10 仕事の成果にゃ~


 煙玉を使ってかっこよく逃げようとしたアオイはわしに捕まって涙目。周りに迷惑を掛けたこともそうだが、かっこつけたのに煙が晴れたらその場に居たのでは恥ずかしかったみたいだ。


「これからギルドに報告に行くのに見ていかなくていいにゃ? 二度手間にならにゃい??」

「う~ん……そっちのほうがいいかも? そのあと、帰っていいの??」

「好きにするにゃ~」


 わしが止めたのは、わし達を見張っていた人物が最後まで見届けないのはダメなのではないかと思ったから。おそらくだが、わしはこの一日で大金持ちになっているはずだから、教えてあげたほうがアオイの為になるだろう。

 とりあえずアオイも納得したようだから町に入る冒険者の列に並んで、もう少しでわし達の順番になった頃に、べティが見当たらない。なのでコリスに頼んで高い高いしてもらったら、離れたところで後ろを見ていた。


「べティ~! いっつもにゃんで遅れてるにゃ~!!」

「あっ! ごめ~ん。すぐ行く~~~!!」


 べティが合流したら、門兵に身分証明書の冒険者カードを見せて通してもらう。その時アオイのカードを見て門兵が驚いていたが、アオイは黙っているようにとペコペコ頭を下げていた。

 中に入るといちおうアオイを見張りながら歩き、冒険者ギルドに着いたら報告アンド買い取りカウンターに向かい、受けていた依頼の書類を提出する。


「薬草の採集ですね。どちらにお持ちなのでしょうか?」

「えっと……アイテムボックスってわかるかにゃ?」

「あ、はい。新人なのにお持ちだったのですね」

「その中にいっぱい入ってるんにゃけど、このカウンターに出していいのかにゃ?」

「大丈夫ですよ」

「本当にゃ~? いっぱいあるんにゃよ~??」

「そんなにもったいぶっても、恥を掻くのはそちらですよ」


 わしが忠告したら、ウサミミ受付嬢はムッとしている。なので……


「ドーーーンにゃ~」

「はい??」


 と言いながら、次元倉庫のカモフラージュで持っていたショルダーバックを引っくり返し、その中で次元倉庫を開いて薬草をドボドボ出して山積みにしてみた。


「にゃっとっと。そっち落ちてないにゃ?」

「な、なんでこんなに持ってるんですか!?」

「だからいっぱいあるって言ったにゃ~」


 忠告したのに、ウサミミ受付嬢は酷い。しかし我に返ってからは、申し訳なさそうにしていたので許してやった。


「数えるのに少々時間をいただきたいのですが……」

「チョロまかしたりしないにゃ~? わし、数をメモってるから、大きく離れてたら怒るにゃよ??」

「もちろんそんなことはしません! 信用に関わりますから!!」


 本当は面倒だから数えていないので、釘を刺す為にわざと周りに聞こえるように言ったら、ウサミミ受付嬢はそれよりも大きな声で反論していたので、やらないと信じることにした。


「それで~……薬草採集してたら、魔物がいっぱい襲い掛かって来たから倒したんにゃけど……」

「いっぱいって……数は把握してないのですか?」

「200以上はあるのはわかるんにゃけどにゃ~。戦いながら数えていたから、途中でわからなくなっちゃったんにゃ」

「200!? ……別室で伺います」

「お茶も出してくれにゃ~」


 一人ではお手上げっぽいので、ウサミミ受付嬢はギルド職員を集めるように指示を出してから、わし達を会議室のような場所に監禁。いや、案内。

 そこで「あるだけ出せ」と丁寧な口調で言われたので、今日の成果を部屋の中央に山積みにしてあげた。


「ありえない……魔石が500個は軽くある……」

「お茶はまだかにゃ~?」

「しょ、少々お待ちください」


 ドロップアイテムの数々を見たウサミミ受付嬢はVIP対応に変わったので、お茶だけでなくお菓子まで持って来てくれた。

 どちらも「いまいちだよね~?」と皆で喋っていたら、キチンとした制服を着た二足歩行のエリマキトカゲが揉み手で入って来たので、ドキッした。さすがにキモイんじゃもん。

 しかし、わしも似たようなモノなので口には出さず、何者かと聞いてみたら、ここのギルマスとのこと。わし達に挨拶しに来たらしい。

 「新人に挨拶に来るなんて暇なのか?」と嫌みを言ってみたら、ゴマ擦りに来たんだって。めっちゃ両手をこすって隠すこともしやがらない。


「超大型新人の加入……アザース!」

「超大型って言われてもにゃ~。わしとコリスはゼロレベルにゃよ? 知ってるにゃ??」

「それは何かの間違いですよ~。そうだ! 魔物を倒したのならば、冒険者カードの更新ができますので、このギルマスみずから手続きして差しあげます!!」

「更新にゃ? あ~……ランクアップしてくれるんにゃ~」

「ランクアップもそうですけど、一番の目的はレベルアップです」


 ギルマスいわく、魔物を倒すとドロップアイテム以外にも経験値なる物がカードに溜まり、ギルドで手続きすることによってレベルが上がるそうだ。


「最初の説明で聞いてないんにゃけど……」

「も、申し訳ありません! なにぶん一般常識ですので……市民カードでも魔物を倒すと経験値は溜まりますので、説明は省いてしまったのでしょう。しかし、このことを知らないなんて……」

「わし達は田舎者だからにゃ。それでいいにゃろ?」

「ははっ! その言葉だけで十分で御座います~」


 説明が面倒なので少し脅してみたら、ギルマスは察してくれたみたいだ。たぶん、いま出した物だけでも買い取りたいのだろう。

 ギルド職員がいそいそと仕事をする中、ギルマスはてきぱきとわし達のカードの処理をしてくれているが、何度も困った顔をしている。……と、思われる。エリマキトカゲの顔色はよくわからん。


「にゃんか問題でもあったにゃ?」


 処理を終えたように見えたのに、ギルマスはわし達のカードを取っ替え引っ替え水晶にかざしては首を傾げているので、わしから質問してみた。


「い、いえ……いえ? いえいえ~」

「問題があるにゃら隠さず言えにゃ~」

「じ、実は……」


 ギルマスが言うには、今日一日で魔物を倒しまくったので、大量の経験値が入ったのは予想の範疇はんちゅうでレベル爆上げも予想通りだったのだが、わしとコリスのレベルがゼロのままだから、どう知らせていいか悩んでいたそうだ。


「あ、別にわし達はレベルとか気にしてにゃいから、そっちも気にしないでくれにゃ」

「あたしは気になる!」

「ノルンちゃんもだよ~!」

「わしが嘘言ってるみたいににゃるから黙ってろにゃ~」


 べティとノルンが身を乗り出すので、二人のカードを返してらった。


「見てみて! レベルが22も上がったわよ!!」

「近すぎて見えないにゃ~」


 べティは興奮して、わしの顔にカードを押し付けて来るからさっぱり見えない。


「凄いんだよ! ノルンちゃんのレベルは41になってるんだよ! ステータス鬼上げなんだよ!!」

「人の迷惑になるから飛び回るにゃ~」


 ノルンも興奮して部屋の中を凄い速度で飛び回るので、ハエ叩きが欲しくなる。


「なぬ!? あたしの力も増えてる……あっ! かっる~い」

「わしは元々軽いにゃ~」

「あははは。そ~れ!」

「投げるにゃ~!!」


 さらにべティが調子に乗って、わしを高い高いしてから勢いを付けて投げるものだから、天井に頭をぶつけたのであったとさ。



 レベル爆上げで調子に乗っている二人には、コリスのモフモフロック。強制的に黙らせたけど、ノルンは食べたの? 頬袋の中に居るのですか。そうですか。


 ちょっとこのあとどうなるかわからないけど、静かになったのでわしはギルマスとの話に戻る。


「にゃるほどにゃ~。レベルを上げるにはギルドに顔を出さないとダメなんにゃ~。ランクを上げるには、やっぱりそのレベルが関係しているにゃ?」

「はい。いえ……」

「どっちにゃ??」

「結局のところ依頼をこなしてランクが上がるので……その依頼の危険度をレベルで区切る場合がありますので、どちらとも言えないのが実情です。それにパーティランクもありますから、低レベルでも一緒に依頼を受けることができますし……」

「つまり穴だらけってことだにゃ」

「はあ……こんな無茶苦茶な人は始めてで……あははは」

「そりゃすまないにゃ~。にゃははは」


 ギルマスが困った感じで空笑いしていたので、わしから笑い掛けて本当の笑顔に変えてあげた。でも、口がパカッて開いてるのは笑顔なのかな?


「そんじゃあ、わし達のパーティランクを、ギルマスの力で三番目ぐらいに設定しておいてくれにゃ」

「私なら二番目までならできますが……」

「そこまでしたら、周りが騒ぐにゃろ? それに、あまり制約は掛からないんじゃないかにゃ~?」

「たしかに周りから変に意識されそうですね……わっかりました。そのように手配しましょう!」


 こうしてわし達の初仕事は、ギルマスにめっちゃ感謝されてウィンウィンの関係を築くのであった。


「あ、その魔剣は売ってくれないのですか?」

「全部売り払うわけないにゃろ~」

「そこをなんとか!!」

「一本ぐらいは残させてくれにゃ~」


 商談に発展したら、わしはケツの毛までむしり取られそうになるのであったとさ。



「……以上、総額はいま説明した通りなのですが……一括は勘弁してください! どうかどうか……お許しを~」

「誰も根こそぎ寄越せにゃんて言ってないにゃ~」


 今日の成果は、町が傾くほどの金額になったので、ウサミミ受付嬢が異常に懇願して来て人聞きが悪い。まるでわしがヤクザな取立て屋みたいだ。


「そうだにゃ~……一番高い宿屋で十泊できるぐらい貰っとこうかにゃ? それを元に生活費も付けといてくれにゃ~」

「かしこまり!」


 まずは遊行費。これだけあれば、しばらく遊んで暮らせるだろうから、残りはギルドの銀行に振り込んでもらう。売り捌いてまとまった金額になってからの振り込みらしいので、わしがこの世界に居る間に全額振り込まれるかはわからない。

 金貨がパンパンに入った皮袋をふたつ受け取ると、冒険者ギルドでの用事は終了。外に出たらアオイがそわそわしていたので声を掛けてあげる。


「あ、もう行っていいにゃよ? お仕事お疲れ様にゃ~」

「はい! お疲れっした~~~!!」


 アオイはわしから逃げ切れる自信がなかったので、開放してくれるのを待ってたっぽい。わしが労いの言葉を掛けると、嬉しそうに跳んで行ったのであった。


「あのさ~……」


 アオイを見送ったらべティが話し掛けて来た。


「にゃに?」

「いまから宿を探すのよね? 城に泊まらないんだったら、滞在場所を教えてあげなくてよかったの?」

「にゃ!? すっかり忘れてたにゃ~」

「シラタマ君も抜けてるけど、あの子も大概ね」

「わしのどこが抜けてるにゃ~」

「その顔、その頭」

「ひどいにゃ~~~!!」


 べティがわしのことを愚弄するので「にゃ~にゃ~」喧嘩。しかし、べティからもうひとつの忘れ物を指摘されて、わしは慌ててコリスに口を開けてもらった。


「コリスの口の中は宇宙だったんだよ……」


 そう。ノルンが居なかったのを指摘されて、コリスの頬袋に収納されていたのを忘れていたのだ。そのノルンは、何やら悟りを開いたようなことを言っているから大丈夫っぽい。


「ほら? 抜けてるのは顔だけじゃないでしょ??」

「頭は認めるから顔は勘弁してくれにゃ~」

「わかった……いや、それって逆じゃない?」


 どうせバカにされるなら、どちらかと言うと見た目に触れて欲しくないわしであったとさ。

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