乗法無尽
たかみ真ヒロ
イントロダクション
勝利者の報酬
WMT決勝。俺は最早、切っても切れないであろう縁に導かれて、主将戦でセリカと戦う。両チームの他のメンバーはすでにぶっ倒れて、立っているのは、俺とセリカのみ。勝利数2対2で迎えたこの戦い。精神状態はお互い最高の状態。観客席での楽団の太鼓が一段と早くなる。その音が臨界点に達した時、ドラの音が鳴り響いた。その音と同時に俺もセリカも互いに斬りかかる。俺は上から、セリカは下から。キーンと金属がぶつかり合う音。互いに譲らない。一瞬の硬直ののち、互いが息を合わせたように斬り合いが始まる。
「あんたまともにやったらこんなに強かったのね。知らなかったわ。」
そんな最中でも余裕なのかセリカは話しかけてくる。余裕みたいだな。ピッチ上げるか?俺は聞く。
「別に構わないけど、その前に、あんたがこれに負けたらあんた、私の男になりなさいよ。」
思わず身体が硬直し、セリカの向けた剣先が俺の右頬をかすった。俺は後ろに下がり、そして思わず笑みがこぼれた。
「何笑ってんのよ。」
そう言いながらもセリカも笑っている。多分、似た者同士なんだろう俺たちは。転生してきて、それでもその現実を斜めからしか見られない。じゃあ、こういうのはどうだ?俺が勝ったら、お前は俺の女になる。思い切って言ってみる。
「ふふふ。お互い言いたいことは同じ。」
そうだな。だけど、勝ってそれを得るか、負けてそれを得るかは大きな違いだ。お互い思っていることは一緒のようだ。最初に動いたのは俺からだった。持っていた剣を捨て、光の精霊を呼び出し、新たに光の剣を具現化する。
「あんた、それ使う気?なら私も。」
そうして、セリカも剣を捨てると呪文を唱え、土の精霊の剣を具現化させた。
「おい!お前ら馬鹿か!」
「ちょっと、セリカ流石にそれで戦うのは…」
両チームの仲間たちが一斉に文句を言い始める。俺とセリカは互いに目線を合わせ笑い合う。絶対に大丈夫さ。セリカなら。多分、向こうもそう思ってるんだろう。俺とセリカは一気に間合いを詰めた。
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