第23話 なんて自分勝手なやつなんだ!

唇に伝わる熱は熱さを増し、より深いものへと変わっていく。角度を変えてちゅっ、ちゅと何度も。響くリップ音は卑猥で耳を塞ぎたくなる。はじめは唇を合わせるだけだったものもカマエルの舌が僕の歯列をなぞり開けてくれと言わんばかりに僕を煽る。


どこで息をしていいのか分からなくてできずにいると、だんだん息が苦しくなって息継ぎのためにぷはっと口を開けた隙にカマエルの舌が口腔に侵入してくる。




「はぁ、んっ…、ふぁ……あっ」




やつの舌に僕の舌が絡め取らていく。

時折、舌が上顎を撫でるように触れると全身に痺れが走って、腰から力が抜けそうになる。

いや、椅子に座っているから分からないだけでもう僕の腰は抜けているかもしれない。


キスだけでふにゃふにゃにされてしまった。


そっとやつの舌が離れていくと、自分の声とは思えない声が出た。



「ふぁ…ぁ…….」

「ふっ、お前はかわいいな」



目を細めて優しく見つめてくる。

なんだよ。そんな顔して…。


顔が暑くなる。

僕にかわいいと言う時必ずカマエルは目を細めて優しい眼差しで囁く。それはやつの癖なのだろう。


「ベル、俺はしばらくここには来れない。冬だからとかお前が嫌になったとかではない。ただ…。まぁ、色々あってなんだが近いうちにここに必ず戻ってくる。だからそろそろ本気でお前の答えが欲しい」


「答え…?」


「そうだ、答え」



そっか、僕のこと嫌になってじゃないなら少し我慢すればまた会える。消えたりなんかしないんだよな。そっか、そっか…。


少し下を向きかけてた心に日が差した。


それにしても、カマエルの言う答えとはなんだろうか?こいつは婉曲な言い回しが多いからわかりづらい時があるんだよな。



「………?」


「あー、やっぱり伝わらないか…。うん、まぁ急いでないしな。」


「なんだ、はっきりしろ」


「いや、今はまだ分からなくていい。ただ…少し離れている間に今感じた俺の熱を忘れるなよ」


「なっ、あっ….はぁ?!」



やつは俺の頬を撫でながら不敵に笑う。


返事がはっきりしないから催促したら特大の爆弾をもらった気分だ…。

さっきまで感じていた熱を思い出して身体が熱くなる。


身体の奥の方からじんわりあったかくなってきて、ずくんと奥に響く。この感覚はなんだろう。


「ベル、待てだ」


「えっ、何?」


「いい子で待ってろよ。

じゃあ行ってくる」


やつは言いたいことだけ言うと僕の頭をひと撫でして行ってしまった。


全く、意味がわからないしこの熱をどうしたらいいのかわからないし、やつは勝手だし!


いってらっしゃいなんて言ってやるもんか!

かってにどっか行ってろ。


バーカバーカ…


カマエルに高められた熱をどうしたらいいのかわからないまま途方に暮れた。


水をかぶることでどうにか収めたが、怒りだけはおさまらない。


やつが、次来ても家に入れてやらないと僕は心に誓った。






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