123 マッピング5
「不甲斐ない勇者でゴメンね。幻滅したでしょ?」
「わっ! 違います違います。ちょっと驚いただけです!!」
ヤルモより弱いとバレたクリスタはテンションダウン。そのせいでヒルッカは焦って弁解しているが、クリスタはますます気落ちして行っている。
「ここまでけっこう時間が掛かってるんだから急ごうぜ」
そこに、ヤルモからの我関せずの言葉。クリスタは「誰のせいで!」とか思って睨んでいるが、ヤルモには通じないのでヒルッカにチクる。
「あのオジサン、私より遥かに強いのよ。魔王を倒したのもあの二人」
「うそ……」
「勇者! 誰彼かまわず言いふらすなと言ってるだろ!」
「誰彼かまわずじゃありませ~ん。パーティメンバーですぅぅ。そんなに大声出すと、ヒルッカちゃん怖がるわよ?」
ヒルッカはそんな表にも出せない新事実を聞かされて怖がっていただけだが、ヤルモは女の子を怖がらせていると勘違いして顔を緩める。
「怖くないよ~? おっちゃんとおばちゃんはケンカなんてしてないからね~?」
「キモッ! そしてなんで私がおばちゃんなのよ!!」
「「あはははは」」
ヤルモとクリスタのやり取りがおかしかったのか、オルガとリュリュが笑ったので、少しは怖さが和らぐヒルッカであった。
地下11階からも、相も変わらず手分けしてマッピング。ただし、ヒルッカのヤルモを見る目が変わったので、少しやりにくそうにしている。
「おっちゃんの顔、なんか付いてるのか?」
「いえ! よく見たら凛々しい顔だな~と思いまして」
「アメちゃんが欲しいのなら、普通に言ってくれたらあげるぞ。ほい」
「子供扱いしないでくださいよ~」
普段なら、褒めて来る女なんて何か企んでいると飛び退くヤルモであったが、怖がらせたくないから子供対応。ヒルッカもツッコんでいるけど、貰ったアメをすぐに食べて幸せそうにするから、ヤルモに子供扱いされていると思われる。
ちなみに、特級ダンジョンには少なからず冒険者が入っているので、ヤルモとヒルッカを見た冒険者からは、こう思われていた……
「おい……オッサンが女の子を連れて歩いているぞ?」
「親子? こんな危険な場所で何してるんだ??」
「装備からして強い戦士だとは思うけど……子供の教育かな??」
「子供なら、オッサンにも耳と尻尾がないとおかしい」
「なんかアメをあげてるっぽいな。誘拐して来たのかも?」
「うん。あの顔は、誘拐犯顔だ」
「「「「「うんうん」」」」」
大半の冒険者は、ヤルモを誘拐犯だと決め付けていた。
「どうする? 通報するか??」
「チッ……転送魔法陣がある階の真ん中じゃすぐに通報できない」
「モンスターも強いのに、人助けは辛いな」
「少しつけて様子を見るか……」
「だな。危なくなったら女の子だけは助けよう」
冒険者は無理をしたくないらしく、ヤルモたちをつけてヒルッカを見守る。
「あのオッサン、つえぇ~。一人でモンスターを薙ぎ払ってるぞ」
「それに女の子のレベリングしてるっぽいな」
「親子の線は薄いけど、知り合いなのかも?」
「いや、まだわからないぞ。人の少ない場所でいたずらする気かもしれない」
「ありえる……見張り継続だ」
「「「「「おう!」」」」」
ヤルモたちを見掛けた冒険者は、近親者3割、誘拐犯7割と考えて様子見。ハイエナプレイをしていると受け止められても構わないと割りきってヤルモたちをつけ回し、人数が増えて行った。
しかし、地下に向かう階段でヤルモ班がクリスタ班と合流すると、誤解は解けて見守り隊は解散。階を下る度に、クリスタとオルガは見守り隊の説得に明け暮れるのであった。
「もう! ヤルモさんが怪しいからキリがないじゃない!!」
「す、すまん。でも、俺は普通にやってるだけなんだが……」
助けてもらった手前、ヤルモは謝っているようだが解決案はない。しかしその時、クリスタの目が妖しく光った。
「もう、ダンジョンにいる間は親子で通したら?」
「見た目が違うだろ。すぐにバレる嘘はよけい拗れる」
「こんなこともあろうかと、ケモミミセットを用意しておきました~!」
「はあ!?」
クリスタはアイテムボックスからケモミミカチューシャと尻尾を取り出してヤルモに付けた。
「プッ……似合って、るよ」
「いま、笑おうとしただろ? そしてそこ! 肩が震えているぞ!!」
「「「「「あははははは」」」」」
クリスタたちが笑いを堪えても、ヤルモがツッコんでしまったがために大爆笑。イロナまで目を擦って笑っている。
「やっぱ似合ってないよな?」
「フフフ。ちょっと新鮮なだけだ。今日はその姿でヤッてみよう」
「イロナが付けてくれよ~」
イロナも助けてくれないので、ヤルモはヒルッカに意見を聞いてみる。
「こんな変なオッサンが父親じゃ嫌だよな?」
「いえ……頼もしさなら、わたしのお父さんの比じゃありません! パパ、と、呼んでもいいですか??」
「お……おっふ」
ヒルッカに上目使いでパパと呼ばれたヤルモはノックダウン。もう子供を持つことを諦めていたヤルモには強烈なインパクトだったのか、ヒルッカに片膝をつかされるのであった。
「チョロ……」
「チョロイですね……」
「ヒーちゃん小悪魔みたい……」
あまりにもあっさり受け入れたヤルモを見た、クリスタ、オルガ、リュリュは、ヤルモ取り扱い説明書に「ロリコンかも?」と書き加えて出発するのであった。
* * * * * * * * *
一方、冒険者の反応は……
「あのケモミミのオッサンと女の子は親子かな??」
「う~ん……どちらかといえば誘拐犯に見える」
「「「「「うんうん」」」」」
あまり変わらないのであったとさ。
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