第3-02話 血筋と異能
「ど、どうしたんですか?
先ほど言われた言葉を
異能に関係することが最初から分かっていたと?
そのために中学校の成績を操作したのだと?
……そんな話、信じられるわけが。
「……ユズハは」
「は、はい?」
「ユズハは、どうしてこの学校に来たんだ?」
「え、えーっと……」
彼女はナツキの質問の意図が分からないという表情を見せていたが、それでもすぐに答えてくれた。
「い、家から近かったからですよ? それ以外に、特に特に理由はないです」
「……そっか、ありがとう」
確かにそうだ。ユズハの家は高校から徒歩数分。
それなら登校のしやすさで、選ぶこともあり得る。
ナツキはどこか青い顔をしながら、教室の中を眺めた。
クラスメイトたちは休憩時間に集まって好きなことを話し合っている。だが、その中にいるほとんどは異能に関係している者たち。
(……15%どころじゃない、ってことかよ)
未覚醒がそれだけ。だが、もしかしたら残りの異能たちは……かつての自分と同じで、異能と思われていないだけで、いつかは異能に目覚めるということだろうか。
「……
「ああ、ごめん。考えごとしてた」
「生徒会室で何か言われたんですか?」
「何か言われたってほどじゃないけど……」
異端審問のことと、学校のこと。
どちらも
「また、昼休みにでも話すよ」
「わ、分かりました」
ユズハはこくりと頷いて、引いてくれた。
今日ほど彼女の物分りの良さに感謝した日はなかった。
――――――――――――――
「それで、ナツキはその話はどう思うの?」
エルザの作ってくれた弁当箱を空けると、今日の弁当は唐揚げだった。彼女の料理のレパートリーは多いのだが、最近はこんな感じで鉄板のおかずを用意してくれることが多い。多分だが、ルシフェラがハマっているのだろう。
「その話って……どれ?」
昼休み、いつものようにナツキはホノカとユズハと昼食を食べようとしてたのだが、流石に誰かが来るかも知れないところで食べれないということで、ナツキたちは珍しく『シール』を貼って、その中でお弁当を広げていた。
「成績の話よ」
ナツキがホノカたちにした話は3つ。まずは異端審問の話。
その話を切り出した時は、ホノカもユズハも慌てたような恐ろしいものをみたような表情を浮かべていたが何もされなかったというと、ほっと安堵の息を吐いていた。
そして、2つ目は学校の話。目覚めていない異能を集める受け皿になっているという話。そして、3つ目はそのためにナツキの成績が操作されていたという話だ。
「信じるっていうか……。あの口調は本当っぽかったし……」
ナツキがそういうと、ホノカはコンビニで買ったサンドイッチのビニールを半分空けた状態で、机に置いた。
「良い、ナツキ。そもそも、どんな異能だって未覚醒状態ならまだしも、ナツキのように
「……そうなの?」
「元々異能の血筋で未覚醒とかなら……潜在的な異能として扱われることもあるだろうけどね」
ホノカの言葉に、隣にいたユズハが補足した。
「ほ、ホノカさんの言う通りです。潜在的な異能を見つけるのは……昔から、為政者にとっては不老不死や無限の繁栄と並ぶ課題だったんです。今でこそ、戦争に使うのは国際条約で禁止されていますけど、昔はそうじゃなかったので」
「禁止されたのって世界大戦後だっけ?」
「は、はい。日本でも戦国時代や南北朝時代に活躍した異能の話は残ってます。昔は異能を戦いに用いるのは常識だったんです。より多くの異能を抱えたほうが勝つとも言われていましたし……」
そんな話をしている横で、日本史のテストが危ういホノカが危機感を抱く顔をしていた。大丈夫だホノカ。この話はテストに出ないから。
「でも、どの異能も……
「……なるほど」
2人からそう言われてしまうと、そっちの方が正しく思えてしまう。生徒会長は嘘を付いたのだろうか? だが、一体何のために。ナツキはしばらく考えていたが、ふとホノカの言葉を繰り返した。
「元々、異能の血筋なら……か」
ナツキには両親がいない。
そして、祖父母は父方しかおらず、しかも住んでいるのがナツキたちの住んでいるところから新幹線で3時間先の駅からさらに車で4時間移動する必要があるドが付くほどの田舎なので気軽に会えないのだ。
「もしかしたら、ナツキは異能の血筋だったのかもね」
「でも、俺は両親が異能だなんて聞いてないぞ?」
「両親は
「……?」
「昔は異能の一家だったけど、だんだんその血が弱くなっていって……
「先祖返りかぁ……」
「そんなに気になるなら調べてみる? ナツキの
ホノカがそう言うと、ユズハもこくりと頷いた。
「い、良いですね。もしかしたら、
「……そんな上手くいくかなぁ」
ナツキは思わずそう唸ってしまったが……確かに、自分の血筋がどうなのかは気になるところだ。それに、もしかしたらその過程で両親が見つかるかも知れない。
生きているのか、死んでいるのか、さっぱり分からないが、どちらにしても手がかりが掴めるのなら〈
「『便利屋』に依頼する?」
「お金が……」
『便利屋』は本当になんでもやってくれるが、一方でそれに見合った料金を請求される。しかしナツキはここ最近バイトを休みすぎており普通に金欠。『便利屋』から請求された金額を払えない可能性がある。
「んー。だとしたら、どう調べようかしら。ユズハ、
絶対に無いだろうという確信を持ちながらも、ホノカはユズハにそう聞いた。こういうのは、本人の中では無いと思っていても専門家から聞くのが大切なのだ。ユズハは専門家では無いが。
「は、
「けど?」
と、ナツキ。
「に、日本で、古い異能の名家は数字を与えられて管理されていました。例えば、『一ノ瀬』や、『二宮』家なんかは……有名だと、思います」
「……『
ナツキは友人の想い人である天文学部の先輩の苗字を恐る恐る出してみると、これがビンゴ。ユズハは素早く首を縦に振った。
「は、はい。『三枝』家も有名ですね。口に出した音を叶える言霊使いの一族です」
……はぇ。
「ナツキには、八って数字が入ってるわよ」
「で、でもどうなんでしょう? 別に、珍しい苗字では無いですから……」
「それを言い出したら終わりじゃない」
「す、すみません……」
しばらく2人のやり取りを聞き流していたナツキは、ふとある可能性に行き着いて思わず顔をあげた。
「もしかしたらだけど……」
ホノカとユズハがナツキを見た。
この可能性があることは、最初から分かっていたはずだ。でもナツキは切り出せなかった。彼女たちには良い思い出が、無いから。しかし、潰せるべき可能性は全て潰しておくべきだ。
だからナツキは、
「俺の親戚に聞いてみれば……手がかりが掴めるかも」
そう、切り出した。
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