第63話 十二歳
レボルシオン領発足から更に月日が経ち、数か月が経過して、新しい年を迎え、俺達は十二歳を迎えた。
年が明けて一番最初にやった事は、もちろん『弐式』の職能の開花式だ。
以前の子爵領だった頃は、開花式が有料だったので、受けられない人も大勢いた。
それを知った俺は、『無職』でも構わないと、住民達に開花式を受けて貰った。
もちろん大半が『無職』で職能なしになってしまうけど、中には職能を開花させ、これから活躍出来る人も沢山いるのだ。
出来れば俺の転職で全員を変えてやりたいんだけど、それはミリシャさんから固く禁じられた。
職能を与えればきっとみんな活躍出来るようになるだろう。
しかし、それはレボルシオン領だけの話になる。
もしもその噂が他の領に流れれば、多くの人々が訪れてくるだろう。
それは間違いなく火種となる。
だから『銀朱の蒼穹』とその傘下組織の『弐式』『参式』のメンバーだけ転職させる事に決めていた。
仮に職能なしになったとしても、活躍できないという訳ではない。
彼らには彼らなりの活躍の場があるからね。
ただ、職能ある人よりは贅沢とかは難しいけどね。
『弐式』に今年十歳になる子が八人いた。
中には下級職能を開花させた子もいたけど、全員俺の力で中級職能に変更させた。
色んな職能に変えながらそれぞれが使いやすい職能にする予定だ。
メイリちゃんを中心に十二人のパーティーを組むようになった。
『参式』は相変わらず全員でレボルシオン平原でスモールボアを狩り続けてくれた。
おかげで、レボルシオン領の食料事情が大いに改善できた。
更に、戦闘職能を持っていた住民達や、冒険者を卒業した人達を『警備兵』として雇う事にした。
実は王国法上、個人が『警備兵』を雇う事は違法なのだが、クラン『銀朱の蒼穹』の『警備兵』として雇う事にした。
意外にも、クランでこういう兵を雇うクランもいるそうで、法的に問題ないらしい。
それから俺達はレボルシオン領のすべての狩場と歩き回り、各狩場の情報を収集。
レボルシオン領にあるダンジョン『石の遺跡』も攻略を進め、攻略情報をどんどん作り進めた。
二層のフロアボスは大きな猪で、ビッグボアより三倍は大きい『グレートボア』。
その大きさからもわかるようにとてもタフで、突撃だけでも凄まじい威力だったが、同ランク魔物『レッサーナイトメア』より攻撃種類が単純で、予兆行動も見極めやすくて簡単に倒せる事が分かった。
その情報は結果的に『特別情報』となった。
最近屋敷に帰ると、とても良い事が待っている。
「お兄ちゃん! お帰り!」「兄さん! お帰り!」
可愛らしい
俺は両手で二人の頭を優しく撫でてあげる。
二人とも満面の笑顔を見せてくれるのだ。
ルナちゃんはメイド服を、ルリくんは執事の服を着ている。
「あれ? ルリ、燕尾服新調したの?」
「え? 分かるの?」
「う~ん、あ! ルリ、また身長伸びたのね!」
実は二人の身長は同じくらいだった。
しかし、ここ一年で、ご飯もしっかり食べてくれるようになったルリくんは、今ではルナちゃんよりほんの少し大きくなっていたのだ。
元々ルリくんが着るようになった執事用の燕尾服もお古で、少し小さかった。
身長が伸びた事で新調しているのだろうね。
それはそうと、ルリくんもすっかり心を開いてくれるようになった。
それが凄く嬉しい。
ルナちゃんもそうだけど、ルリくんはずっと俺の執事になりたいと、屋敷ではずっと付いてくるくらいには元気になった。
「お兄ちゃん! ルナも大きくなるんだから!」
「はいはい~でも俺は可愛いルナちゃんのままがいいな~」
「えっ? ルナ……大きくなっちゃいけないの……?」
そのつぶらな瞳がまた可愛い。
「ソラくん! うちのルナちゃんに変なこと言わない!」
アムダ姉さんはルナちゃんが大のお気に入りのようで、暇があれば抱っこしている。
「あはは、ルナちゃんは大きくなったら、きっと美女になるから、楽しみにしているよ~」
ルナちゃんの顔が少し赤く染まる。
そのあとから『弐式』の子供達が雪崩れてくる。
俺達を囲んで色々あった事を話し始める。
最近では遠征も増えているので、帰りが三日ぶりとか、四日ぶりとか、長いと一週間とかもあるので、こういう時にまとめて褒めて貰いにくるのだ。
――――パンパン!
両手を叩く音から、「はいはい! みんな! お兄ちゃん達はお帰りで疲れてるからね~まずはご飯の用意をしようね!」と声が聞こえて「「「「はーい!」」」」って一斉に返事が聞こえる。
「ただいま、シスターグロリア」
「お帰りなさい。子供達がソラお兄ちゃんが大好きすぎて我慢出来なかったみたいで」
「あはは、寧ろ俺の方こそ、飛び込みたいくらいですから」
「ふふっ、お疲れでしょう。すぐに食事を用意しますから」
「ありがとうございます」
シスターグロリアさんは時間があると、屋敷に来てくれて屋敷で働いている子供達を激励してくれたり、家事を教えてくれたりするのだ。
そんな生活を暫く送っていると、とある一団が『銀朱の蒼穹』を訪れてきた。
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