071 魔王討伐3
地下60階のセーフティエリアであんなことやこんなことはあったが、八時間の休息時間が迫り、各々テントから這い出す。
そこで夜営の撤収はタピオの仕事。昨夜はお楽しみではなく拷問を受けていたので、身体中が痛いようだ。特に股間が……
イロナはクリスタたちの料理を監視するように見ているが、クリスタとオルガは何かがおかしい。タピオたちをチラッと見ては頬を赤らめている。
どうやら昨夜、タピオたちの行為を覗いた時に見たタピオとイロナの裸を今ごろ思い出したようだ。特にタピオの裸……
それから静かな朝食が始まったが、誰も喋ることなく終了。片付けをして、地下61階に向かうのであった。
相も変わらず、タピオとイロナは『ガンガン行こう』。タピオは一度魔王の発生したダンジョンに挑戦したことはあるが、その時と比べてかなり楽そうだ。
あの時は足手まといの勇者パーティがいたことと、一人で全てのモンスターを相手にしていたから致し方ない。
今回はイロナが遊撃に出てくれているので、単体、多くて二匹相手するだけだから、かなり早く倒せている。
逆にクリスタとオルガは暇そう。魔王発生でモンスターが強くなっているので、イロナが張り切って倒しているから回って来ない。たまにタピオが回してくれるが、タピオは初心者設定のモンスターを送るので、危なげなく倒せている。
二人の仕事は、ほとんどドロップアイテム拾い。そのせいであまりレベルが上がらないし、暇なのでコソコソお喋りしている。
「ミミックがかわいそう……」
「踏み付けて一撃って……」
何匹も悲しそうな顔で死んで行く宝箱みたいなモンスターに同情する二人。最初は効率的だとは思ったのだが、一切仕事のできないミミックの切ない表情に哀れんでいるようだ。
「どれだけレベルを上げたら、あんなことができるんだか……」
「あの二人、間違いなく上級職でしょうね。勇者様は近くで戦闘を見ていたのですから、技から職業を見極められないですか?」
「いや、ほとんど
クリスタはタピオとの約束もあるので、タピオの使った変形は秘密にするようだ。
「はぁ……タピオさんみたいな頼りになる戦士がパーティに入ってくれたら……」
「みたいなじゃなくてタピオさんじゃないの~?」
「ち、違いますよ! 違いますからね!?」
クリスタとオルガがガールズトークに花を咲かせていても、タピオとイロナはガンガン進み、地下80階のセーフティエリア手前まで到着する。
「じゃあ、あいつは勇者の獲物だ。一人で倒せ」
「ムリムリムリムリ!!」
ライオンの頭、羊の胴体 毒蛇の尻尾を持つ巨大なモンスター、キマイラエンペラーを前にして、イロナの無茶振りが来たのでクリスタは高速で頭を横に振っている。
「死ぬ前に助けるからさっさと行け!」
しかし、イロナから死の宣告が来てしまったので、クリスタは戦うしかない。そこに、常識人のタピオが止めに入る。
「アレはさすがに一人では厳しいぞ」
「何故だ? ここまででレベルが上がっているだろ??」
「イロナが倒しすぎて、勇者に経験値が回っていなかったんだよ」
「あ……しまった……」
タピオの指摘を受けて、イロナは失敗に気付いてくれたようだ。
「俺が盾役するから、攻撃に集中しろ。たぶん攻撃はあまり通じないと思うから、反撃には注意しろよ」
「タピオさ~ん!」
鬼教官から助けられたクリスタは涙目でタピオに抱きつき感謝していたが、そんな場合ではない。
イロナから殺気が飛んで来たので、二人はいそいそとキマイラエンペラーに突撃する。
タピオを先頭を走り、キマイラエンペラーから直接攻撃が来ると盾で受け止める。さすがはタピオ。何倍も体重が違っていても、1ミリも下がらない。
ここでクリスタは飛び出そうとしたが、タピオに止められて背中に回る。その直後、キマイラエンペラーから【燃え盛る火炎】が放たれ、辺りは炎に包まれた。
「俺の攻撃に合わせろ!」
「はい!」
タピオは盾を構えて【燃え盛る火炎】押し返し、キマイラエンペラーの懐に入ると斬り付け。その重たい攻撃がアゴに入り、キマイラエンペラーはのけ反った。
その隙に、クリスタは横に回って連続斬り。少ないダメージを手数で補おうとしたのだが、それは悪手。キマイラエンペラーの尻尾の蛇の攻撃範囲に入ってしまっていた。
「ぐわっ……」
「言わんこっちゃない」
【猛毒の息】をもろに喰らうクリスタ。タピオはキマイラエンペラーの足に重たい一撃を喰らわし、流れで盾を構えながら勇者の前に立つ。
「一旦下がるぞ」
「ゲホッゲホッ……」
クリスタは声が出せなかったがタピオの背中を叩いて返事とし、タピオはキマイラエンペラーの攻撃を捌きながら後ろに下がる。
「聖女! 出番だ!!」
「【キュア】!!」
タピオはオルガの魔法範囲内に戻って声を掛けると、すでに詠唱を終えていたオルガはただちに解毒。続いて治癒魔法を使ってクリスタのHPも回復する。
「ごめん……」
「いい。気にするな。次からはすぐに戻れよ」
「はい!」
ここからクリスタは慎重に動き、タピオの後ろから飛び出てはヒットアンドアウェイ。【猛毒の息】だけは完全に防げず少し吸い込むが、オルガに治してもらって戦闘に戻る。
そうして時間を掛けると、ほとんどタピオの攻撃だけでキマイラエンペラーは地面に倒れるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます