ウインの異常性
「それよりも魔物狩りを再開する」
「がんばりますわ!」
「はあ、はあ、僕も頑張るよ」
俺は吐息を荒くしたエムルを無視して魔物狩りを再開する。
「目標はルナのレベル80とベリーのレベル100だ。ベリーのレベル100は、すぐだけど、ルナのレベル80は疲れると思う」
「迷惑をかけますが今日もよろしくお願いしますわ」
「ルナに用意した装備があるからつけて欲しい」
俺はポーションを大量にセットできるベルトを作っていたのだ。
「これにスタミナポーションを入れられるだけ入れて戦って欲しい」
みんなが引いていた。
みんなが俺の事をかわいそうな者を見るように見つめる。
「わ、分かりましたわ。頑張ります」
「ま、待って!スタミナポーションをこのベルトに何本セットできるの?」
「24本しかセット出来ない」
「今しかって言った?24本も飲みつくすまでルナを戦わせるの?倒れちゃんわよ!」
「フォローして疲れにくいようにする」
「そ、それでも攻撃を受けたらポーションが割れるかもしれないわ」
「その心配も考えてある」
俺はストレージから直径1メートルほどの箱を8つ取り出した。
箱からスタミナポーションを取り出す。
「これ全部スタミナポーションなの!しかもいっぱいあるから割っても問題無いって言いたいの?」
「そうだぞ?万全だろ?」
「そういう問題じゃないわ!あまり薬を多く飲むと体に負担がかかるわ!」
「はあ、はあ、ぼ、僕にも苦しくなるようなプレイ」
「黙れエムル!エムル黙れ!話を進めさせろ!」
エムルは吐息を荒くして黙った。
エムルに怒鳴るのを操作されている感があってむかつく。
「私の心配は無用ですわ」
「で、でもウインの基準は普通じゃないわ。気を付けてね。それにスタミナポーションを毎日たくさん飲んだら調子が悪くなると思うわ」
「死なないでね?みたいな言い方なんなんだ?」
「ウインは普通じゃないわよ」
「いいから始めてみよう。確かに薬の飲みすぎは負担がかかる。だが、疲れて血を流すより負担は少ないはずだ」
「ウインが無茶をしたら止めるわよ」
「それでいい。気づかない部分もあるかもしれない」
「今すでに気づいてない部分があるわ」
「魔物呼び!」
「気づいていない部分?」
「魔物を狩るペースと次に進んでいく頭の回転の速さは皆戸惑うと思うわ。それとルナの負担はかなり大きくなるわ」
「ん、魔物が来た。話は後にしよう。ルナ!またうさぎだ!前に出てくれ!」
「分かりましたわ」
ルナが魔物のターゲットを取った。
「パワーブースト!スピードブースト!ガードブースト!俺の魔力が切れるまで魔法でサポートする!次からこれと同じ効果のミラクルブーストをかけていく」
俺はうさぎを掴んでスピンをかけながらルナの近くに投げつけた。
「魔物を投げていく!落ちた瞬間が狙い目だ!」
「分かりましたわ」
「やりすぎよ!ルナの負担が大きくなるわ」
「確かにその通りだ。ルナ!スタミナポーションをすぐに飲んでくれ!そうしないと疲れてすぐ動けなくなる!」
「そう言う事じゃなくて!ポーションの飲みすぎも良くないわ!もっと魔物狩りのペースを落としましょう!」
「問題無い!ルナはうまくやっている!エムル!ルナの回復は任せた!魔物呼び!まだ回転数を上げられる!ベリーが本気で動く前提で魔物を呼んだ!皆本気で動いてくれ!」
「はあ!はあ!ウインのギラギラしたその目!最高だよ!」
こうして毎日魔物を狩るとルナとエムルは地面に座り込むようになり、急速に皆のレベルが上がっていった。
ベリーはすぐレベル100に到達した。
「レベル100になったわ!」
「おめでとう!」
「流石ですわ」
「良かったよ」
「ベリーのスキルが気になるが、その前に魔物を倒すか」
レアジョブの者はレベル100になると新しい固有スキルを覚える。
同じレアジョブでも人によって覚えるスキルが違う。
俺は一瞬で魔物を倒してストレージに収納した。
話をする為だ。
「ベリー,スキルを見せて欲しい」
「一回使うと24時間使えなくなるわ。魔物が居る時に使いたいのよ」
「魔物を呼んで使ってみるか。魔物呼び!」
熊が20体ほど集まってきた。
「ブラックベアだよ!体力が高い相手だ!」
ベリーは剣を鞘にしまった。
「フレイムソード!」
ベリーの両手には炎の剣が握られる。
これがレベル100のスキルか。
「フレイムダンス!」
フレイムダンスのスキルでフレイムソードの炎がさらに激しく燃え、体には炎をまとう。
ベリーが踊るように剣を振り、熊に向かい炎の斬撃が飛び、一瞬で熊を全滅させた。
フレイムソードとフレイムダンスの合わせ技か、強いな。
羨ましい。
魔物を全滅させ、俺の方を向くと、視線に気づいてベリーの顔が少し赤くなった。
「うらやましいですわ」
「凄い威力だね。次はルナのレベル上げに専念かな」
「そうなるな。ベリー、おめでとう」
「えへへへ」
「所で、フレイムソードは剣にまとわせることも出来るのか?」
「出来ると思うけど、きっと剣が痛むわ」
「明日剣にまとわせて使って欲しい。ベリー用の新しい剣のストックは作っておく」
「分かったわ」
その日の魔物狩りが終わると、俺はベリー用の剣を作った。
ベリー・ルナ・エムル・セイラがその様子をじっと見る。
「ん?どうした?」
「どうして3本も作ってるの?」
「3本じゃなくてメインを5本作る予定だ。その他にサブとして常時持つ為の剣も作りたい」
「考えが分かりませんわ?そんなに必要ですの?」
「フレイムソードのスキルを1日1回使って、何度も剣が駄目になるかもしれない。駄目にならなくても何度もフレイムダンスを使えば剣が劣化する。このまま行けばすぐに1人1万体以上は魔物を倒すだろ?そうすれば剣は劣化する。修理中に使う剣も必要だろ?」
「え?え?」
「すぐに1人1万体、はあ、はあ、僕をどんな目に合わせる気なんだい?」
「ウインは慎重なのか大胆なのか分かりませんわね」
黙っていたセイラが口を開く。
「メイン武器の理由は分かりましたが、ベリーにサブ武器は必要ですか?」
「ベリーのスキルで武器が劣化しやすいから、サブがあった方がいいと思った」
セイラはエムルが居ると被害を受けないようにずっと黙っていると思っていたが、口を開くとは意外だな。
「ベリー」
「な、何?」
「いいから黙って装備してくれ」
「分かったわ」
なぜかベリーが赤くなる。
そして何故かエムルの吐息が異様に荒い。
「ドS」
セイラが囁いた。
次の日からベリーは腰に剣を2本差しするようになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます