第4話 紅月-4
入学式の雰囲気からおかしかった、って言ったら信じる?
あたしたちが体育館に入っていくのを上級生がにやにやしながら眺めているの。品定めするかのようにね。入学式は一応普通に終わったわ。だけど、そのすぐ後、壇上に、ツッパリっていうのかな、不良の学生が上がってきたの。それからマイクを取って、叫ぶのよ。入学おめでとう、なんてね。先生たちはやめさせようとするんだけど、あんまり大勢だから抑えきれなくてね、そのまま不良たちの挨拶が始まるのよ。
―――市立でしょ。
そうよ。普通の学校。結局、不良生徒の力が強くなり過ぎて、先生の力じゃ抑えきれなくなっていたのね。そんな時代にあたしは入学したの。
すごいのはその後で、体育館を出て教室に戻ろうとしたら、その途中で声が掛かるのよ。クラブの勧誘くらいならまだいいんだけど、不良グループの勧誘だったり、ナンパだったり。あたしたちは唖然としながら教室に戻ったわ。
教室に戻ってホームルームが始まったら間もなく、上級生が入ってきて何だかんだとわめいて出ていくのよ。先生も怒鳴るんだけど全然抑えられないのよね。ちょうどマスコミで学校の体罰が問題になってる時期だったから、先生も強く出れなかったのよね。最近はそんなこともないわね。あたしは体罰は必要だと思ってるし、マスコミも昔より大人になったから、ちょっとしたことで取り上げたりはしなくなったけど、あの頃はまだまだそういう意識が未熟な時期だったのね。だから、不良のやりたい放題。
―――すごいとこだっんたんだね。
上岡だけじゃなかったみたいよ。城西も城南も随分荒れていたみたいよ。だから、両親は私立に入れたかったみたいだけど、あたし、ちょっと偏屈だったのね。今もそうかもしれないけど。
―――怖くなかった?
怖かったわよ。だけど、あたし、お兄ちゃんたちと一緒に柔道と空手習ってたから、少しくらいチンピラなら大丈夫だって思ってた。一対一なら負けないなんていう意識もあったわ。そういう点では、生意気な新入生だったのね、きっと。
だから、平気な顔して野球部に入ろうとしたのよ。女の子たちは怖がってて、いつもグループで行動しようって結束を固めてたのに、あたし、じゃあ、なんて言ってひとりでうろうろしてたの。それで校内歩き回って、って言うと不思議に思うかもしれないけど、クラブボックスのある場所なんてチンピラの吹き溜まりみたいなとこでね、あっちこっちでたむろして煙草吸ってる連中がいるような状態だったの。そんな中、平気な顔して歩き回って野球部の部室を見つけたの。
元気良く部室をノックして、ドアを開けると、とんでもないツッパリ連中が睨んできたの。一瞬引いたけど、こんなのでも先輩だと思いなおして、挨拶をしたの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます