第7話 そのMT車はもう走らないのか
「人生はMT車みたいなものだから。どこまで走行すれば良いかなんて自分にも分からない。それでも、それぞれ走れる距離はきっと決まっていて、途中で何回もエンストするかもしれない。それでも走り続けて、走り切って、その先にきっと…。」
『うるさい!女子高生設定なのにMT車で例えないでよ。』
「高3なら免許取れるんだよちゃん美優!」
『そーいう事じゃないのよ!』
「私思うんだよ。人生ってMT車だなーって。」
『違うわよ。』
「私思うんだよ。人生ってFMだなーって。」
『何よFMって?』
「あなたとコンビニファミリーマート♫」
『よし、今日はもう帰るわね。』
「ひええー!待ってよちゃん美優ー!俺の、俺の、俺のぉ〜……。」
『話は聞かないわよ。』
「冷たい!真冬に食器洗う為に水道捻るも中々温水にならず、結局冷たい水のまま食器洗い終わっちゃった時の一人暮らしの学生の心のようだ!」
『何故そんなピンポイントなのよ。というか寒いから本当に帰って良い?』
「待ってよ!私の人生論聞いてよ!」
『いやよ、池上彰さんより為になるの?有意義な時間を提供できるの?』
「できる!!!!」
『どこから来るのその自信は!!もはや周りを巻き込むだけの害、地震よね。』
「人生はMT車なの。言わば、就職活動は半クラでエンジン蒸している状態。そして、社会人になる事が走行の始まり。」
『じゃあ、今の私たちは教習所に通ってるレベル?』
「そう、予行練習なんだよ!そして人生は終わりのない長き旅。それでも最初から飛ばす人も居る。アスリートとか。」
『へえー。』
「ちっとも興味なさそう!なんで!つまんないの!?」
『つまんないと言うか、詰まってるでしょ?オチどーしよとか?』
「オチなんてないよっ!私がしてるのは東進スクールの先生方のような為になる話だよ!」
『本当に為になるの?ダメにはなりそうだけど。』
「何その言葉遊びーーー!私は真面目に喋ってるんだよちゃん美優!」
『興味という間欠泉が一向に沸かないわ。ここまで微動だにしないのも珍しいわね。』
「なら私が刺激するよ!興味を失ったちゃん美優の大地の間欠泉に、噴き出るような興奮与えてあげるよ!」
『自分でハードル上げすぎじゃない?』
「アスリートの人達って若いうちからとんでもない努力量を積んでるじゃん。早い段階でトップギアで走行するの。その甲斐あって、吉田沙保里さんだって、内村航平さんだって、浅田真央さんだって、魔王的な強さ!オリンピックを連覇したじゃん。」
『浅田真央さんの後に魔王とか言わないでね。混乱するわ。』
「頭が回ってないねちゃん美優。強いアスリートだってそんなスピードで進んでもいつかはその速度は出せなくなる。その時に自身の速度の限界を理解し、自分の最速度がここだったと理解して現役を引退するの。」
『アスリートの話をしたかったの?』
「それでも最初に死ぬほど努力したから。死ぬほどの速度で進んでいたから。残りの道はもう惰性でも進めるほどに走り切ったから。」
『アスリートの人生のことしか言ってないわね。』
「そしてまた、羽生結弦君。魔王のように強かった羽生君。今回の北京オリンピックで何を間違えたのか、その速度は落ちてしまったから。限りなくエンストに近く、自身の限界を感じてしまってるかもしれない。そして、自分以上の速度で走れる車が近くにいることに気付いたから。」
『宇野君や鍵山君の事かな?』
「羽生君、27歳、もう最速で走らないのかなぁぁぁ。」
『涙目で何を言ってるの!?今回言いたかったことはソレなの!!!!???』
「魔王が死んでも、第二、第三の魔王が現れるのがRPGの摂理。」
『私たちの世界はゲームじゃないからね。』
「羽生君が居なくなろうとも、宇野君や鍵山君が新たな魔王になるから。だから、羽生君はもう走らなくて良いんだよ。惰性でゆっくり…楽しんでね。」
『羽生君へのメッセージ!?何がしたかったのよ今回、もう私帰って良い?』
「まだだ!俺の…。俺の…。俺の…。」
『話は聞かないわよ。』
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