091 来客6
「アレ? 上がっていっちゃった」
ヤルモ達のお風呂を覗いていたクリスタは残念そうな声を出す。
「いつもはもっとヤルモさんがいじめられているのに、今日は短かったですね」
どうやらエイニは、いつも覗いていたみたいだ……
「何それ! ちょっと聞かせてくれるかな??」
それに反応するクリスタ。恋愛御法度の教会で育ったせいか、性に興味津々なお年頃らしい……
「勇者様。そんなことを聞いたら耳が腐りますよ」
しかしオルガは潔癖なので、それが許せない。
「まぁまぁ。聞きたくなかったらいいよ。私たちの部屋に行こう!」
クリスタはエイニを部屋に連れ込み、キャピキャピとガールズトークに花を咲かせるのであった。
「「それでそれで~?」」
もちろん、聞きたくないと言っていたムッツリ聖女も連れ込むことは止めなかったので、ヤルモたちの夜の営みを興味津々に聞いていたのであったとさ。
* * * * * * * * *
翌朝……
「ぐはっ! あ……あれ??」
昨夜はイロナを楽しませていたヤルモは苦しそうに目覚め、いつの間に寝たのかと不思議に思う。
「昨夜はよかったぞ」
そこに目覚めたイロナは、ヤルモを抱き締めて甘える。
「ちょ……ちょっと苦しい……あっ!」
イロナの怪力で締め付けられて、昨夜のことを思い出したヤルモ。イロナの両太ももで首を絞められて気絶したので、ヤルモは首を触って繋がっていると確認が取れたら、ホッと胸を撫で下ろしていた。
「またしてくれるか?」
「う、うん……善処します」
危険の巣窟に首を突っ込むことは恐怖だが、頬を赤らめたイロナに言われたヤルモは断れないのであった。どちらかというと、締め付けがきついからかもしれないが……
「なんかみんな眠そうだな」
ヤルモが食堂にて朝食を取っていたら、エイニ、クリスタ、オルガの
「ダンジョンから戻った疲れがドッと出たみたいな? あははは」
ヤルモたちのあんなことやそんなことを聞いていたとは言えないクリスタは、乾いた笑いでやり過ごす。
「報告やパレードで大変そうだったもんな。手柄を押し付けて正解だ」
「そうそう……そんな感じ……」
確かにその疲れもあるクリスタとオルガ。いまさら押し付けられたことに腹が立って睨んでいた。
「あっ! そういえば、勇者様の滞在費を受け取ってなかったんですが……」
食事に同席しているエイニは、ガールズトークをしていて大事なことを忘れていたようだ。
「私のほうこそゴメンね。すっかり忘れていたわ。そうね……」
王女として自国民に
「しばらく他のお客さんを入れないようにするには、いくらかかる??」
「えっと……いまはふた部屋しかないので、もうしばらくはお客さんは取れないんですが……」
「正直だな~。ここにお金持ちがいるんだから、もっと吹っ掛けなさい」
「そ、そんなことできませんよ! 騙すようなことなんて……」
いくら宿を復興したいエイニでも王女を騙してまで儲けようとはできないので断ると、クリスタは真面目な顔で語る。
「じゃあ、一ヶ月の貸切りで、宿屋の修繕費を私が持つってのでどうかな?」
「そ……そんな大金もらえません!!」
「ここって、昔は貴族専用みたいなものだったんでしょ? 対価としては当然の価格だと思うけどな~」
「昔は昔です。いまはサービスは良くないですし……」
「前払いでいくらか渡すから、それでサービスを向上しなさい。ここは気に入ったから、復活した姿を見てみたいのよ」
「勇者様……あ、ありがとうございます!! ひっぐ……うぅぅ」
クリスタの優しい言葉に、エイニは感動して涙する。両親が残した宿が復活するのだ。実際問題、もう復活はできないかと思っていたエイニが涙してもおくしくない。
「そんなこと言って、あとから奪い取るんだろ?」
「え……」
「そんなことしないからね~? ヤルモさんは、いつになったら私を信用してくれるのよ!!」
人間不信のヤルモがよけいなことを言うものだからエイニの涙が止まるので、クリスタは焦ってヤルモを怒鳴り付けるのであったとさ。
クリスタから受け取った手付金を握ったエイニが宿から出て行くと、ヤルモたちは各々ゆっくりする。ヤルモとイロナは庭でのんびりし、手入れなんかもしていた。
クリスタとオルガはというと、自室でぐで~ん。魔王討伐と勇者の実務に追われ、今ごろ疲れが出て泥のように眠っている。エイニが用意してくれた昼食も食べに来なかったので、心配になったヤルモがイロナに食事を運ばせていた。
この日は、全員ゆっくりと体を休め、次のダンジョン攻略の英気を養うのであった。
「ぬお~~~!!」
イロナの夜のいじめを受けたヤルモ以外……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます