40. Always be honest 後編
"カラーズの街"
王からの
トールもプラリネもハーディアスも、外せないジョブクエストが入っているらしく、今回はソロでの旅立ちだ。
正直、一人旅のほうが
「じゃあ行ってくるよ。
「ホントに私がいなくても大丈夫?ハンカチ持った?朝はちゃんと起きれる?心配だよ......」
「何で急に行こうと思ったんだよ?まぁいいか、相手は王様なんだから、無礼なことすんなよな!」
「口の聞き方に...気を付けるんだな...」
三人から
なんだかんだ言いながらも、見えなくなるまで
ちょっぴり寂しい気分になるのは、一緒に過ごしてきた時間の証明だ。
【タスクがカラーズを旅立った】
ガタゴトガタゴト、のんびり馬車の旅。
一緒に乗り合わせたお婆ちゃんが、親切におにぎりをくれた。
ゆっくりと流れる景色を眺めながら、それを
「やっぱり旅はこうでないとな。電車で飛んだ時は、風景なんて楽しむ余裕無かったし......政都まで三日かぁ」
政都バーナルド、本来の名称は
遥か昔、王が主権を政治家に渡したことで、現在では形だけの王制になってるんだとか。
結果、国としての意識は薄れ、政都を中心として、各地域に七大都市が築かれることになる。
「都市の一つずつが、国みたいなもんってことかな」
それでも王家が残ってるのは、政治がしやすいためだろう。
王がいるから政治への支持も集まる。
歴史や伝統が人を惹き付けるのか。
とまぁ、クーベ大陸の歴史は、図書館で調べた限りでは、こんな感じらしい。
ちなみに、海の向こうは巨大な
読んでいて夢中になっちまった。
「ふぅ...さて、問題はこっちだが...」
リアからの手紙を取り出し、再度目を通す。
王への
『タスク君へ 元気にしているかしら?あなたの評判は、こちらでもチラホラと聞くようになったわ。何かと
まぁ、無理もないか。
自分でも信じられない事ばかり起こるし。
『あなたの活躍を祝いたい所だけれど、私は私で
リアはジャーナリストとしての手腕が認められ、政都へと
政治家を相手にスクープを掴んだのなら、本来は喜ぶべき事だが。
『ゴメンなさい、あなたを巻き込みたくは無いのだけれど。お願い!政都にある私の隠れ家に、情報を
よほどヤバい何かを掴んだのか。
文章に鬼気迫るものを感じる。
『本当に身勝手なお願いよね。でも、他の人には頼めない。どうか、もう一度だけ、私を助けてほしい リアより』
政都で何が起こっているのか、その政治家が何を企んでいるのかは知らない。
だが、リアの身に危機が迫っているなら、俺は行くだけだ。
政都バーナルドへ......なんか犬みたいな名前だな。
【小説家、政都へ行く】
"政都バーナルド"
途中、いくつかの町で馬車を乗り換えたり、『スロースタートル』の
「ドラゴンが攻撃してきても防げそうだな......さて、まずはリアの隠れ家を探すか」
手紙に書かれていた住所を辿ると、倉庫区画に出た。
おそらく、この倉庫に中のどれかだろう。
「ええっと、確か手紙の中に...」
手紙に同封されていたカギ。
その番号と一致する倉庫を見つけた。
ガチャン!ガラララララ!
中は改装された居住スペースになっていた。
ベッドにデスクに本棚にタンス、最低限の生活は出来そうだ。
「正に隠れ家って感じだな。えっと、レポートを見つけないと。ここかな...おーととと!ここは見たらイケナイ場所だった」
タンスを開けてみると、ドンピシャで下着の段でした。
いかんいかん、下着泥棒するために来たんじゃないぞ。
これをそっと閉め、別の場所を探す。
「ふむ、ベッドか......一応ここも調べておかないとな。無いとは言い切れない!」
シーツを
何となくリアの匂いを感じる。
このまま...ほんの少しだけ、リアを感じながら眠りたい。
「これじゃ変態じゃねーか!何をやってんだ俺は!...ん?あれは」
デスクの上に、マル秘と書かれた書類を発見。
わかりやすい場所に置きすぎ、極秘の情報じゃないんかい。
資料を回収、これで目的は達成。
「しっかりしてんだか抜けてんだか。中身は見るなって書いてあったな。とりあえず持って帰るか...あぁ、王様のとこに行くんだった」
こんなとこで、政治家を相手に頑張っていたんだな。
出来ればリアに会いたかった。
ドサッ!
何かが落ちる音が聞こえた。
見ると、本棚から何冊かの書物が落下したようだ。
部屋を物色したせいだろうか、拾い集めて本棚に戻していく。
その中で、一冊だけ奇妙な物に目が止まる。
「学習...帳?俺が子供の頃に使ってたノートにそっくりだ!」
表紙はボロボロになっているが、俺の世界で使われている物だ。
何でこんな物がここに......名前を書く欄に、うっすらと見える文字。
「
全身の毛穴が開いていくようなザワつき。
ここにあるはずの無い、遠い記憶のノート。
混乱を噛み殺すように、ページをめくり確認する。
「怪物に襲われる少女を、異世界から来た少年が助ける話......間違いない、俺が子供の頃に書いた創作童話だ。これは友達の女の子にあげたはずだ!何でリアが持ってる?いや、そもそも何で異世界に、これがあるんだ!?」
自分でも制御できないようなイラつきが声に出てしまう。
俺が小説を書こうとした原点、すべての始まり。
今となっては、何一つ思い出せない過去が、何一つ関係の無いこの世界で、目の前に現れた。
「何でだ...何が起こってるんだ!頭の中がパニックだ!どうなってやがる!」
流れ込んでくる情報量がキャパを越えた。
壁にもたれかかり、うずくまる。
手も足も震えが止まらない。
ガラララララ!!
倉庫の戸が開く音。
リアが帰ってきた?いや、だったら俺に回収を頼んだりしない。
隠さなければ...極秘レポートを。
【隠れ家への来訪者が現れた】
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