攻め込まれるデイブック【ヘイト視点】
ヘイトは優雅にコーヒーを啜りつつ読書を楽しむ。
「うーむ、やはり移民するならヤマトの南東島か」
だんだんだんだん!
うるさい足音が聞こえる。
ゴンゴンゴン!
ノックもうるさい。
「ヘイト様!大変です!」
軍人と思われる男が入って来る。
筋肉ダルマで声の大きさから図太い性格が伺える。
「はあ~。なんだ、入れ」
「失礼します!ヘイト様!大変です!」
「早く用件を言ってくれ」
「は!名前持ちがデイブック南部に現れました!ヘイト様のお力でどうか民をお救い下さい!」
外を見ると天気はいい。
「私が対処するのは二段階目になる前だけだ。それと声を抑えろ。うるさい」
「失礼しました!ご協力感謝します!」
だからうるさいと言っている。
「まあいい、乗り物を用意しろ」
「すぐに用意します!」
こうして馬車に乗り目的地に向かった。
馬車に乗りながら名前持ちの情報を確認する。
「でかい芋虫か」
名前持ちレイラ。
口から糸を吐き出し建物を破壊しながら進行中か。
「ヘイト様!見えてきました!」
でかいな。長さは10メートルを超えると書いてあるが、近づくとさらに大きく感じる。
剣を持ち、馬車から出ると大きく迂回してレイラの後ろに回り込む。
レイラの前から兵士が突撃するタイミングに合わせて後ろから何度も剣で切り裂く。
「固くは無いか、それなら」
ヘイトは何度も剣で斬りつけた後後ろに下がる。
「ブレイブタイム!ファイナルスラッシュ!」
ブレイブタイムで戦闘力を上げ、最強のファイナルスラッシュでレイラを倒す。
レイラから黒いオーラが発せられるのを確認するとブレイブタイムの効果が残っている内に戦線から離脱する。
「ヘイト様!どこに行ったのですか!見失ったか!」
ふ、二段階目は相手にしないと言ったはずだ。
名前持ちの二段階目とは関わりたくない。
レイラのレベルはそこまで高くないが、二段階目に移行すると、レベル差を覆す攻撃を仕掛けてくる場合がある。
名前持ちの二段階目は厄介。
これは常識だ。
遠くに離れるとレイラの体が蝶に変わる。
空に舞い上がり、鱗粉をまき散らす。
鱗粉の範囲に入ると兵が倒れていく。
「俺には関係ないが、兵士達はせいぜい頑張ってくれ。二段階目になれば名前持ちは放置するだけで死ぬ。もっとも、いつ止まるかは分からんがな」
そう言うとヘイトは走って帰って行った。
レイラは12時間ほど鱗粉をまき散らし、力尽きたが、デイブックは甚大な被害を出した。
後で分かった事だが、レイラの能力は対多数戦闘に特化しており、ヘイトがそのまま戦闘を続けていれば短期間で討伐可能だった。
対多数の雑魚には強いがエースとの戦闘能力は低かったのだ。
「レイラは倒れたか。しばらくは安泰だな」
だが屋敷が騒がしくなり、2人の兵士が入ってきた。
「何があった?」
「デイブックの北部に牛の名前持ちが現れました!」
「分かった。詳細を聞かせてくれ。お前は後にしてくれ。今緊急事態だ」
「それが、西でも名前持ちが現れたのです」
「何、だと……分かった」
「北の方から聞こう」
「は!牛の名前持ち。ブルーザのレベルは800!ゆっくりと進軍を続け、多重の魔法攻撃を繰り出す様子はまさに移動要塞です!」
レベル800は厄介だな。
私のブレイブタイムで戦闘力を2倍にすれば倒せなくはない、が、それで倒しきれなければ厄介だ。
「西の名前持ちは?」
「は!ゴブリンは軍で行軍しています。情報が未確定ですが、どうやら複数のゴブリンの名前持ちが居るようです」
「情報が未確定とは?」
「それが、ゴブリン部隊がゲリラ戦を仕掛けているのです。しかも兵士の宿舎を的確に襲い、確実にこちらの戦力を削りつつ進行してくるのです更に」
「もういい。一旦戦線を中央部まで下げてくれ。すぐに動け!」
「「は!」」
やれやれ。
南のレイラに兵が集まったタイミング。
そこから北のブルーザと西のゴブリン軍団
この国は終わりだな。
私が本気で立ち向かえば何とかなるかもしれんが、こいつらの為に命をかける気はない。
複数の名前持ちとの連戦。
しかも二段階目の脅威を何度も味わう気はない。
「東の港に行くか」
うるさい軍人の兵士どもには退散してもらった。
「船に物資を運びこめ!」
ヘイトはデイブックから姿を消した。
【ブレイブ視点】
「ナンバー4の俺に続け!もうすぐ俺がゴブリンのナンバー1になるがなあ!」
俺の指示で的確にデイブックの兵士と冒険者を潰していく。
「ドレイン!」
見かけた人間の生命力を吸って倒す事で連戦が可能だ。
更に俺達4人の名前持ちで攻める事で敵はいない。
バグズもマリーも勝利が決まって殲滅が雑になっている。
俺はその隙に多くの人間を倒す。
俺が最強になってやるよ!
「はははははははははは!」
「マリー、ブレイブは何がそんなにおかしいんだ?」
バグズがブレイブを見下すように見ながら聞く。
「自分より弱い人間をいたぶるのが好きなのよ」
「ふむ、適当に攻めても勝ちは確定している。後はブレイブに任せる。夜は俺の所に来い」
マリーはだらだらと汗をかく。
「断ることは許さん。本気で抱いて壊れないのはお前だけだ」
「……分かったわよ」
デイブックはじわじわとなぶり殺されるように滅びを迎えていた。
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