第五章 忙しい冬休み

第1話 旅行の準備

 旅行の準備は、先ずは防寒着から始めなきゃ! 特に、ヘンリーは全く持っていないのに等しいからね。

 ナシウスのは、王立学園の制服と共に暖かいコートも作らせている。


「この撥水生地を表地にして、裏生地は絹のしっかりしたのにして。裏地が絹の方が滑りやすくて良いわ。中にダウンを入れて、ミシンで押さえるのよ」

 前世のダウンコートのデッサンを書いて、マリーとモリーに縫ってもらう。

 馬丁用のダウンコートも作らせよう! 

「私とパーシー様のは、馬に乗れるように、切り込みを深く入れてね!」

 乗馬用のコートとかは、後ろの切り込みが深くて、跨りやすくなっている。

 ヘンリーの服もお願いしていたから、裁縫関係は任せる。


「エリザベス様やアビゲイル様と新しいドレスについて話し合いたいわ!」

 縫うのは後になるかもしれないけど、2人に招待状を届けて貰う。

 メアリーが出かけたら、台所に行こうと思ったのに、キャリーに届けさせた。舌打ちなんてしないけどさ。

 

 メモ帳を見ながら、する事リストをチェックする。

1、ファイル! は○

2、トレントの種類を調べる! ✖️これは図書館でも調べたけど、詳しく無かったんだよね。

 ロマノ大学の図書館になら、詳しい専門書があるかな? 父親に要相談!

3、麦芽糖を作る!✖️

4、ココア!✖️

5、調味料を買いに行く!○

 麹を手に入れる! これはできそう! 梅の木! は✖️

6、豆腐を作る!✖️

7、カイロ、ジッパー付き長靴。○

8、香りの良い石鹸、シャンプー、リンス、リップ!✖️

9、シャワー✖️

10、ファイル!!○

 後から足したのがある。

11、ホワイトチョコレート✖️

12、冷凍車!✖️ 馬車に冷凍庫を乗せた物を作りたい。

13、投げて立つテント✖️


「食べ物関係は、味噌から麹菌を取り出す。ホワイトチョコレートを作る。ココアを作る。麦芽から水飴を作る。豆腐を作る。香料を作るぐらいかしら?」

 横で、メアリーが睨んでいる。台所に行くのが不満そうだ。

「ファビだけでなく、サングもいます! 台所への立ち入りは控えて下さい」

 ゲイツ様から2人目の調理助手が来たのだ。パーシバルの所からも3人目のベッシィが来たけどね。

「なら、工房でなら良いでしょう? レシピを書くにしても、やはりやってみないといけないのよ」

 渋々、メアリーは頷く。


 エリザベスやアビゲイルを招待して、ドレスのデザインを考えるのは、とても積極的に応援してくれるのにね! 伯爵令嬢との交流は良いみたい。


「後は、錬金術で作る物ね!」

 魔法瓶というか、保温瓶が欲しい! 寒い中の旅行だから。

 それと、途中でトイレとか? 投げて立つテントの中にポータブルトイレかな?

 馬車の中の暖房も考えたい。

「スライムクッションにカイロ機能をつけたら良いのかも?」

 討伐の時に作ったカイロのクッション版だ。

 これは、簡単にできそう! 冬場に領地に帰る貴族に売れそう!


「そうだ! 豆腐や味噌を作るのにミンサーが必要だわ。それに、エバ以外の調理助手は、あんなに薄く肉を切れないから、スライサーも作らなきゃ!」

 ミンサーは、前世の実家でも味噌作りの時に祖母と使っていたからわかる。

 スライサーは実家になかったけど、お中元やお歳暮のハムが届く度に、母が買おうか悩んでいたから、一緒にパソコンで見たよ。だから、だいたいわかるよ。


「グレンジャーを領地にするかどうかは未定だけど、蟹は手に入れたいわ。茹でてから冷凍するのか、そのまま冷凍して、ロマノに帰ってから茹でるのか?」

 前世でも、冷凍蟹は2種類あった。鍋にするには、取れたてを冷凍した物。そのまま食べる茹でたのを冷凍したのとどちらが良いかな。

 悩むから、今回は2種類試してみようと思う。

「荷馬車に冷凍庫を乗せたら良いと思うけど……ゲイツ様から貰った冷凍庫を真似しよう!」

 

 錬金術からするか、食料関係からするか? 味噌を醗酵させる時間が欲しいから、食料関係からだね。

 麦芽糖も発芽させたり、醗酵させる時間が必要だ。

 それと、味噌から取り出した麹菌を増やすには、米を炊いて保温しないと駄目だ。

 ふぅ、錬金術で道具を作る必要がありそう。


 先ずは、麹菌を増やす為に保温できるトレイを作る。

「家庭用だから、大きなタライ程度で良いと思うけど……ソースの販売用なら、もっと大きくすべきなのかしら」

 領地に味噌や醤油や麦芽糖の工場を作っても良いのだ。

 屋敷では、小規模にしたい。


 麹菌を培養する為のトレイは、前世のイメージで長方形の薄い型にした。

 麦芽糖の第一段階は、麦を発芽させる事だ。平たいトレイを何個か作り、それを暗くする布も用意する。


「エバを呼んできて」

 エバが来たので、相談する。

「エバにはモラン領に同行して欲しいの。私の領地候補のグレンジャーとハンプシャーにある素材で料理して欲しいから」

 エバは少し考えている。

「あのう、ソースの受注はどうしたらよろしいのでしょう。それとチョコレートも」

 ああ、それもあったね。

「ソースはどの程度の注文があるのかしら?」

 任せっきりだったよ。


「第一騎士団からの注文なのよね?」

 前に見たのは、第一騎士団のだったから、そう聞いたら、エバにグィと側に来られた。

「第一騎士団のはずっとありますが、他にもあちこちから! お嬢様が餌付けするからではないでしょうか?」

 餌付け?

「それは、ないと思うけど、討伐の時にソースを試食した方が多いのかも?」

 はぁ、とエバが溜息をつく。

「それと、すき焼きソースも頼まれています」

 えっ、それは簡単じゃん!

「砂糖と醤油とお酒を混ぜるだけでしょう?」

 エバに睨まれるから、すき焼きソースも加える。


「あと、バーンズ商会のチョコレートはどうなるのですか? チョコレートもモラン伯爵領に行かれるなら、多く作らないといけません」

 うっ、そうだった。

「もう、ファビならチョコレートは作れるのでは?」

 エバが少し考えて頷く。

「ええ、ファビはパティシェの基礎はできていましたから、滑らかにしておけば、チョコレート作りは任せられます」


 ソース作りは、アンにさせよう!

「ソースの担当はアンに任せたら良いわ! 他の助手にも手伝わせましょう」

「確かにアンなら、ソース作りならできます」

 それもエバは了承してくれたけど、メアリーと2人に注文もつけられた。


「下働きの女の子6人と調理助手を3人は雇って欲しいです。今は十分いますが、いずれはゲイツ様とモラン伯爵家に3人は帰ってしまいますから」

 メアリーも頷いている。

「下働きの女の子は、早くから育てないといけません。それに、マシューとルーツが従僕見習いになるなら、下働きの男の子も2人欲しいです」

 新居の男の使用人は、モラン伯爵家で教育してくれるとパーシバルは言っていたけど、グレンジャー家も最低人数しかいなかったのだ。


馬の王メアラスのお世話のサンダーさんとジニーさん、そして護衛の8人のお世話も増えました。新居に連れて行くメイドや下働きも、そろそろ育てないといけません」

 うっ、一挙に人が増えるね!

「それと、できたら馬車をもう一台欲しいです」

 それは、必要だとは思っていたけど、言われるとお金が飛んでいく気がするよ。

「子爵様はロマノ大学に通われますし、お嬢様とナシウス様は寮に入られますが、これから外出の機会も増えます。なんといっても、秋には社交界デビューもあるのですよ」

 貧乏なグレンジャー家にしては立派な馬車だけど、モラン伯爵家やバーンズ公爵家、ゲイツ様の馬車の方が新式で乗り心地が良いんだよね。

「それは、ワイヤットと相談するわ。だって、馬も増やさないといけないから」


 確かに、今、パーシバルとかはグレンジャー家に馬車が1台しか無いのを知っているから、お迎えに来てくれているけど、友達の家に行く時とか不便だよね。

 エバに豆を洗って、水に浸けておく事、麦を水に浸けておく事を頼んだら、ワイヤットの部屋に行く。

 旅行準備の前に、人事問題が発生しちゃっているよ!

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