第2話 彷徨った先(さまよった)

 僕は街道をひたすら走った。疲れたり息が切れると歩き、回復するとまた走り出すのを繰り返した。夜通し走ったのもあり、ずぶ濡れになりながらも、半日は掛かる筈のダナンの町から王都への移動を終え、門にもたれ掛かる形で気絶してしまった。


 魔物避けはかなり高価な物だったからなのか、雨の影響からか、獣にも魔物にも遭遇せずに危険な夜中の移動が出来てしまった。


 そして朝門番に起こされた。

 禿頭で30代半ばの筋骨隆々のいかつい中背の人だった。


「おい兄ちゃん、大丈夫か?ずぶ濡れじゃないか!まさか夜中に移動したのか?」


「えっ!?あっ、はい。その、ダナンの町から来ましたが、ここはどこでしょうか?」


「おいおい大丈夫かよ?ここは王都の町だぞ!ダナンの町ってこっから馬でも半日はある筈だぞ?何かに追われていたのか?」


「いえ、その、夜中に方向を見失いまして、どこを歩いていたのか分からなくなりまして」


「どこを目指していたんだ?」


「ソランの町でした」


「お前さん通り過ぎているぞ!どうする?戻るのか?」


「いえ。その後ここを目指すつもりだったから丁度良いです。その、お世話を掛けました」


「酷い顔だぞ。少し休め。だだ、悪いが規則なんで入町の手続きだけはしてもらうぞ。兄ちゃんは冒険者か?」


「あっ、はい。冒険者です。暫く活動拠点をこちらにしようかなと思いまして」


「だったら今日は宿で休むかギルドに行ってこいよ」


 そうやって町に入るのにギルドカードというかステータスカードを見せ、手のひらサイズのオーブに手をかざした。


「よし!入っても良いぞ」


 そうして僕は王都に入った。冒険者はストレージ持ちなので犯罪者チェックは必須なんだ。やろうと思えばその物に触れさえしていればストレージに入れられるし、忽然と姿を消すだけなので証拠が残らずに盗む事が可能なのだ。つまりストレージを持っている者ならばやろうと思えば盗み放題だ。このオーブはストレージを悪用して盗みを働いた者か、つまり犯罪者かをチェックする道具だ。


 これは精神に作用するので回避はできないと冒険者になる時に教えられている。あくまで自分自身が悪さをしたかどうかの確認なので、冒険者はおいそれと犯罪が行えない。


 僕はとりあえずこの町をホームタウンとして設定する為に、ギルドに出掛ける事にした。夜明けから時間があまり経っていないのでまだギルドが開く前のような気はしたのだけれども、宿を取るにしろホームタウン設定をしている者であれば各種の優遇を受けられる。宿代の割引を受けられるからホームタウンの設定が先なんだよね。


 まだ朝早く人がまだらだったから良かったけど、僕は王都に来るのは始めてで、お上りさん以外の何者でもなかった。


 周りをキョロキョロし、建物の高さが高いなぁと見ていたんだ。


 ダナンの町はまあ田舎だったかな。殆どの建物は2階建てで、ギルドとかは3階だったけど、ここでは3階建てが基本で4階建てもちらほらと見受けられるんだ。


 ついつい呟いてしまった。


「ダナンと違って大きいなぁ!ようし、心機一転頑張りますか!」


 丁度誰かが近くにいたようで、クスクスと笑い声がしたので僕は顔を赤らめながらその場を走り去った。恥ずかしかったな。お上りさん丸出しだったから反省しないとだ。


 少し反省していた筈だけど、街路灯の柱にぶつかっだり、何かに蹴躓いたりとやはりお上りさんだった。


 でも何とか門番のおっちゃん、もとい、お兄さんに教えて貰った冒険者ギルドの建物に着いたんだ。まだ誰もいなかったけど。建物を見てやはりダナンの町のとは違い立派で趣があるなぁとポカーンと見ていたのであった。


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