俺は今日、夢を見た。

涼里ミリン

プロローグ

 俺は今日親友に『ねぇ、今日うち泊まらない?』と言われた。

 おれが『なんで?』と返すと『いや、取り敢えずうちに泊まって』と言われた。


 中学生になり、お泊り会をする機会も減ったこの時期になぜ行うのか、俺には理解できなかった。

 しかし普通なら陽気な声でこの事を言うだろうが、親友の声はなぜか少し震えていた。

 

『おいおい、いきなりどうしたみこと?なんかお前らしくねぇな』と俺は言うと『そんなことはどうでも良いから、取り敢えず今日はうちに泊まって』と尊に不愛想になぜか真剣な眼差しで返答された。

 

 

しかしそんな事を言われても急に尊の家に泊まるのは申し訳ないし、お母さんが許さないだろう。


『いやいや大丈夫だって。ありがとな、また今度お願いな』と俺が言うと『ねぇ、本当に今日は家に帰んないで』と真剣な眼差しで尊が返した。


 これ以上は喧嘩になりそうなので、俺は『わかった、わかったけど取り敢えずお母さんに尊んち泊まるって言うために帰るから』と言った。

 そうすると尊は『でも、なるべく早くうちに来てね』と言い、俺たちは別れた。



「ただいま~」

「おかえり~」

 いつもと変わらず、俺とお母さんはこのやり取りをし、俺は自分の部屋にバッグを置き、リビングに行った。


「ねぇ、お母さん。……今日尊んち泊まっても良い?」

「は?いや、いきなり言われても何も用意してないじゃない」

 呆れたような声でお母さんはそう言った。

「それは今から用意する。そしたら泊って良い?」

「尊のお母さんは大丈夫って言ってるの?」


 今思えば尊からは『うちに泊まって』としか言われていない。お母さんを説得することはできないかもしれない。

 俺はそう思った。


「……何で黙ってるのよ」

「いや、何でもない。ちょっと電話借りるね」

「わかったけど……」


 お母さんは何か言いたげだったが、俺はすぐ電話機がある方へ向かい、受話器を取った。

 そして尊の家の電話番号を押し、コールが鳴った。

 三回目のコールで「もしもし」と尊のような声で返答があった。


「もしも―――」

「あ、蓮?速くうち来てって」

「いや、そのとこなんだけどさ―――」

「無理とか言わないよな」

「いや、本当にごめん。今度、また今度な」


 そして俺は電話を切った。

 絶対明日謝らなきゃ。尊なら許してくれるだろう。

 でもなんでそんなに焦ってるんだ?


 ていうか、何か、焦げ臭いようなにおいがする。

 お母さんが料理してる時に何か焦がしてしまったのだろう。




 そして、そんなことを思っていた俺の目に、灰色のものが映り込んだ。

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