番外編 ようこそラフィリルへ-01

 ラフィリルに着いた翌日、ルークの心にささっていた気がかりも解消し、ルークとイリューリア、そしてラフィリアード公爵家の一行は、王城に帰国の挨拶に出向くことにした。


 ルークとイリューリアは婚約の報告である。


 そしてまた、ラフィリアード家の庭から王城の庭へと転移である。

 今回はルークの魔法で転移である。

 ルークがパチンと指をならすと眩しい銀の光に皆が包まれた.


 イリューリアが、眩しさに目を閉じ、次に目を開けた時には、全く別の景色が広がっていた。

 それは、ラフィリル王国の王城の奥、色とりどりの花に溢れた美しい庭園だった。


「まぁ…なんて美しい」


「王城の一番奥の庭だからね。さぁ、王の間に行こう」


「えっ?先ぶれは?まず、どなたかを介さなくても宜しいのですか?」とイリューリアが不思議そうに尋ねると、ルークは、ふっと笑った。


「大丈夫だよ。デルアータや他の国はどうあれ、ラフィリルは大国の割にそのへん庶民的というか何というか国王も王妃も大らかだから」


「そ、そうなのですか?大国ですから、てっきりデルアータより厳しいものかと…」


 そんな心配をしているとイリューリアの袖をリミアが、つんつんと引っ張った。


「りみと、じーんで、おーひしゃまと、おうしゃまに、るーくといりゅおねーしゃまが、きたの、さきに、いって、おしえてきたげる~!」


「うん、じーんも、りみといってくりゅ~」


 リミアとジーンが、きらきらした笑顔でそういうとルミアーナは笑顔で頭をなでた。


「まぁ、おりこうね~、じゃあ、リミア、ジーン、そうしてくれる?王の謁見の間まで行きますって伝えてね?」


「「はい、おかあしゃま」」というと、リミアとジーンは、ぱっと姿を消した。


「「「ええっ!」」」イリューリアとマーサとルルーが、驚きの声をあげる。


「あの子たち、この国でいる時は普通に瞬間転移使ってるからね。気にしないで」とルミアーナが笑う。


「「「まぁ」」」


「あんまり、転移ばっかりだと、筋力が弱っちゃうし、知らない人間が見たら驚いちゃうからお城の中と家の中以外はすべて、禁じてるんだけどね?僕たちは、ゆっくり歩きながら行こうか」とルークが言う。


「は、はい」


 どうやら、ラフィリルの王様と王妃様は、おおらかで優しい方々のようでほっとした。

 公爵家の子供達とはいえ、臣下の子供がいきなり子供だけで現れても、咎めたりはしないようであることに、イリューリアは嬉しく思った。


 城の中は広く、王の間までの回廊は長かった。


 そして、十分ほど歩いた先の王の間の側まで来ると、子供達の可愛い声が響いた。


「あのね!いりゅーおねーしゃまは、おかーしゃまくらい、かわいーの」

「うん、きれーなの!」


「おお、客人はそんなに綺麗なのか~、会うのが楽しみだのぅ~?」と王が子供達の言う事を楽しそうに聞いている。


 さすがは、ルークのお父上である。

 国王様なのに、なんて優しいのだろうとイリューリアは、感心する。

 しかし、双子ちゃんたちよ!あんまり期待させないでぇ~っと思うイリューリアである。


「それでね!るーく、いりゅおねーしゃま、およめさんに、すりゅの!」

「けっこん!しりゅのー!」


「まぁああああ!陛下っ!あなたっっ!聞きましてっ!」

「おおお!それは、真かっ!」


「「ほんとだもん~っ!」」双子ちゃん達は胸をはってそう言った。


 そして、ちょうどルークが、イリューリアの手を引いて入ってきた。


「本当ですよ。父上、母上!」


「「ルーク!!」」


 ダルタスとルミアーナも後ろについてきているが、王と王妃の期待に満ちた目はルークが、手を引いてきた美少女に降り注がれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る