第19話 強烈なひらめき

 飲み会を終えて実家に帰ると、オヤジがテレビに釘付けになっていた。


「おう。お帰り。飲み過ぎてないか?」

「うん。けっこう飲んだけど、テロのニュースで酔いが一気に覚めたよ」

「ああ、もう知ってたか。とんでもないことが起きたな」


 オヤジにうなずきつつソファーに座る。テレビでは緊迫した現地の様子が映し出され、アナウンサーが状況を説明していた。

 アメリカの主要都市で爆弾が爆発した。朝の通勤時間が狙われたため犠牲者は多数出ている模様。まだ爆発してない爆弾もあるらしく当局が捜査を続けている。情報が錯綜さくそうし現地は混乱している。


 テレビから流れてくる映像と言葉は、とても現実とは思えなかった。けれど、それは実際に起きている。映画のワンシーンではなく歴史の1ページなんだという事実に、心と体が震える。


「このテロの影響を受け、ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は急落し、現在は前日比1500ドル安と下げ幅を広げています」

 テレビから聞こえてきたニュースは、別の意味で俺の心を震わせた。


 危なかった……。テロのせいでアメリカ株が急落してるってことは、日本株だって明日は絶対に大きく下がる。もしもサクセスバイオを買っていたら、とんでもないことになってた。1200円台で買わずに様子を見ていたのは正解だった――。


 ホッと胸をなでおろす。しかし次の瞬間、強烈なひらめきがあった。


――いや、それだけじゃない……。これって、チャンスなんじゃないか!?


 落ち着いて状況を整理してみよう。

 たしかにテロのインパクトは大きい。世界中で株が下がるだろうし、実体経済にも悪影響が出るかもしれない。でも、サクセスバイオがガンの治療薬を販売できたなら、そんなの関係なくないか?

 人間は誰だって命が一番大事なはず。経済状況が悪くても、画期的なガンの治療薬への需要がなくなるとは思えない。


 だとしたら、テロの影響でサクセスバイオの株が大きく下がった場合、そこは絶好の買い場なのでは……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る