第59話 密着し過ぎだろ!?
【夕食後の名染伊太合宿所ロビー】
今日の合宿は波乱の幕開けだったな。
まぁバス内から波乱は起きてしまったんだが……
あれから舞奈の様子を伺っていたけど、別にいつもと変わらないし、やはり俺がキスをしてしまった事には気付いていないみたいだな?
はぁぁ、良かったぜ……一時はどうなるかとヒヤヒヤしたからな。
それにある程度の予想はしていたけど、いきなり昼食はそう簡単に食べる事のできない『カレーライス』……『謎めいた合宿』っていうよりも『訳のわからん合宿』だな!!
挙句の果てに俺達の班だけ具材が入っていない『普通以下のカレー』を食べるはめになると思っていたけど……まさかの一発逆転で『合格』判定……
合宿の目的はなんとなく理解したけど判定に対しては多少の違和感はあるよな。でもまぁ、クラスメイトのお陰で美味しいカレーライスが食べる事ができたし、その後の舞奈はクラスメイトと少しだけど打ち解ける事ができたみたいだからな。なのでややこしい事は考えなようにしよう。
ただ他クラスの奴等に対しての罰ゲームランニングは少し可哀想な気はしたが……
明日もこんな感じの行事が行われると思ったらゾッとするぜ。
それにしても、あのルイルイの性格だけは読めないな!!
ひとつだけ言えるのは口が悪過ぎるって事だけだ。
ほんと、謎の多い女だよなぁ……
「お~い、フツオ~何してるんだ~? 風呂行かねぇのか~?」
「あぁ~モブオか? 俺はさっきの晩飯を食べ過ぎてお腹が苦しいから、もう少しここで休憩してから風呂入るわ」
「そっか、了解だ。それにしても予想以上にここの晩飯って
はぁああ!? セクシー美女だと?
まぁ、セクシー美女には違い無いけど、どう考えてもあの口の悪さの方がインパクト強過ぎだろ!?
「あんなガサツで口の悪い女が晩飯なんて作れるわけ無いだろ? それも500人分の晩飯をさ……仮にルイルイが晩飯を作っていたとしたら間違いなく料理の中に何か変なモノを入れているはずだ!!」
「さっ、さすがにそんな事はしないだろう」
「いやっ、あのルイルイだったらやりかねないぜ!!」
「それはひどいな~ヒトヤン……」
「えっ? ル、ルイルイ!? なんであんたがここにいるんだ!?」
「ハハハ、私がロビーにいたらおかしいか? それに今の話だが私はそこまで酷い女じゃないよ。そんな事をする様な女に見えるか?」
「見える!!」
「ハッハッハッハ、即答だな? やはりヒトヤンは面白い奴だ。他のミジンコどもとは少し違うな」
「そ、それ褒めてるのか!? 俺は全然嬉しくないぞ!!」
くぅっ、ルイルイと話していたら調子が狂っちまうぜ!!
「それでブオブオは今から風呂か?」
「は、はい!!」
何が『ブオブオ』だ。めちゃくちゃ呼びにくいじゃないか。でもモブオの奴はまんざらでもなさそうだな? なんか余計に腹が立ってきたぞ。
「ブオブオ? 私も一緒に入ってお前の背中を流してやろうか? ワッハッハッハッハ!!」
「えーっ!? そ、それは凄く夢の様で嬉しいですがさすがに遠慮しておきます!! そっ、それじゃ俺はここで!!」
「おい待てよモブオ!! チッ、モブオの奴、俺を残して行きやがって……」
「それでヒトヤンは風呂に行かないのか?」
「あ、あぁ俺はもう少しここで休憩してから風呂に入るつもりだよ」
「ほぉぉそうか、それじゃぁ私もここで休憩するとしよう。ヒトヤンの隣に座らせてもらうぞ!? ヨッと……」
ちょっ、ちょっとルイルイ!?
「な、何で俺が座っているソファーに無理やり座るんだ!? それも俺の横ピッタリに……密着し過ぎだろ!? 別の空いているソファーに座れば良いじゃないか!?」
「ハッハッハッハ!! 別に良いじゃないか? それともヒトヤンは私が横に座って恥ずかしいのかい? フフフ……ウブな奴だなぁ……」
「はっ、恥ずかしくなんてねぇよ!!」
ルイルイめ、一体何を考えているんだ!?
し、しかし……めちゃくちゃ良い匂いをさせてやがな!!
一瞬、クラっとしたぜ!!
だ、ダメだ。このままではルイルイのペースになってしまう。何とかして俺のペースに持っていかなくては……
「とっ、ところでルイルイ?」
「何だヒトヤン?」
「ルイルイに聞きたい事が山ほどあるんだけど聞いても良いか?」
「ああ構わないぞ、何でも聞いてくれ。私の好きなタイプが知りたいのか? 私はヒトヤンみたいな奴が好きだな~!!」
「そ、そんな事、誰も聞いてねぇよ!! それに俺みたいなのが好きなタイプなんて言うんじゃねぇ、からかわれているとしか思えないわ!! そ、それに昼から思っていたけど、モブオにまで『ブオブオ』って何だよ? 変な呼び名だけど、あいつも繰り返しの呼び名なのに何で俺だけ『ヒトヤン』なんだ!? べ、別に俺は繰り返しの呼び名が欲しい訳じゃないけどな!! そ、そこは勘違いするんじゃないぞ!?」
「別にからかっている訳ではないぞ。本当の事を言ったまでだ。前にも言ったが今まで私が好きになった男の呼び名は全て『ヒトヤン』だからな。だから私からすれば繰り返しの呼び名の奴等は『クソ』みたいなものなんだよ」
「そ、それはそれで酷い言われようだな!?」
まぁ『ブオブオ』はクソみたいな呼び名だけど……
「まぁそんな事はどうでもいいじゃないか? 私も今日は久しぶりにこの合宿所に来たから少しだけ昔の事を思い出してな、それでロビーで昔の事を思い出そうと思って来たってわけさ」
「昔の事……?」
「ああ、そうだ。さっきまで晩飯を作りながら青春時代の思い出に
えーっ!? や、やはり晩飯をルイルイが作っていたのか!?
ごっ、500人分だぞ!?
それはそれで凄ぎないか!?
「あ、勘違いするなよ? 自分の晩飯を作っていた時だからな」
「思いっ切り勘違いしたわ!!」
「まぁ、話を戻すが、せっかく昔の事を思い出したんだから誰かに聞いてもらいたいと言う気持ちになってしまったのさ。喜べヒトヤン、その誰かにお前が選ばれたってわけだ。どうだ、嬉しいだろ?」
「嬉しくねぇよ!!」
「ハハハ、照れるんじゃないよ」
「照れてねぇよ!!」
ルイルイはマジでポジティブな性格だよな!?
さすがは『元ポジティ部部長』って事だなぁ……
はぁぁぁぁ……一気に疲れてきたぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます