第23話 サバゲー大会③
俺は一般実験棟に向かった。サバゲーの経験はない。おそらくMs.パンプキンもそうだろう。しかし、戦術というのはそう変わらないものだ。
オフェンスとディフェンス。
最初にあてがわれた一般講義棟を拠点として、Ms.パンプキンを守るディフェンス班。そして、アフロトカゲを倒すために行動するオフェンス班。この二つに分かれる。俺は、オフェンスだ。
「
無線で同じくオフェンスのミギマガリが尋ねてきた。
「こっちは大丈夫だ。
「問題なし」
「よし。ただ、ちょっと動きがわるいぞ。距離を置き過ぎだ」
「え? あー、すまん、昨日、ちょっと飲み過ぎてな」
「イベント前に何やってんだよ」
「わるいわるい。だから、今日は距離を置いて
「遅れたら見捨てるぞ」
「おっけー。そうならないようにはするつもりだけど、少しは
「?」
「何でもない。それより、ちょっと
「そうかもな。だが、みつからずに辿り着ければ奇襲できる。サバゲーの必勝方法は奇襲だってサバゲー同好会の奴らが言っていたからな」
「じゃ、こいつらが前線に来ればいいじゃん。何で後衛なの?」
「サバゲーは攻めるよりも守る方が難しいんだと。それにおまえらは敵が来るのを待っていられないだろ」
「違いないね。特に
ミギマガリが、ちゃかして言うと、無線の先でタマノコシが何やら
「タマの方はどうだ?」
「うちの方も誰もおらんで」
「よし、じゃ、進もう」
俺が告げると、タマノコシは、はぁ、とつまらなそうな声を
「何でこんなせこい進み方すんねん。もっと、バーッと行けばえぇやないの」
「セオリーなんだよ、サバゲーの。こうしないとあっという間にやられるぞ」
「ふん、クロやんも素人のくせに。調子にのんなや」
「まぁ、そうなんだけど。一応勉強したんだよ」
「だいたい、さっきからずーっとクロやんの後ろにドローンがついてきとんで。撮られてたら意味ないんとちゃうか?」
「全部のカメラが起動しているわけじゃない。ピエロ仮面がそのあたりは調整しているから、
「そうなんか。やけど、
「やめろ。高いんだぞ」
「はぁ、つまらんつまらん。お客さんも早くどんぱちが見たいって思うとるで。うちらのどん
「うっせぇ。
「亀ってトカゲ食うんか?」
「知らん」
俺の班は、遠回りして一般実験棟に向かっていた。背後をとって一気にアフロトカゲを仕留めてしまおうという作戦。
安直だが、こういう作戦がいちばん有効だ。
建物の裏を通って、俺達は一般実験棟へと向かった。敵とは
「おらぁ! かぼちゃのびびり共! 出て来やがれ!」
第二一般実験棟を抜けたところで、声が聞こえてきた。図書館の上だ。あんな目立つところでいったい何をやっているのかと思えばアフロトカゲ一派の奴らである。
「こそこそ隠れてないで出て来やがれ!」
わかりやすい挑発。少しはものを考えて動けないのだろうか。こんな挑発に乗るバカなどいないだろう。だとすればいい
「誰がビビりやねん! ぶっ殺したる!」
……いた。挑発に乗るアホが。
「おい、タマ、落ち着け」
「あんななめた態度取られて黙ってられるか!」
次の瞬間に、タマノコシの影が地を蹴った。やれやれとミギマガリと視線を合わせてから、俺達も後を追った。
そもそもこれは銃撃戦なのだ。射程は十メートル以上。とすると相手の前に身をさらすメリットはない。
身を晒したバカは、遠くから
あれ? これ? 肉弾戦しようとしていない?
ゲームの趣旨が変わっちゃうんだけど、と思いつつも、走り出したタマノコシを止める術を俺は持たない。
戦闘員はパワードスーツを身に着けている。身体能力は飛躍的に向上しており、いろいろな機能を備えている。腰に備え付けられたガジェットを使用すれば、図書館の壁くらい登ることができる。
「俺がタマを追う。ガリは
「オッケー。まったく困った姉さんだな」
俺達はそれぞれの役割を瞬時に判断して行動した。タマノコシは運動神経がいいのですぐに敗退することはないだろうが、今回は銃撃戦である。彼女の動物的な勘が通用するだろうか。
俺の不安をよそに、観覧ゾーンは盛り上がっていた。
「さぁ、ついに開戦の
ピエロ仮面の実況が聞こえてくる。図書館の上に陣取っているのは、アフロトカゲチームのオッドアイらしい。武闘派の彼とタマノコシが戦うとなれば、そのまま別のイベントになってしまう。
だが、これは銃撃戦だ。
タマノコシが、屋上に上がり切った直後。
ついに、銃声が響き渡った。
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