121 マッピング3
クリスタ班がイロナブートキャンプで苦戦しているなか、ヤルモ班は……
「おっ! 当たるようになって来たじゃないか?」
「さっきのマグレなんですけど……」
「マグレでもたいしたものだ」
超甘口。ヤルモが止めていないモンスターに、ヒルッカのスリングショットがたまたま当たっただけでもべた褒めしている。
「できれば、もっと当たるようなアドバイスをいただければ……」
「そうだな~……」
褒められることの少ないヒルッカは居心地が悪いのか、ヤルモにアドバイスを求めた。
「俺の場合なんだけど、先読みして攻撃しているな」
「先読み……難しいです」
「まぁこれは経験が物言うからな。自分で身に付けるしかない。でも、盾役がいたら、狙いやすくないか?」
「どうでしょう……」
「例えばだ。俺とぶつかった瞬間、モンスターは止まるだろ? 俺が吹っ飛ばしたあとも止まる。起き上がったあとの行動もわかりやすいはずだ。その点を意識してみたらどうだ?」
「なるほどです……やってみます!」
ヒルッカが元気になったところでヤルモは歩き出す。そうしてまた時間を掛けるとモンスターが見付かり、戦闘の開始。
今回はヒルッカの手数は少ないが、相手の動きを予想することで外れることが少ない。なので、ヤルモの99%のダメージでモンスターが倒れても、ヒルッカは嬉しそうにしていた。
「なんとなくわかったかもしれません!」
「お~。あんな説明だけでわかるなんて、才能があるな」
「いえ、ヤルモさんの教え方が上手いだけです」
「そんなことはないぞ。素直に聞くことができる奴は少ない。ヒルッカの頑張りの結果だ」
「いえいえ。まだまだです。これからもご教授ください!」
こうしてヤルモに乗せられたヒルッカは気分良く、スリングショットの命中率が上がっていくのであった。
ヤルモ班は順調に進み、地下への階段に着いたがクリスタ班はまだ来ていない。なのでヤルモは、クリスタ班のほうが小部屋が多かったのだと気にもかけず、階段を少し下りたところでヒルッカと一緒に腰掛ける。
そうして戦闘の復習をしていたらクリスタたちも合流したのでヤルモは立ち上がった。
「ちょっと班分けについて言いたいことがあるんだけど……」
ヤルモが何も言わずに歩き出すので、クリスタは隣について耳打ちする。
「なんだ?」
「イロナさんが厳しくって……」
「そんなもん前からだろ」
「そうだけど~」
「てか、俺も昨日、めっちゃ説得したんだからな。それはもう、死にかけたよ。我慢しろ」
「ヤルモさんが冷たい~~~」
ヤルモが死にかけたと言っても信じないクリスタ。味方にもついてくれないので、クリスタはヒルッカに標的を移す。
「ヒルッカちゃんも冷たくされてない? 酷いことをされてたら、お姉さんに言うのよ??」
「いえ……すっごくよくしてくれていますよ」
「あの人見知りが!? 何か弱味を握られてるんじゃ……やっぱり一緒にパーティ組んだほうがいいかも」
「弱味なんて握られてませんよ~」
どうやらクリスタは、イロナ単品より盾役のヤルモがいたほうが安心できるので、ヒルッカを引き抜こうとしているようだ。
その声はヤルモの耳にも入り、自分の噂をされていたから文句を言う。
「そんなことするわけないだろ。てか、この班分けはヒルッカのためなんだからな」
「どゆこと?」
「一人だけレベルが極端に低いだろ。お前たちで安心してレべリングができるのか?」
「うっ……自分たちで手一杯」
「だろ? イロナと二人きりが一番いいとは思うんだが……どうなると思う?」
「100回死ぬ。よくてレベルが上がらない」
「そういうことだ。だから我慢しろ」
クリスタは苦虫を噛むような顔で受け入れるが、ヒルッカは自分が死ぬようなことを言われて顔を青くしている。
「イロナさんって、わたしを殺すのですか?」
「殺さないよ~? いざとなったらおっちゃんが守ってあげるからね~? アメちゃんあげよっか?」
「あ……ありがとうございます」
そんなヒルッカには、安心させようとニカッと笑って餌付けするヤルモ。いちおうアメは受け取ったヒルッカだが、ヤルモのこの喋り方はやはり気持ち悪いようだ。
「何あの顔……怪しすぎる」
「誘拐班として通報しますか?」
「ヒーちゃんが汚される……」
当然、クリスタ、オルガ、リュリュも……
「なんだ主殿。その娘を我から守れると思っているのか? では、守ってみせろ」
「無理です! 剣はやめてくれ~~~!!」
もちろんそんな大それたことを言ったヤルモは、イロナの抜いた剣に恐怖して、すぐさまヒルッカを売るのであったとさ。
ヤルモが少し斬られて階段から転がり落ちると地下2階に到着。痛くもないのに痛そうな演技をしていたら、イロナに踏まれたヤルモ。演技は通じなかったようだが、ヤルモが嬉しそうにしたらイロナの怒りは収まった。
クリスタたちからはドン引きされていたけど……
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