第14話 廻間麗奈⑨
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<挌技場前>
「すまない。待たせてしまって……」
「いや待ってない」
着替えを終えた後、挌技場の外で待っていた仁と一つ二つ言葉を交わし、一緒に下校をする。
「今日も練習頑張ってたね」
「うん」
「そういえば次は最後の大会だな。まあ麗奈なら心配いらないか」
「……そうだね。最後の大会も必ず優勝してみせるよ」
部員みんなが期待をしてくれている。必ず有終の美を飾ってみせる。
「部活を頑張るのは大切だけど、俺たちも3年生だ。志望の大学の判定はどうだった?」
「無事にA判定だったよ」
「そうか、俺もだよ。このままの成績を維持して、一緒の大学に行こう」
「うん。勉強も頑張るよ」
私と仁が目指している大学は一緒でかなりの難関大学だが、今のままいけば合格できる可能性は高い。
両親や先生、仁の期待にも応えるためにもこのまま維持ではなく、一層勉学の方も頑張らないと。
「…………」
「いつもより元気がないように見えるけど大丈夫か?」
「大丈夫だよ。…………ちょっと練習で疲れただけさ」
「そうか……。話しは変わるが、最近手首にハンカチを付けてるけど、何かあったのか?」
「ああこれかい。これはーー」
「正直、あまり似合ってないと思う。外した方が――」
「これはダメだっ!!」
ハンカチを触れようと伸ばしてきた仁の手を遮る。
「……麗奈?」
「っ……すまない。これは家族からもらった大切なものだから片時も手放したくないんだ……」
「そうだったのか。そうとは知らず無神経にすまない」
「いや……こちらこそ大きな声を出してしまって申し訳ない」
「大丈夫、気にしてないよ。また明日学校で」
仁は笑顔でそう言うと自宅のある方へ帰って行った。
「…………」
……仁は少しハンカチに触ろうとしてきただけじゃないか。何も悪いことはないのに、どうしてあんな風に遮ってしまったのだろう。
『先輩を守ってくれますように』
……私と千尋くんのおまじないに他人が触ってほしくなかった。触れられると穢れてしまうような気がしてしまった。
今だって少し苛立ちを感じてしまっている。
仁が私を待っていなければ千尋くんと一緒に帰れていたかもしれない。今、千尋くんは姫乃と一緒に帰っている。私の頑張っている姿を見てほしくて来てもらったのに姫乃と仲良くしていた。
考えれば考えるほどどろどろとした感情が溢れてくる。
……私はどうしてしまったのだろう。
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