史伝1【勇者召喚】

side???


「なぁレックス!俺反対だっ!お前も勇者なんてこれ以上読んじゃダメだって言ってたじゃないか!」


「確かに勇者召喚は許されされない行為だ...」


「なら!」


「でもするしか無いんだ...それしか、方法が、無いんだ...」


「レックス!」


「おいコルチカム!あんまり感情的になるなって!」


「⁉︎ヘーニル...すまん」


「レックス、今代の魔王はそれほど恐ろしい力があるの?私達では倒せない程に?」


「サルビアの気持ちは嬉しい、しかし今回はお前達でも全員で五体満足で帰ってこれる保証はない」


「そんなまさか...」


「私の魔眼で見たから間違いないのだわ」


「アルチーナの魔眼を使って調べてもか...」


 現在王都の中心に位置する王城の一角、防音室にて国内最強と言われるパーティー『モンスタースレイヤー』のメンバー(勝手にそう呼ばれている)が魔王対策会議の為集まっていた。

 メンバーは国王でもありパーティーのリーダーでもあるレックスと、コルチカム、ヘーニル、サルビア、そしてレックスの秘書のアルチーナで構成されている。

 その名の通り対モンスターに特化したパーティーで、数々のモンスターを退治して来た有名なパーティーなのだが。


「アイツから出てる魔力は人間に対して物凄い毒、さらに魔族領全体の魔力より遥かに多かったのだわ」


「アルチーナがそこまで自信を持って言う程か...」


「これで分かっただろ?結局俺達は勇者を呼ぶしか無いんだよ」


「だからって、勇者召喚なんて無責任な事...」


「おいコルチカム、レックス、結局勇者召喚ってのはなんなんだ?俺はそんな話聞いたこともないぞ...サルビアはどうだ?」


「さぁ...私もさっぱり」


「分かったこのメンバーには話そう」


 そうしてレックスは過去に召喚された勇者達の話をする。


「まず他の世界から魔王討伐の為に召喚される者を勇者と言う、そして召喚された勇者は決まって物凄い強いスキルを持っていたり、魔王の出す異質な魔力に耐性がある」


「強いってどのくらい強いんだ?」


「魔王は大体2000年に1回現れるとされているが、今までの4回の召喚の内その全ての勇者が魔王の討伐に成功している」


「今回だけ特別強いとかは...」


「それは分からない...だがどの時代の魔王も桁外れの魔力を持っていて、人間に対し強い敵対意識があるそうだ」


「でもそんなに強い勇者は何故皆んなに知られていないの?もしそれが本当なら勇者は凄い経済利用の価値がありそうなのだけれど」


「勇者があまりにも強く、そして抑止力が全く無かった為だ」


 そこにアルチーナが続く


「1回の召喚時は国側は魔王討伐後も協力体制をとっていたのだわ、でも召喚される勇者は決まってまだ若い者達だったのだわ」


「結局最後は無茶な要求に耐えられなくなった王国が暗殺を命じるも逆襲に遭い、1日で国が滅びた」


「国が相手でもそれだけ勇者は強いのか...その勇者は結局どうなったんだ?」


「王国側から勇者パーティーにあてがわれていた仲間が決死の暗殺、その後その仲間も自殺して終わった」


「因みにこれ以来国は個であまりにも強い力を持つ者を出さないように情報操作を始めたわ」


「そしてその例が失われた無詠唱ってわけか」


 王の居るパーティーであるこのメンバーに限ってはレックスの秘書でもあるアルチーナによって情報操作関係無く封印された技がいくつか知らされていた。


「勇者を元の場所に戻すことは出来なかったの?」


「それは不可能なのだわ、色々な世界から適当に勇者に相応しい人物をランダムで召喚するのは魔法さえ唱えれば98%成功するのだわ、でもこちらから勇者を元いた特定の世界に戻すのは存在する世界の数だけ難易度が上がるのだわ」


「難しいことはわからんが...とりあえず出来ない事はわかった」


「後の3回の召喚では、勇者が魔王をなんとか討伐し王国に帰って来たところを、用意しておいた禁忌の消滅魔法で消し去ろうとしたらしい、そして国民には元の世界へ帰ったと説明したそうだ」


「それは...流石に勇者が可哀想ね...若いなら尚更」


「消し去ろうとして王国側はうまく行ったのか?」


「それが2、3回目の時は上手くいったのだが、1番最近の第4回目勇者召喚の際の勇者は、スキルの影響なのかその消滅魔法が効かなかったそうだ」


「なっ!じゃあ王国は2000年前にも滅びてたのか⁉︎」


「それが当時の勇者は、悲しい顔をした後姿を消したと...」


「......」


「自分が王国にとって要らない存在になったとわかったんだな...」


「結局その後王国は、勇者は元の世界に帰ったと国民に報告したそうだ」


「なるほどなぁ...」


「その後勇者と会った人は居なかったの?」


「何回か目撃情報が出たらしいけど、デマと言う事になっているのだわ」


「俺はやっぱり反対だ!大体レックス達だって勇者召喚が悪しき文化だからこそ情報操作で勇者召喚に賛同する国民をわざわざ減らして来たんだろ⁉︎」


「だが俺は国王だ、他の世界の人間より国民が大切なんだ...」


「私はなるべく他の方法を探したいわ...」


「なぁアルチーナ、実際勇者召喚は可能なのか?」


「っ!おいヘーニル⁉︎」


「コルチカムはとりあえず落ち着くのだわ、それとヘーニルの質問に対しての答えは"魔力さえ在れば出来る"のだわ」


「レックス!別に強ければ勇者じゃなくても魔王討伐は出来るんだろ⁉︎なら俺達で倒すべきだ!」


「しかしただ無駄死にをしては文字通り意味がない...」


 そうして、残念ながら今回の話し合いでは魔王の解決策は決まらなかった為勇者の事は他言無用とし、後日また個人で考えをまとめた後、話し合いとなった。

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