少年魔術師に返り討ちになった者のその後(202309改稿)

 ♦ ♦ ♦


「おい聞いたか?

 クリス達のパーティー・・・」


「ああ、アル達と決闘して、

 ぼろ負けしたらしいな」


「オイオイオイ、

 下剋上げこくじょうかよ」


「ついこの前まではアルをあごで使ってたのにな」


「ま、なんにせよ自業自得だぜ」


「だよな。

 今考えればアルを奴隷扱いだったもんな、

 あいつら」


 そんな風にアルとの決闘にも敗れ、

 冒険者としての実力だけでなく、

 その人間性をも問題視されるようになったクリス達。


 それによって、

 クリスの心の中にはかつてないほどの負の感情がうごめいていた。


「ふざけるな・・・!

 アルもあいつらも、

 皆・・・みんな馬鹿にしやがって!!」


 仲間二人が止めるのも無視して、

 無謀とも言える最大難易度のクエストに挑むクリス。


 ダンジョンの奥深くに潜むという、

根源こんげん』を滅するべく奥へ、奥へ・・・!


 しかし・・・、

 ほどなくしてクリスは力尽きた。


 偶然にもその場所は、

 アルがサーニャと共に巨大なドラゴンを倒した地点だった。


 全身傷だらけの上に周りを魔物に囲まれ、

 死が目前に迫ったクリスが抱いた感情は

 恐怖でも後悔でもなく、


 憎悪ぞうおだった。


「アル・・・、

 お前のせいで・・・、

 お前のせいでぇッ・・・・!」


【ほう、これはこれは……】


 突然、声がした。


 まるで頭の中に直接響くような・・・。


尖兵せんぺいとして送ったドラゴンが倒されたという事で出向いてみれば・・・。

 それとは別に、なかなかの素材に出会えたようだ】


 見れば周りの魔物たちも皆、

 クリスに襲いかかるどころか、

 動きを止めて固まっている。


 (この声に、

 萎縮いしゅくしているのか・・・?)


 クリスは思考する。


 ダンジョンの魔物たちを一斉に止めるほどの存在・・・、

 それはつまり・・・、


の・・・根源こんげん・・・?」


【その通り】


 その答えは自暴自棄だったクリスに、

 再び恐怖の感情を呼び起こした。


「な、何が目的だ・・・?」


【お前の体だ】


「なッ・・・!」


 思わず自身をかき抱くクリス。


 その様を面白がるように声は続く。


【我々は近々、地上へと侵攻する。

 その先駆けとしてドラゴンの中でも特に強力な奴らを送りこんだのだが、

 残念ながら全滅したらしい・・・】


「ドラゴン・・・」


 アルが達成したというクエストの事が脳裏に浮かぶ。


【こうなれば私自ら出向かねばならん。

 だが、実体のない私が地上に出るには、

 依り代よりしろとなる肉体が必要なのだ。

 若さと憎しみにあふれた肉体が・・・】


「・・・!!」


 声が語る言葉の意味が分かったクリス。


 それと同時に、

 恐怖が頂点に達する。


「い、いやだ!

 来るな・・・、来るな・・・・!」


【何を怯える事がある?

 お前が憎む者たちへの復讐に足る力が手に入るのだぞ】


 そして、視界が黒い霧の様なもので覆われた次の瞬間、

 その何かがクリスの奥深くに入り込んできた・・・!


「あぁーーッ!!!!」


 クリスの自我はそこで閉ざされた・・・。


【つづく】



 ____________________




『君』は読み進める……。


(ふむ、お決まりの展開だな。


 主人公にも負けて、どん底まで落ちた追放サイドのリーダーが、

 強大な闇の力に魅入られる……。


 個人的には、主人公によって助けられ仲直りする……みたいな展開ではなく、

 闇ごと無残なやられ方をしてほしいものだが……。



 ――とりあえず、

『応援ボタン』や『コメント』で評価くらいはしてやるか。


 読んだ以上、それくらいはしなければな。


 ありがたく思えよ、作者……)









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る