第2話 馴れ馴れしいやつ

そいつは突然僕の前に現れた。


「やあ、久しぶりだな。」


馴れ馴れしく話しかけてくるあいつは天使のカマエル。


肩まで伸びる金髪にエメラルドグリーンの瞳。

顔立ちはキリッとしていて、非の打ちどころのないほどに整っている。


カマエルといえば、天使達の住まう天界でも知らないものはいないほど有名だ。


天界の軍を率いるいわゆる将軍ってやつらしい。


なんでそんな奴がここにいるのだろうか…


「…カマエル、何しに来たの」


「おい、久しぶりに会いに来てやったというのになんだそのしけた面は」


「頼んでもないのに誰かさんが来るからじゃない?」


さっさと天界に帰れ。


「そう言って、本当は寂しかったんだろ?」


こいつ何言ってるんだ?


「それはお前の勘違いだ。早急に帰ることを提案するよ。」

「ついにお前の家につれてってくれるのか?」

「そんなことは一言も言ってない。」


見た目と違って中身が残念というかなんとも話の通じないやつである


そう、天使と悪魔では住むところが違う。


天使は天界

悪魔は魔界

人間は人界


世界は大きく3つの界層に分かれている。

ちょっとやそっとじゃあ行き来できないのだがそれをいとも容易くやってのけるのがこの男だ。


実際3日に一回は現れる。


暇人なのかもしれない。


「だってお前、俺がいないと1人だろ?」


許可してもいないのに、僕の隣に座ってきて天使特有のズケズケとした物言いで僕の心を削っていく。


ほんと余計なお世話だ。


僕は意味もなく群れているより、一人で花たちと戯れてたい。


「僕は好きで一人だからいいんだよ。」


もう、ほうっておいて欲しい。

キラキラしすぎなんだ、僕がもたない…


「ベル、俺はお前を放っておけない。

何故かと言われると答えにこまるがな」


そう言って、いつもはお綺麗な顔に不敵に笑みを浮かべるカマエルが少し心配そうな顔を覗かせているのを見ると胸がざわっとする。


何かの病気なのかな?


「僕の名前を気安く呼ばないで。」


また言ってしまった。


嘘。


僕の名前呼んでちゃんと僕を僕として扱ってくれることほんとはすごく嬉しい。


女の子みたいな愛称で呼ぶのは不服だけど。


名前を呼ぶということは相手の存在を認めることだと思う。

だから、他の悪魔たちに「おい」とか「お前」とかでしか呼ばれることがなく認められてないと何度も落ち込んでは少し寂しかった。



いつも思ってた。

だれか僕の名前をちゃんと呼んで。





ベルゼビュートって。





まぁ、最初がこいつってのは少し腹立だしくはあるけどほんとは嬉しかった。






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