第30話 亡者の墓②

「君はめちゃめちゃ弱いじゃんよ!!」


 安全地域に戻ったら、絡んで来た女の人から、またもや絡まれた。


「はい。俺は弱いですよ?」


「彼女に助けられて、男として恥ずかしくない訳!?」


 なんか、妙に絡んでくる。


「ソラは弱くないです!」


「あはは……いいよ、フィリア。弱いのは事実だし。えっと、お名前をお聞きしても?」


「ふん! 私はこの『赤き紅蓮』パーティーの炎の魔法使い、メリッサよ! 覚えておきなさい!」


「メリッサさんですね。はい。ちゃんと覚えておきます。それとですね」


「ふん、なによ?」




「確かに俺は弱いです。ですが、俺には俺なりの強さがあります。いずれ……お見せしますよ」




「っ!? …………いいわ。その時を楽しみにしてるわ」


 珍しく俺達に突っかかって来るメリッサさんは、「ふん!」と言い、パーティーの元に戻っていった。


 俺と同じ赤い髪と赤い瞳の彼女は、俺とは真逆の強気な性格のようだ。


「フィリアが怒る事はないだろう」


「むぅ……ソラの強さを知りもしないで……」


「あはは、それをいずれ証明するんだから、今はいいよ。それに彼女達は敵じゃない。同じダンジョンで戦う良きライバルだから、あんまり威嚇しないでね?」


「うん…………」


 休憩しながら、他のパーティーの戦いを見る為、残ろうとした時、違うパーティーの男性が一人、近づいてきた。



「中々良い事言うじゃねぇか。同じダンジョンで戦う良きライバルか」


「はい。だって、ここで争う理由はないですから」


「ふぅん~、争う理由ならあるさ」


「え? あるんですか?」


「ああ、狩りは効率が大切だ。だから狩りの途中で鉢合わせもよく起きる事だよ。そうなれば、獲物の奪い合いが始まるのさ。だから俺達は敵同士なんだよ」


「でもお互いに危なくなったら助け合うでしょう? 助けてくれたお礼はするんですけど、そもそも助けてくれなかったら、生きられないですからね。それは敵というよりは、良きライバルですよ」


「がーはははっ! 気に入った! 最近出会った若いのでは、一番まともだな! 俺はパスケル。『蒼い彗星』というパーティーのリーダーをしている。よろしく」


「俺はソラです。パーティーは組んでいますが、名はまだないです。よろしくお願いします」


 握手を交わした青い髪と爽やかな笑顔が素敵なパスケルさんは、気に入ったらしく、二層について教えてくれた。



 二層では三種類の魔物が出て、一番強いのはレッドスケルトン。単純に動きが速いのに、攻撃が重いらしい。


 二番目に強いのはレイス。今回の目標である『フォースレイス』の劣化版だそうだ。浮遊している為、足を砕いて動けなくさせるなどの事が出来ない分、戦いでは厄介らしい。攻撃も魔法を使ってくるので、気を付けてないと、炎の魔法が急に飛んでくる事もしばしばあるそうだ。


 三番目は水の精という魔物らしくて、水の玉のような魔物が浮遊しているらしい。攻撃した場合のみ反撃してくるけど、基本的には水魔法を撃って来るそう。剣などでは斬れず、魔法じゃないと倒せないそうなので、魔法がないパーティーは基本的に無視するといいそうだ。ちょいちょい水溜まりがあるのが、水の精がいる場所だそうだ。



「パスケルさん。ありがとうございます!」


「いやいや、君のような若者には頑張って欲しいからね。ぜひこれからも頑張ってくれよ!」


「はい!」


 パスケルさんはメンバーを連れ、安全地域を後にした。


 その後、メリッサさんが「ふん!」とわざわざ目の前で言い放ち、安全地域を後にした。


 両方の戦い方を眺める。


 今まで見て来たパーティーと戦い方は大して変わらない。


 前衛が削りつつ、後衛の魔法使いがトドメを刺す。


 連携の仕方はそれぞれ違うけど、最終的にトドメ役がトドメを刺すのは一緒だ。


 暫く見て、レッドスケルトンとレイスとの戦い方を眺める。


 一層やセグリス平原、沼地とは違い、魔物が基本的に一体ずつ飛んでいる事に気が付いた。


 多くて二体だった。


 それと魔法使いに余裕がある場合には、雷魔法で水の精を一撃で沈めていた。


 一時間ほど、戦い方を眺めて俺達はセグリス町へ戻って行った。




 ◇




「メリッサ、何をそんなにイライラしてる?」


「んも! あんなカップルでダンジョンに潜って、ダンジョンを舐めているやつを見るとイライラするのよ!」


「はぁ……そんな……人によりけりだろうよ」


「ふん! なーにがソラは弱くないですーだ! ムカつく!!」


 腹いせに雷魔法を水の精に放つメリッサ。


 パチパチと雷の残滓ざんさい残ってる場所に、水の精のコアが落ちる。


「おい! メリッサ! 珍しくコアが落ちたぞ! やるな!」


「…………はぁ、イライラしてたのに、こんな時に限って、こんなの落ちるもんな」


「いいじゃねぇか、今日は美味いもん食おうぜ!」


「「「「おー!」」」」


 メリッサのパーティーメンバー五人が水の精のコアを見て喜びの声を上げた。


 当人のメリッサは、小さく溜息を吐いて彼らの後を追った。




「…………ラミィ……」


 メリッサは悲しそうな表情で小さく呟いた。

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