第11話アレはダメだろ
しばらくすれば帰ってくるだろう。
僕は心のどこかでそう思っていた。信じていた。
でも、3日経っても、1週間経っても、1ヶ月たっても何の音沙汰も無くて――。
生活がおかしくなった。
初めは遅刻。そして仮病を使って、週に1回は休むようになった。
丁度、学年が上がると共に、それまで遅刻すらしたことのなかった僕の生活態度が悪くなったことで、中間試験が始まる1週間前頃に、担任に呼ばれて雷を落された。
理由を聞かれたが、悪態をついてシラを切って悪態をついて、試験前にも関わらず、夜遊びをした。
試験は受けたが、芳しくはなく、成績を少し落とした。
「珍しいね、巧が10番だなんて。ちゃんと勉強したの?」
「………したよ」
成績表を貼りだされれた掲示板の前で、心配そうに聞いてきた御堂に、嘘を言った。
「遅刻が原因じゃない? 巧、最近学校休み過ぎ! ちゃんと学校に来なくちゃダメだよ? じゃないと、今度舞ちゃんに言うよ?」
「……っるさいな」
適当に相槌をうって、誤魔化そうと考えていたのに、舞の話をされて、調子が狂った。
突き放すような発言に御堂は、
「え?」
戸惑った様子だった。
「うるさいって言ったんだよ。ほっといてくれ!」
「え……あ……ちょっと! 何? 私、何か怒らせるようなこと言った?」
「……」
完全な八つ当たりだと分かっていながら、僕は御堂に酷い事を言ってしまった。
☆★☆
2つか3つ最寄駅から離れた駅の近くにあるファミレス。
「お前さぁ……あれはダメだろ?」
呆れたように、高城は注文したスパゲティをずるずると啜りながら言った。
「……あれって、見てたのか」
「見てたわ。掲示板の前で痴話喧嘩しやがって」
「……」
「御堂さんにその事言ってないんだろ? なら、しゃーねぇよ」
「………分かってるよ」
「いや分かってない。明日謝っとけよ。お前が10悪い」
「……悪いとは思うよ。でも、謝らないよ」
意固地になる僕に、高城はまだ半分ぐらい残っているスパゲティをフォークで器用にクルクル巻いて、僕の方に向けて、
「お前なぁ……。そんなことしたら、御堂さんに嫌われるぞ。言っておくけどな、お前がいるから皆手を出さないだけだぞ」
「手出すって何だよ……」
「人気があるんだよ、御堂さん。まさか、知らなかったなんて言わないよな? 性格も明るくて、顔もめっちゃ可愛い! 髪もめっちゃサラサラだしな! ナハハハ…」
机をバンと叩いて、早口で、柄にもなく照れくさそうに御堂の事を褒める高城。
「好きなら告白したらいいのに」
素直にそう思い、進言したのに「バカヤロー」とテーブル越しに身を乗り出して、頭を軽くはたかれた。
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