224 特級ダンジョン2(アルタニア帝国)
「どうしてこうなった……何が悪かった……」
うつ伏せで倒れるヤルモの
時は
テントを張ったらその前に料理に必要な物を出して、イロナクッキングの開始。ヤルモはイロナの料理姿を微笑ましく見ていた。
そのイロナはというと、レシピを見つつ、ああだこうだ言いながら格闘中。鍋が吹いたら
調味料だけはきっちり計っていたが、何度も計り直して、結局は目分量。ちょうどヤルモがトイレに行っていたので、気付かずに調理は続く。
「さあ! 食え!!」
そうして作られた料理は、ヤルモの目の前に運ばれた。
「おっ! 見た目は俺のより綺麗じゃないか?」
「うむ! 自信作だ!!」
意外や意外。ヤルモの男飯より綺麗に盛り付けられているので、二人は食欲が掻き立てられる。
「いただきま~す」
前回は毒々しい色だったので、安心して食べ始めるヤルモ。昨日と同じ料理なのに「うめぇうめぇ」とモリモリ食べる。
「フフン。我が本気を出せば、こんなもんだ」
そのせいで、イロナも鼻高々。
「どれ。我も一口……ん?」
しかし、イロナがシチューに手を伸ばしたところで、ヤルモに異変が起こる。
「グッ……ガガガガガ……」
「ど、どうしたのだ??」
「グギャアアァァ~~~!!」
壊れた扇風機のようにヤルモの体が急に激しくブレたと思ったら、断末魔を放って前のめりに倒れたのだ。
「どうしてこうなった……何が悪かった……」
ヤルモ殺人事件を目撃したイロナは、犯人なのに放心状態。モンスターにもつかされたことのない両膝を地面について、動けなくなるのであった……
この真相は、もちろんイロナの料理がマズかっただけ。何をどうやったかわからないが、ヤルモが目を離した瞬間に、イロナはレシピから外れて何かやったと思われる。
しかしイロナは考えてもわからないので、ヤルモのアイテムボックスを漁って、適当な携帯食で腹を満たすのであった。
ヤルモを倒した自分の料理を食べるのは怖いから……
「はっ!?」
翌朝目覚めたヤルモは、いつの間にかテントの中で寝ていたのでキョロキョロしている。
「昨日はすまなかった」
隣で寝ていたイロナも目覚めたら、まずは謝罪から。
「昨日? 確かイロナの料理を食べて……」
ヤルモは飛んでいる記憶を整理すると、イロナの頭を撫でた。
「すまん。疲れていたから寝てしまったようだ。美味しかったぞ」
そして、何故か謝罪して料理を褒めてるよ。
「いや、マズかっただろ??」
「そんなわけないだろ。また作ってくれよ」
「お……追々な……」
ポイズンクッキング、ヤルモの記憶
しかし、倒れた現場を見ていたイロナはヤルモに料理を作ることが怖くなって、いい返事ができないのであったとさ。
三度も失敗しているのに、まだ求めてくれるから……
朝食は、ヤルモがイロナに作らせようとしていたが
「う~ん……けっこう強いな」
「どこがだ?」
地下61階からは、ヤルモの予想よりモンスターが強くなっていたので、オーガキングの群れを蹴散らしてからボヤいたけど、イロナには伝わらない。
「この辺から、宝箱を回収していいか?」
「ふむ……金が必要なのだな」
「そうそう。稼がなきゃ」
「好きにしろ」
イロナから許可が出たので、道順の途中にある分かれ道を調査。モンスターだけが待ち構えている場合もあるが、さすがはヤルモ。金の匂いでもしているのか、宝箱を引き当てるケースが多い。
少し時間は掛かるが宝箱を回収して順調に進むと、地下79階にいた中ボス、雄鶏の頭に爬虫類の体、尻尾には蛇がくっついたジャイアントコカトリスに挑む二人。
「主殿だけでやるか?」
「時間が掛かってもいいなら……」
「それなら我がやる!」
「あ……」
そこそこ強い中ボスなので、イロナはヤルモに譲ろうとしたらしいが、やんわり断ったら一人で突っ込んで行った。
「一緒にならやりたかったんだけど……」
譲ろうとしていたわりには、共闘という選択肢のないイロナ。楽しそうに巨大なジャイアントコカトリスを斬り刻んでいるので、譲ろうとしたのはフリで、いちおう譲ったという事実を作ろうとしたのではないかと勘繰るヤルモであった。
「あ、もう終わった……」
20メートル以上のジャイアントコカトリスも、イロナに掛かれば物の数分。足を綺麗に斬り飛ばされ、首も切断されて、ダンジョンに吸い込まれて行くのであった。
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