008 戦闘開始


 イロナに話があると言って奥に消えて行ったテーム館長は、しばしイロナへの説得をしてから二人で席に戻る。


「こういうのはどうでしょう? お客様は性奴隷として買い、戦闘奴隷としても使う」

「いや、性奴隷だけで……」

「まぁ最後まで聞いてください。失礼ですが、お客様はあまりお金を持っていないと存じます。なので、イロナさんも戦闘に参加してもらい、お金を稼ぐのです。そのお金を月々納めてくれれば、皆、ハッピー。お客様の懐の負担も減らせますし、夜も楽しめます。その代わりと言いまして返品は受け付けませんし、イロナさん関連での慰謝料は支払いません。お得な条件ではないですか?」


 早口で捲し立てるテームに、タピオはどう答えていいものか悩む。悩んでいる理由は自分に有利に聞こえたので、また騙されるのではないかと……

 もちろんテームに思惑はある。返品不可、慰謝料無し。イロナをタピオに押し付けられれば、テームだけはハッピーなのだ。


「イロナさんと言ったか……値段はいくらなのだ?」

「借金が膨らんでいますので、金貨二千枚となっています」

「確かに高いな……」


 一般的な冒険者の暮らしは、一月に金貨5枚。年間100枚もあれば、そこそこいい暮らしができる。


「わかりました……少し値引きしましょう」


 タピオはそれよりお金を持っているから違う意味で悩んでいたのだが、払えないと感じたテームは苦しそうな顔で提案する。


「千! 金貨千枚でどうでしょう!? これ以上まけられません!!」


 一気に半値まで落としたテーム。本当のイロナの借金は金貨千枚なのだが、どうしても手放したいテームは、大きく吹っ掛けてお得感を出したのだ。


「千枚を分割……」

「年間100枚、十年契約でどうでしょう? もちろん無利子とさせていただきます。中堅冒険者の一般的な収入になりますが、イロナさんと共にダンジョンに潜れば、その倍は確実。それより多くのお金が手に入るはずです」

「なるほど……」


 今までの話を聞いて、タピオはまた悩む。


 イロナはテームを片手で持ち上げた姿も見ていたので、確かに戦力になる。

 金貨千枚の価値も、見た目を加味すれば納得できる。

 タピオの稼ぎは年間金貨500枚を超えるので、余裕で払える。

 何より、こんな美人に性処理をしてもらえるなんて夢のまた夢。


 タピオの股間は立ち上がった! ……もとい、タピオは前屈みに立ち上がった。


「買おう!」

「お、おお~。お買い上げ、ありがとうございます~」


 こうして各種手続きを終わらせたタピオは、イロナを伴って奴隷館を出るのであった。



「主殿……主殿?」


 足早に町中を歩くタピオは無口で、イロナが呼んでもなかなか気付かない。


「主殿!!」

「ん? あ、ああ。俺か」


 強く呼び付けられて、ようやく自分が呼ばれていると気付いたタピオにイロナは問う。


「どこに向かうのだ?」

「宿屋ですが……」

「そうか……てっきり家を持っているのかと思ったのだが、違うのだな」

「あ……イロナさんはそっちのほうがよかったですか……」

「かまわん。どこででも、やることは同じだ」


 男前なイロナにタピオは気後れして敬語になっているようだ。しかし、イロナはそれが気に食わない。


「主殿は我の主なのだから、もっと威厳を持って喋ってくれないか?」

「威厳ですか……」


 タピオは足を止めて振り返ると、イロナの目を見る。


「イ、イロナ……」

「なんだ?」

「や、宿に急ぐぞ!」

「わかった」


 ぎこちない会話をしたタピオは早足で歩き、それに合わせるイロナ。まるで競歩のように競争する二人は、町の者に不思議な目で見られていたことに気付かないまま宿屋に到着する。

 この宿屋は、タピオが助けたヨーセッピ老人のお勧めの宿。値段を見てタピオは少し戸惑ったが、イロナを連れているからかそのまま扉を潜る。

 宿屋の者にも少し場違いな目を向けられたが、ヨーセッピの手紙を見せればその後は丁重にもてなされて、そこそこの値段の部屋も割引いてくれて至れり尽くせり。先払いで支払いを終えると部屋に案内された。


 そこで夕食をとり、タピオは備え付けのお風呂に入ろうとする。


「我の出番だな」


 同時に立ち上がるイロナ。しかしタピオは慌てて止める。


「ひ、一人で入る!」

「何故だ? 洗うのも性奴隷の仕事だろう?」

「今日だけ……少し気持ちを落ち着かせたいんだ。頼む!」

「……そこまで言われては、性奴隷としては断れないな」

「楽にしていてくれ」


 ひとまず一人でお風呂に入ることに成功したタピオは汗を流すと、タピオのタピオを念入りに洗う。その時、すぐに終わってしまってはかっこ悪いかと思い、ゴソゴソしていた。

 そうしてお風呂から上がったタピオはイロナに入るように促し、ベッドの端に腰掛け、体を小さくして待つ。


 数十分後……


 お風呂のドアが開き、肌の火照ったイロナが出て来た。

 イロナは一糸まとわぬ姿だったため、タピオは見惚れて言葉が出ない。


「どうした? 我の体は変か?」

「い……いや。美しい……」

「フッ。そうであろう」


 イロナは照れるでなく誇らしげに堂々と歩き、タピオの前で仁王立ちで立つ。


「さあ! どうして欲しいか言え!!」


 性奴隷と思えないほど清々しい命令にタピオはポカンとしていたが、これではいけないと頭を振って気を取り直す。


「それじゃあ、手で……いやいや、手なんていつもやってる。ここはやはり……」

「さっさと言え!」

「は、はい!!」


 何やらブツブツ言い出したタピオにイロナは怒鳴り付けるので、慌てて返事をするタピオ。


「で、では、口で……」

「ほう……自主規制ピーーーからか。任せておけ!」

「わっ!」


 気合いの入った声を出したイロナは、タピオの脇に手を入れて立たせると、ズボンとパンツを同時にベロンと下ろした。


「フッ。準備万端だな……いざ参る! 喰らえ~~~!!」


 タピオの天を突くようなタピオのタピオを見て一笑したイロナは、とてもそんなことをするような感じのしない掛け声を出してから行為に及ぶ。


「うっ……うおおおお!!」


 すると、タピオは初めての感覚に陥り、おかしなあえぎぎ声をあげるのであった。

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