第25話 その呼び名だけは嫌だ!!
「ほぉぉ、私の事が大嫌いだと言ったな?」
「あぁぁそうだ。俺はアンタが大嫌いだっ!!」
「ふ~ん……なるほどなぁぁぁ……良い根性をしているじゃないか」
ご、ごめん皆……
いつもは口に出してはいけないような突っ込みは心の中で叫んでいたけど、今回はさすがに我慢出来なかったよ。
あぁ、美代部長、めっちゃ泣きそうな顔してるよぉ……
それに、菜弥美先輩もテルマ先輩も凄く心配した顔をしている。
子龍先輩はいつの間にか顔の角度が元に戻っているけどな。
じゃあ……ま、舞奈は?
な、なぜ今、お茶の準備をしてるんだ!?
も、もしかしてテンパっているのか!?
いや、きっとそうだ!!
あの『超マイナス思考』の舞奈が冷静なはずがない!!
……ドボドボ……ドボドボドボドボドボドボ……
ほらっ!!
俺の予想通りだ。
お茶がこぼれまくってるし!!
はあぁぁぁ……ゴメンよ、舞奈……
「お前、『フツノヒトヤ』と言ったな?」
「あぁ、そうだ。何か文句あるのかよ!?」
「いや、別に文句はない。ただ私に堂々と『大嫌いだ』と言ったお前に『選択肢』を与えようと思ってな。どれを選ぶかはお前の自由だ!!」
せ、せ……『選択肢』だと!?
なるほどな。そういう事かよ?
顧問の事を『大嫌いだ』と言った俺に『退部』するか『この顧問に謝罪して部に残残して欲しいと懇願するか』の選択をさせるつもりだな!?
ああ、良いだろう……
もうとっくに覚悟は出来てるんだよ。
せっかく『ネガティ部』の人達と馴染んできて楽しくなってきたところだったけどさ……
それに舞奈を部に誘った責任もあるんだけど……
だが、俺はこの『ルイルイ』の事が……いや、何が『ルイルイ』だ!!
俺はコイツに詫びてまで部に留まりたくはないからな!!
詫びた時点で、俺はコイツに3年間『奴隷』の様な扱いをされるに違いないんだ!!
絶対そうだ!!
さぁ『ルイルイ』……いや、先生よ!!
早くその『選択肢』とやらを言ってくれ!!
もう覚悟はできているんだからな!!
「早くその『選択肢』ってやらを言えよ!!」
「フフフフ……いいだろう……では『フツノヒトヤ』よ、自分で選べ!!『選択肢』は3つあるからな!!」
「へっ? 3つ? ふ、2つじゃないのか??」
「3つだ!!」
そ、想定外だぞ……
まさか『選択肢』が3つもあるとは……
残りの1つが何なのか全然読めねぇぞ!!
「まず1つ目が、『フツフツ』だ……」
「へっ??」
「そして2つ目が、『ヒトヒト』……」
「へっ? へっ??」
「そして3つ目が『ヒヤヒヤ』だ。さぁ、お前はどれを選ぶんだ!?」
・・・・・・・・・・・・???
「あのぉぉ……何を言ってるのか意味が全然分からないんだけど??」
「はぁぁあああ!? 意味が分からないだとぉぉ!? バッ、バカヤロー!! これからお前の事を、私がどう呼ぶかを決めているんじゃないか!! そんな事も分からないのか、お前は!?」
・・・・・・・・・・・・
は―――――――――っ!?
何を言ってるの、この女は!!??
「お、俺……今アンタの事が大嫌いって言ったよな!? そう言ったよな!? ちゃんと聞こえていたよな!?」
「あぁ、勿論ちゃんと聞こえていたさ。私は聴力検査の数値はめちゃくちゃ良いぞ!!」
「じゃぁ何故、この状態で俺の呼び方を決める必要があるんだ!? 俺はあんたの事が大嫌いって言ったんだぜ!! 普通は顧問の事を『大嫌いだ』なんて言ったら『退部』か『謝罪しろ』って事になるんじゃないのか!?」
「はぁぁあああ!? 退部だと!? 何で退部する必要があるんだ? バカなのか? お前はバカか? それとも『普通のバカ』か?」
「なっ、何でそこで『普通』を付け足すんだ!?」
「私は『大嫌い』という言葉……結構好きなんだよ……」
「何、意味の分からない事を言ってやがるっ!!」
「フフフフ……まぁ昔からよく言うだろう? 『嫌よ嫌よも好きのうち』ってな」
「なんじゃそりゃ!? しっ、知らねぇよ!! っつうか、本当に俺はアンタが大嫌いなんだし!!」
「でもな『フツノヒトヤ』……大嫌いって事はだなぁ、後はもう私の事を大好きになるしかないんだよ。それは『確定事項』みたいなもんなのさ♡」
……ドキッ!!
な、何だよ!?
ドキッとしたじゃないか!!
それに、急に女の色気を出した表情をしながら名言みたいな事を言い出してさ……
お、思わずキュンとなりかけたぜっ!!
そっ、そんな色目で見ても俺はだっ、騙されないからな!!
「いずれにしても俺の退部は無いって事なのか?」
「そういう事だ。だから3つの中から好きな呼び名を早く選ぶんだ!!」
「ど、どれも却下に決まってるだろ!!」
「よし、そうか……それじゃぁ分かった!!」
諦めるの早過ぎないか!?
「じゃあ、お前の事はこれから『ヒトヤン』と呼ぶ事にする!!」
「ひ、『ヒトヤン』!? その呼び名だけは止めてくれ!! その呼び名は昔からよく言われて飽き飽きしてんだよ!! それに他の人達の呼び名みたいに繰り返しも無くて全然共通点が無いじゃないか!? おかしいだろ!?」
「ヒトヤン……そんな事はどうでも良いじゃないか? お前はお前だよ……他の者と『普通』に合わせるだけで良いのか? ヒトヤン、お前は本当にそれで良いのかい?」
「はっ!!」
って……ヤ、ヤベェ!!
またしても大人の色気を出した表情であたかも凄い事を言ってる様な雰囲気を出してきたから思わず納得してしまうところだったぜ!!
で、でも呼び名で言い合うのも面倒くさい気もしてきたしなぁ……退部にならないんなら、ここらで妥協しないといけないかもな。先輩達も心配しているし……
「わ、分かったよル…ルイルイ先生……もう俺の呼び方は『ヒトヤン』でも何でも良いよ……これ以上話をするのも面倒くさいし……」
「おぉ~そうか!! 喜んで納得してくれたか!?」
「喜んでねぇし、納得もしてねぇよ!!」
俺がそういうとずっと俺の事を心配していた先輩達や舞奈が安心した顔をしながら駆け寄って来る。
「わ―――――――――――っ!! ヒトヤン君、本当に良かったです!!」
「ヒ、ヒトヤン、凄く心配したぞし、悩み事がキャパオーバーになるところだったよ!!」
「ヒ……ヒトヤン……あ、呼んでみただけ……」
「ヒトヤン君、ホント良かったよ……」
「ヒトヤン!! と、と、とりあえずお茶飲む!?」
「イヤイヤイヤッ!! あなた達は絶対に俺の事を『ヒトヤン』って呼ばないで下さいよ!!」
はぁ……とりあえずこれで良かったのか?
「ところでさあ、ルイルイ先生……あんたの本当の名前は何ていうんだ? 教えてくれよ?」
「おーっ、私の名前か? 私の名前を聞いて驚け!! 私の名前は『
言ってる意味が分からんわ。
でもルイルイ先生の名前ってどう考えてもさ……
『
そっ、そのままじゃねぇかぁ――――――――――ッッ!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます