003 森の人魚

 森の中にある湖上のコテージには、床下に続く四角いふたがついている。


 釣りでもするためだろうか。


「帰るわ」


 濡れ髪のまま、乳房もあらわな裸体で女は床を這っていき、その床穴からじゃぶんと湖に戻っていった。


「あなたとても良かったわ。友達の蛇女ラミアに紹介していい?」


 水に落ちた女の下半身には青白いうろこがあった。


「その子、半分はへびだろ?」


「私なんて魚よ」


 濡れた唇でうふふと笑い、人魚は水の奥底に潜っていった。


 さよなら……。声ではない声が別れを告げた。


――完――

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