第9話

 その時、激しい稲光が墓地を覆った。周囲のお墓が急に揺れ出し、にゅっと空へ伸びていった。


「え?! な、何これ?!」


 周りはまるでお墓でできた迷路になった。

 

「お父さん! お母さん!」


 必死に両親を呼ぶが、返事は帰ってこない。

 おしゃべりな髑髏が私の左肩に現れた。

 ずっしりとした感触を感じた。


「さあ、ここからスタートだ! みーぎ、ひだり、みーぎ、ひだり……」

「……」


 私はこの不可解な現象を気にせずに、ひたすらおしゃべりな髑髏の言うことの逆の道を歩いた。早く、早く、お父さんとお母さんを探さなきゃ!


「ほれほれ、みーぎ、ひだり。みーぎ、ひだり。そっちは反対だよーー」


 小雨で少し肌寒く。徐々に薄暗くなる視界の先にはお寺の灯籠が見えた。


「ひゃははははーーー、ゴールはまじか。みーぎ、ひだり。みーぎ、ひだり」


 延々とした迷路となった墓地を抜けると、両親はこちらを見つめていた。


「やっぱり、何だか不思議だと思っていたわ」 

「利絵。後ろを見てみな。おじいちゃんだよ」


 私は後ろを振り向くと、数年前に亡くなったおじいちゃんが派手な着物姿で佇んでいた。こちらにニッコリ笑っている。

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