第二章 再会、再会、えっまた再会!?
再会、再会、えっまた再会!? 1
お互い、驚きのあまり声もなく見つめ合う。
それほど長い間ではなかったと思うが、鋭い叱責の声が響いて、ルビアはハッと我に返った。
「無礼者! いつまで殿下の歩みを遮っているのです! 名を名乗りなさい!」
「も、申し訳ございません!」
急いで姿勢を正し、深く頭を下げた。
「北のカーネル=S=トゥルニエ子爵の娘ルビアと申します。殿下の御前を遮るなど、あってはならぬこと、幾重にもお詫びいたします。どのような罰でも受ける所存です」
「殊勝で結構なことですわ。けれど……」
カルミナのセリフを遮るように、大きな咳払いが挟まれた。
「殿下?」
「気にすることはない、ルビア=S=トゥルニエ。次から気をつけてくれればいい。怪我はないな?」
「はい」
「ならいい。下がれ」
「はい。寛大なお心に感謝いたします」
「あ、あの……?」
有無を言わせぬ早口でそんなやりとりを終えると、ルビアは倒れたまま呆然としているもう一人の女子生徒の手を引いて人混みへとって返した。
その顔を確認することもなく、途中で手を離して一人どことも知れぬ場所へ立ち去っていくルビアを、他の生徒は多少の憐れみと嘲りで見送った。
曰く、入学早々殿下にあんな無礼を働いて、恥ずかしくて人前に顔を見せることができないのだろう、と。
残念、そうではなかった。
「〜〜〜〜なんっっでやねん!?」
人気のない桜の木の下までやってきたルビアは、我慢していたツッコミをようやく吐き出した。もちろん、小声で。
「いや、ホンマなんで? なんでカズキがおんの? え、あいつも転生してたパターン? えっウソやろ? 他にもおんの? えっ、なんで?」
子爵令嬢として致命的なミスを犯した恥も、今ばかりはどうでもよかった。
「ていうか王子? あいつが? いやちょっと神様贔屓しすぎちゃう? オレ北海道の田舎ですけど? しかも女子になっとるし? 不満はないけどズルすぎやろ! え、ていうかマジで次会ったときどんな顔すればええんや。いや、そもそも会わんか? え?」
ぐるぐると混乱がおさまらない中、さらに追い討ちをかけるように後ろから知らない声がかけられた。
「おーい神崎! 神崎のあっちゃん!」
「! そ、そのふざけた呼び方は……」
思い当たる人物はただひとり。「まさか」と「またか」という気持ちで振り返り、
「いや、誰やねんお前っっっ!」
「はあっ!?」
反射的にそう叫んでしまい、やってきた男子生徒にさっそく怒られることになった。
「おま、マジか!?」
「いや、ごめん。分かってる、
「二重三重に失礼やなお前っっ!」
ここで二人は、荒くなった息を整える。
「……よっし、少し落ち着いた気する」
「そらよかった。まさか、一発目誰やねん言われる思わんかったけどな」
「それはマジで悪かったと思ってる。……で、何がどうなってんの?」
「いや、オレに聞かれてもそれは知らん。けど聞いて驚け、なんとハギもおんねん」
「はあ!?」
本日三度目の衝撃。正直、全然覚悟していなかったところで心臓を酷使している気がする。
「ハギ!? ハギってあいつ!? 四辻ハギ!?」
「オレ、あいつ以外にハギなんて知らん」
「オレもそうやわ。えっ、マジで? なんで? ちょっと転生しすぎちゃう?」
「しかもあいつ、この学園の理事長の息子」
「はーっ!? なんでやねん! アカンやろ! ただでさえ頭めっちゃ良くて運動もできんのに、権力までつけたらアカンやろ! ホンマ神様何考えとんねん!?」
「オレらからすれば、お前が女体化しとる方がなんでやねんが天元突破しとんのやけど」
「うっさいわオレが一番思っとんねん。つか意味分からんねん」
大きく息を吸って、吐く。
「よし、今度こそ落ち着いた。たぶん落ち着いた。……もう何もないよな?」
「たぶん?」
へらりと浮かべられた適当な笑顔と答え方が、梁川らしくて懐かしさを感じると同時に、今の顔にも似合って見えたのがなんだかおもしろくて、思わずルビアは小さく笑ってしまった。
「ところで神崎さあ、そのナリで関西弁と一人称『オレ』は違和感ヤバい」
「言われんでも分かっとるぅ〜〜〜〜……」
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