第8話
万能薬の完成も目指しつつ、私は新聞記事のインタビューにも答えた。
インタビューは何日かに分けて掲載されるので、その度に取材に応えている。
「それでは、質問しますね。万能薬が完成したら、まず誰に飲んでほしいですか?」
「そうですね……。もちろん、必要な人には全員に飲んでほしいですが、最初は数に限りがありますからね。もちろん、いずれは量産化されます。そして、私が一番最初に飲んでほしいのは、親友のナターシャです。彼女は数年前に事故に遭い、体が弱ってしまったせいで、思うように体が動かせなくなりました。彼女は本当に苦労しているんです。そんな彼女にこそ、私は万能薬を飲んでほしいですね。私は彼女に、必ず万能薬を完成させると約束したんです」
「以前のインタビューの時も、その親友の方の話題が出ましたね。世間からは、その親友との美しい友情に、思わず感動したという声も届いています。果たして万能薬は完成するのか、その親友との約束を果たすことができるのか、注目が集まっています」
「はい、彼女との約束を果たすことが、今の私の生き甲斐になっています。万能薬は。必ず完成させてみせます。もう最終段階に入っていて、完成までの道筋もようやく見えてきました」
「そうなんですか。それはとても楽しみです。私も応援しています。それでは次回、またよろしくお願い致します」
「はい、よろしくお願いします」
私は、インタビューを終えた。
これをもとに、次の記事が作られる。
「こんな感じでよかったですか?」
記者の友人が訪ねてきた。
「ええ、いい感じですね。世間からの注目も集まって、まさに理想通りです。本当にありがとうございます」
「いえ、私もこんなすごいことを記事に書けて、本当に嬉しいです。話を持ち掛けてくれて、ありがとうございます」
「いいんですよ、お互い様ですから」
私は新聞社を出て、万能薬の開発施設へ向かった。
*
(※ナターシャ視点)
また新聞に、レイチェルのインタビューが乗っていた。
それを読んでようやく、私はレイチェルの企みが、なんとなくわかってきた。
インタビュー記事は、感動を誘うような内容になっていて、世間からも注目されている。
万能薬の開発に期待がかかっているのはもちろんのことだけど、それを与えられる人にも焦点が当てられいる。
つまり私も、世間に注目される存在になってしまったというわけだ。
私は今まで、病弱だから、世間から病弱だと認識されているから、好き勝手な振る舞いも許されてきた。
それが今、レイチェルによって奪われようとしている。
そのことが、彼女の狙いなの?
それともまだ、ほかにも企んでいることがあるの?
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