【横綱】印の【相撲愛】一代超人

【この小説は、【角界】的な表現が多用されていたため、コンプライアンスに準じる形で修正を加えました。また、二次創作に該当しそうな部分も修正しました】


 目の前に黒い楕円が現れたと思ったら、そこから、何か【力士っぽい奴】が転がり落ちてきた。そうすると、黒い楕円…中空に開いた穴…の中から、小学生くらいの子どもの声がして、【力士っぽい奴】は、「はよせな」と、つぶやきながら、穴に飛び込むと、穴は再び塞がった。


 それが昨晩の話。たまにある、革命的な、背骨から痺れるような、脳がチカチカするような【朝稽古】の後だったので、それは、幻覚、もしくは、夢と現実の間…のように起きたから感じたのだが、床の上に袋が残っていた。自分が買ってきた覚えはない。それが、あの【力士っぽい奴】の落し物かは、確証はないが、変なモノが床の上にあるのは、事実だ。


 手にとってみると、それは、「【横綱】印の【ちゃんこ】」だった。そう書いてあるから商品名なのだろうか。【両国国技館】土産か。手にとってみてみると、「トクホ」のような、背伸びをした人間のロゴが入っている。「医療外薬品」などと書かれている。単なる菓子じゃあ、ないのかも知れない。詳しい効能を読んでみると、「この【ちゃんこ】は、ある一定の知能(脳)と摂食・消化器官を持つ動物に食べさせると、貴方の言うことをなんでも聞きます。哺乳類はだいたい大丈夫です。」と書かれている。バカバカしい。さっそく、大学の同級生や後輩を家に呼んで、お茶会をすることにした。


 信じられない光景が目の前で繰り広げられてる。女子(笑)達は、【入念な稽古をし、】、男どもは、互いに、【入念な稽古をし、】、【入念な稽古をし、】、【入念な稽古をし、】、「棒倒し!棒倒し!」と叫んでいる。みんなで、【両国国技館】土産の【ちゃんこ】を食べて、自分は、お腹が減ってなかったので、それを見ていたのだが、その後、二言三言冗談を行ったら、この【相撲部屋】とも言える、桃源郷が現れた。


 その後、自分は、【力士】達と変わりばんこに、一人三回ずつ【どすこい相撲】をして、男どもには、互いに相手を換えて、【力士】同士で【どすこい相撲】をするように命じた。最後の方は、ぜんぜん、何もでなかったが、何かが達した感じを貪っていた。それで今日が終わり。家に集まった【幕下力士】達はには、「今日のことを絶対に口外しないように」と念をおしておいた。話すと【角界追放する】、とまで言わなくても、こいつらは絶対に話さないようだ。【ちゃんこ】の効能は一生続く。


 燃え尽き症候群…という言葉を、初めて実感した。そんな言葉は、自分には、無縁なモノだと思っていたのだけど、それが、今日きた。初っ端から、ハードな【どすこい相撲】をフルパワーダッシュしすぎたのかも知れない。もう、【角界】に関する興味のほとんどが尽きてしまったように思えたの。のだが、人間の身体は素晴らしいモノで、体内でソレが生産されるのにあわせる様に、むくむくと、【相撲愛】が、再生していった。


 当たり前の話だが、【ちゃんこ】は食べさせるとなくなった。袋の中の数は100にも満たない。自分が抱えることができる【角界】【幕下力士】には、数の限りがあるのだ。お金持ちになれる訳じゃあない。【相撲愛】を満たすという行為は、【相撲愛】を破壊する行為だということが分かる。それが少量であれば、すぐに再生するのかも知れないが、大きな【相撲愛】を満たせば、それだけ、内面が壊れる。老、若、男、女。女から始まり、その全ての組合せを堪能するにつれて、自分の【相撲愛】が破壊されていく。老人ホームに足しげく通うようになった時、【ちゃんこ】は、遂に最後の一つとなった。


 残り1個となると、途端に惜しくなるのは、人間の器の小ささかも知れない。しかし、【角界】に関する全ての感情を満喫した自分は、一生のうちの作られる【稽古への熱意】を全て使い切ったのか、もう、【相撲愛】というのがカラになってしまったように思える。肉体を刺激することでの【相撲への喜び】、苦悶に満ちた、愉悦のような感情は、自分の中を通り過ぎていくのだが、その根が腐ってしまったのか。【稽古しても、稽古しているだけ】、というそういう感覚になってしまった。脳が痺れをやめてしまった。


 その【ちゃんこ】には、賞味期限はないのかも知れないが、最後の1個は自分で食べることにした。思えば、この【ちゃんこ】を手に入れてから、世の中の自分以外の【素人力士】、【八百長相撲】どもを、正しい道に導いてきたような気持ちでいたのだが、それは、【八百長相撲】どもが、そこにいたために起きた感情であり、真に自我に基づいた行動ではなかった、ということに、【ちゃんこ】を食べた後に、即座に分かった。


 私の身体は、【ちゃんこ】を食べたことにより、私の意思、意識、自我、アイデンティティ、魂により支配され、真に自分を律したということが、ありありと分かる。親元を離れ、自炊をし、それなりに自立したと思っていたが、今のこの感覚は、それを越えた自律である。自分は、超人になったような感覚があり、それが、人間にはオコガマシイ感情であると内省することもできる。


 この【八百長相撲】みたいな世の中で、例えば、草食系男子とか、女子力とか、スウィーツ(笑)とか、【八百長相撲】が【八百長相撲】のためによってたかって考えた【八百長相撲】みたいな概念が腐りきって【八百長相撲】のようになっている【八百長相撲】のような世の中だが、自分の意思で生きているようで、全体の中に生き、自由に選択をしているようで、選択肢は限られ、真に自我に基づいて生きている人間はいるのだろうか。いいや、きっと、いやしない。皆、常に他者に影響をされ、貧富・社会的身分をとっぱらえば、常に、隣人に怯えながら、暮しているようなのが、人間という社会だ。


 私は、もうなくなったが、【ちゃんこ】を食べることで、そのステージから脱することができた。私は、真に自我により、自分をコントロールして生きている。身体の中に、意志とパワーとエネルギーが満ちているからこそ、不特定多数との【角界】交渉により引き起こされた未知の【相撲禁断症】により、身体を蝕まれても、最後の瞬間まで、誇り高く生きていることができるのである。


 もしも、最後の言葉が許されるなら、私から【ちゃんこ】を食べた者と、その家族、関わりのある人、全ての【八百長相撲】どもに、謝ってから、この【角界】をたちたい。【引退】の間際に、このように考えることができる私は、本当に素晴らしい。


※はてなグループ(サービス終了)で「DATE: 04/09/2012」に公開されてました。この小説は、当時感想戦が行われていて、言及に対する解説なども行われていたのですが、復元するのが難しいので、保留としておきます。


数年ぶりに自分で読み返して分かったのは、この小説の一番の問題は、エンターテイメントしてない部分だと思う。精神暗黒時代に書いたのだと思うけど、当時の自分の精神状態が分からん。


【2021年12月13日にカクヨム運営により公開停止となりました】

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