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「本物っぽいなぁと思ってたんですけど……そうなんですね」

「うん、この幽霊とされているのは、明らかにCGだね。まぁ、この場所に霊がいることは確かだけど……ここじゃない。って、この霊能力者の話はどうでもいいよ」


 友野はホワイトボードに、今のところわかっていることを書き出した。


 1、アパート

 →休日、外には出ていない

 2、スーパーの駐車場

 →車で待機中、15分の間

 3、ほとり公園のトイレ

 →ランニングの途中、心霊スポットの池から離れている


 鼠、雨の日……


「心霊現象とされるものの多くは、何か伝えたいことがあるもからというのが多い。雨の日に目撃者の三人には何か共通点はないだろうか?」

「そうですねぇ……時間も場所も、目撃者の年齢性別もバラバラ。繋がりがあるのは、二件目の現場であるスーパーが愛里さんの働いているスーパーだってことぐらいですけど」

「そうだね……って、そうなの? 俺それ、聞いてないよ、ナギちゃん!」

「あれ? 言ってませんでしたっけ?」


 てっきり弟の隼人が渚と同じ大学生だと聞いていた為、友野は双子の姉である愛里も学生だと思っていた。


「聞いてないよ……まったく、大事な情報だよ、それは。でも三件目のほとりの森公園との繋がりはないよね、隼人くん」

「そうですね……ほとりの森公園に姉が行ったことがあるかまではわかりませんけど。アパートからも距離があるし……」


 三人の目撃者は、互いに知り合いというわけではない。

 愛里の働いているスーパーに客として訪れたことが、もしかしたらあるかもしれないが……

 不特定多数と顔をあわせることになるのだから、よっぽど特徴的な客でなければ覚えていないだろう。


「あとは、この怪奇現象と関連があるかわからないけど、あの池で見つかったこの死体ですよね。鼠が浮いていたのは、ただの偶然なんですかね」


 渚は死体の女性の顔写真と念のため取られていた鼠の死体の写真をどこから入手したのか、勝手にプリントしてぺたりとホワイトボードに貼り付けた。


「それは確かに気にはなるけど、ナギちゃん……ナチュラルにそういう写真を貼るのやめてくれる? どこから盗んできたの?」

「盗んでないですよ! ちょっと南川刑事にお願いして、送ってもらった写真ですから」


 どう考えても捜査資料の流出。

 きっと南川刑事は、この渚のあざとい表情にやられたに違いない……と思いながら、友野は深くため息をつく。

 友野も最初の頃は、か弱い女子高生を演じていた渚には何度も騙された。


「殺人事件は俺の専門じゃないからね、そっちは警察に任せよう。本人の霊が近くにいるなら、何があったか聞くこともできるけど……あの池にも、遺骨の近くにもいなかったんだ。どうすることもできないよ」


 東警部補から鼠の話を聞いて、友野は池の周りを見渡したが、被害女性の霊はいなかった。

 大抵の場合、未練が残っている霊は死亡した現場に残っているものだが……

 司法解剖後、身元不明のまま火葬された遺骨のそばにもいなかった。

 霊が残っていないなら、友野にはどうしようもない。


「とりあえず、スーパーに行ってみようか。例えば、何か共通のものに触れた……とかがあれば、手がかりになるかもしれないし。防犯カメラの映像とか見られたらいいんだけど……」


 友野は昨日二件目の現場であるスーパーの駐車場は見たが、愛里の職場であることを知らなかった為、スーパーの中には入っていない。

 念のため、二件目、三件目の目撃者たちの顔写真を送ってもらい、友野たちはスーパーへ向かった。


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