと、普段は魔石とアイテムがひとつずつ出るのだが、何故かいっぱいあるので全てを集めたら、涙目のアオイの前に並べて見せる。
「こんにゃにいっぱい出たんにゃけど~?」
「あっ……紅蓮竜はレイドボスでした……冒険者10組以上で挑む敵だから、量が凄いんですよ!」
「ふ~ん……ここから山分けするんにゃ。絶対に揉めるにゃ~」
「そこはですね。活躍した人からいい物を取っていくんです」
聞けば聞くほど揉めそうな話。ただ、アイテムを全て確認したら、ほとんどが魔石と肉。次に多いのがウロコで、その次が爪や牙。レアアイテムだと思われる物は、剣や装備品が七個程度。
素材関係が多く装備品が極端に少ないので、活躍した人以外は同じ物になりそうなので確かに揉め事は少なくなると思われる。
「せっかくにゃし、記念にその指輪あげるにゃ~」
「こんな高価な物を……いいのですか??」
「いつもトラブルに巻き込んでるお詫びにゃ~」
「あ、ありがとうございます!」
アオイにはレアアイテムの中で一番ショボイ物を贈ったつもりだったが、右手薬指に嵌めた指輪を見ながら「えへへ~」とか言って嬉しそう。
「あらやだ奥さん。あの猫、妻子があるのに指輪なんて贈ってざますわよ」
「本当ざますだよ。二号さん……いや、これで何号さんざますだよ~?」
「あたしが知るだけで、五人目ざ~ます」
「もっと居るかも知れないざますだよ~」
それを見ていたべティ&ノルンは、おばちゃんみたいな仕草でずっと変な喋り方をしているのであった。
「「ひどい夫ざますぅぅ」」
「無視してるんにゃから、そういうのは聞こえてないところでやれにゃ~」
二人をかまうとうっとうしいので無視していたが、一向にやめないので、ついついツッコンでしてしまうわしであったとさ。
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