第2話・撫子の自己欺瞞
「また今日も時間ギリギリね」
ああ、今日も始まったな、と思う。それでも、私――
「それに教科書なんて読むふりしちゃって。何してるのかしら」
我ながら、差し障りの無い言葉を言えたと思う。あとに続く
私たちがいつからこうなってしまったのか、私はハッキリと覚えている。あれは、高1の冬。きっかけは、本当に些細なことだった。
私たち、それは
ある日、
私は、こういった女子が女子らしいところが嫌いなのだけれど、それに対抗できずに流され、「そういう女子」になってしまう。いつものグループから誰かがいなくなれば話題はその子の悪口に……。私はそれがすごく嫌だったのだけれど、
その日はそれだけだった。いや、それだけなら何も起こらなかったのだと思う。問題は、その次の日だった。
その日は体育の授業があって、種目は縄跳び。授業は準備体操、個人種目と続き、グループでの縄跳びに。私たちはもちろん、4人で集まった。
そこで、事件は起きた。いや、事件と言うほどのことではない。
その日の帰りも、
特に、ケガをした
これらの出来事は、きっかけに過ぎない。これがきっかけで、
それから私たちは、いや、少なくとも私は、自分の「役割」をこなすようになった。
それは、グループから
私は、私からこのいじめをやめられない。やめようと言い出せない。それは、私がやめようと言ったら、次にいじめられるのが私だからとかいう理由ではない。なんとなくだけども、私がそう言い出しても標的が私に移ることは無いと思う。
私が言い出せない理由は、このいじめが私たちの日常になってしまったから。
そんな日々を、自ら壊しに行こうとは全く思えない。いじめなんて、やめた方が良いことは、してはいけないことは、嫌なほど分かっている。それでも、この日々を、
何事も、すでに起きていることを続けることは難しくない。0から1を作ること。そして今あるものを壊し、新しいものを作ること。これが一番難しい。
私は、自分に言い訳を重ねて、いじめを続けてきた。でも、こんな心の内は、いじめには関係ない。私たちがやっているのは、紛れもないいじめなのだ。そこに言い訳は介入できない。
そして今日、
悪い予感が頭をよぎって、授業に全く集中できない。真夏の長袖。恐らく、日焼け対策では無いだろう。もしそうだったら、教室に着いた時点で腕まくりをしてもいいはず。
でも、
悪い想像が頭を埋め尽くし、それは胸まで広がり、息苦しくなる。とても堂々とは言えないが、この半年で私は、自分の抱く罪悪感や気持ち悪さを上手く誤魔化せるようになった。それでも、誤魔化せない息苦しさ。
都合が良いことは分かっている。今まで散々に
相手が変わらないならいいやと、心のどこかで思っていたのだろう。自分の浅はかさ、愚かさに吐き気がする。目に見えぬいじめを続けてきて、それでいて相手も目に見える変化は無いから、こうやって日々が平穏なら、それでいいやと思っていた。
もう、やるしかない。そう思った。この夏期講習は、午前だけで授業が終わる。このコマで最後だ。
時計の針の進みが、いつもよりも遅く感じる。いや、速い?遅い?……のかもしれない。チャイムが鳴れば、私は
そして、その時が来る。遠い国の鐘の音が、心臓を揺らす。
立ち上がって、
近づくにつれて、なんだか喉も痺れてくる。
私は、震える手を
言うんだ。言うんだ私。まずは、ふたりきりで話をしたい。
「ねえ
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