第3話『ファーストキス』って、そのロマンチックな響きとは裏腹に、期待外れな事が多い。

「狭間さん……今言ったのって、その眼鏡で……それとで観た事……なの?」


「……」狭間さんは、無言で頷いた。


「それって、テレビや映画じゃ無いよね? 現実に『暗躍者クリープス』が出てきて何千人って人間を……殺しちゃったって事でしょ? 良く平気でいられるね!?」……僕は、ついカッとなって、狭間さんに詰め寄った。


「……言ったよね? 私の任務は、あなたの『監視』と『報告』……あとは『暗躍者クリープス』直接時に『変革者イノーヴァー守護使ガーディアン』に武力を供与する事。 誰が何人死のうが、あなたが生きていれば……それで良いの!」


 呆れた……。


『狭間さんって、クールな人だと思ってはいたけど、こんなに冷酷な人だとは思わなかったよ! ……ナメくん!」


「にゅ?」


「臨戦態勢! 『コンペイト』発動!」


『にゅうっ!』


『コンペイト』とは、僕が考えたナメくんとの合体技……『戦闘時コンバット人体保護外殻プロテクティブ相棒メイト』の略でが『暗躍者クリープス』と戦う時の姿だ!


「……何する気?」


「決まってるでしょ! 皆を助けに行くんだよ」


「バカな事言わないで! 守護対象のあなたが、何でわざわざ危険な所に行くの?」


 あー、もう、話にならない!


「僕や白樺さんの仲間たちが今も殺されてるんでしょ? ……僕は狭間さんと違って仲間たちが屠殺られてるのを見過ごすなんて出来ない!」……と言って、僕が教室のドアから出ようとした時…… 


「白樺さん! クラート・ラフト!」と、狭間さんが叫んだ。 それと同時に、何故か足が床に貼り付いたように進めなくなった。


「ナメくん!」


「キューン?」


「前進!」


「キューーン!」


 僕の足元から『バキバキバキッ』という音がして、足が自由になった。


 ……僕は狭間さんに対して、だ怒りを覚えて居たので、一言……


「……なめるなよ」


 ……と言ってやった。 ……今日の僕は、一味ひとあじ違うぞ。


 ……狭間さんは瞬きひとつせずに僕を睨みつけながら……


「……白樺さん……クラート“エシャール”ラフト……。 エンマ! リフテ! リフテ! エンマ! サーディ・エンマ! ロフテ! ラジェースト・ロフテ!」


 ……と、例の『指示』を白樺さんに送っている。


 挾間さんが、指示を発する度に、僕の体に何かがめられ、ついには、全く動けなくなってしまった。


「ナメくん」……と、僕がナメくんに指示を出そうとした瞬間、狭間さんが僕の前に立ち塞がり、僕の顔に手を当てて……


「白樺さん……クロウ・エンデ、ザルティー『マキシマム』」……と呟いた。


 ……! な! なんて事だ!?


 ……狭間さんの手から何かがはなたれ、甲高い音と共に、コンペイトのマスクの部分が弾け飛び、僕の顔がむき出しになってしまった!


 狭間さんは今迄見せたことのない重苦しい表情で、僕に顔を近付け……


「……白樺さん……コール……トゥルク……ム」と言いながら、自らの唇を僕の唇に重ねた!


 ……狭間さんの唇は、柔らかいけど、冷たかった。


 その感触に驚く間もなく、何かを口移しされた!


 ……く、苦し……い……


 僕はそのまま、意識を失っていた。


 ……僕が完全に意識を失う前に、狭間さんは、上目遣いで言った……


「……なめないで」

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