第10話 朝の歌舞斗町
「熊尾井先輩、あざーっす!」
「先輩、ゴチになりました!」
後輩たちがオレにあいさつする。
「オウ。また遊びにつれてってやるから、楽しみにしとけよ!」
今日は調子にのって50万も使っちまった。まあいい。オレはこれからも投資でバカスカかせぐ男だ。小せえこと言ってらんねえぜ。
「おまえらも気をつけて帰れよ。オレはこれから商談があるからここで解散だ」
「先輩。朝まで飲んだのに、これからお仕事ッスか?」
「オウ。投資の件でいろいろな!」
ほんとは商談なんてねえが、ビッグに見せねえとな。
「うおお! 先輩かっけえ。やっぱビッグになる人はすげえ!」
「先輩。お仕事がんばってください!」
「オウ。それじゃまたな!」
とりあえずホテルにもどって寝るか。それにしても寒いな。毛皮のコートを着てなかったら凍死しちまいそうだ。自販機でコーヒーでも買うか。
ホットコーヒーのあたたかさがしみるぜ。でも油断しちゃいけねえ。白いスーツにシミでもついたら大変だからな。
朝の歌舞斗町はマジできたねえしクセェ。あちこちにゴミや酔っ払いのゲロが散乱して、それをカラスがつついてやがる。でもオレはこのゴチャゴチャした街が好きだ。もっと金を稼いで、いつかこの街にでっかいビルを建ててやるぜ。
歌舞斗町から大通りにでて信号をわたる。その先に妙な女がいた。真っ黒な服を着て水晶玉の前に座ってる。たぶん占い師だろうな。
でも今は朝の6時だ。そりゃあ歌舞斗町には、オレみたいに朝まで飲むヤツがたくさんいるから、そいつらが客になるかもしれないが、やっぱりなんか変だ。
近づいて顔を見てみる。メチャクチャかわいいじゃねえか! これは声をかけなきゃ男じゃねえ。そう思った瞬間、オレの頭の中でサイレンがなった。
あの女はヤバい! 歌舞斗町の道端で堂々と占いやってんだ。絶対にケツモチのヤクザがいる! それに、こんな時間に占いやってる奴なんて見たことねえ。じつはヤバい取引の連絡係かなんかじゃねえか?
うっかりナンパでもしたら、そのまま拉致られるかもしれねえ。オレは金を持ってる。用心したほうがいいな。
その時、女がこっちを向いた。
「よろしければ、占い、いかがですか?」
声もかわいいのか!
「オウ。ちょっと占ってほしいことがあるんで、ひとつ頼むわ」
そうだ。ナンパなんかしないで普通に占ってもらえば大丈夫だ。それにこんなミステリアスな美少女に声をかけられて、NOとはいえねえ!
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