第2-10話 集まれ! 異能たち!
「「使い魔?」」
ナツキとホノカの声が重なった。
「と、本人たちは思っていたわ。本当に彼らが使い魔なのか、それともそういう風に洗脳されていたのかは分からないけど」
そう言うヒナタだったが、ホノカは彼女の推測には触れず短く尋ねた。
「彼らの目的は?」
「
「そんなことだろうと思ったわ」
ホノカは鼻をふん、と鳴らす。
だが、それもまるで一枚絵のように様になっていてナツキは感心した。美人って凄い。
「……でもさ、ホノカ」
しかし、もし彼らがシエルの使い魔だとすると、ナツキにはどうしても理解できないことがあった。
「どうしたの? ナツキ」
「あいつらが最後に使った魔法があるだろ? 原爆の数百倍の威力ってやつ」
「
「そう、それ。そんなものを使ったら、
あんな大規模破壊魔法を使えば、持ち主ごと
「壊れないわよ」
「え?」
核兵器というものをナツキは知識でしか知らないが、あんなとんでもない爆発の近くにあって本当に
「
「……なんで?」
「〈
なんとも不思議な話すぎてナツキはホノカの言っていることが1割も理解できなかった。理解できたのは、
「だから、シエルは私たちを殺して……
「それで使い魔を送り込んできた」
「そういうこと。やけに弱いと思っていたけど、捨て駒としてなら理解できるわ。どうせ、遠隔魔法かなにかを使って私たちの戦い方を覗き見してたんでしょ」
「……なるほど」
かつてホノカが言っていた。
どんな異能を使っているかを敵に話すというのは、異能の攻略法を考えられるので不利にしかならないと。だが、こうして自分の使い魔に戦わせることで……安全に敵の異能を見極めるということもできるのか。
「幸いなのはナツキが魔法を使っている姿を見られていないこと。きっと、向こうはナツキのことを『身体強化系の異能』だと思っているわ」
「え、
どうやら
まぁ、アホみたいな速さで鉄球投げてたら間違えるよな……。
「ただ、不幸なのはナツキが『シール』を行き来できるとバレてしまったこと。向こうはより
心配そうに言うホノカに、ナツキはふと笑って答えた。
「……だとしても」
「ん?」
「だとしても、倒せばいいだけだ。そうだろ?」
ナツキがそういうと、ホノカはにやりと笑った。
「随分、
その褒め言葉ともなんともつかない言葉に、ナツキは思わず苦笑いした。
結局、『便利屋』では解呪ができなかったのでヒナタはナツキから離れられず、ヒナタはナツキの家に泊まる状況は昨夜と同じまま。
となると、2日連続でナツキの家に泊まることになるのだが、ヒナタがそれを気にした様子を見せ無いので、ナツキが「家に帰らないのは大丈夫なのか」と聞いたら『妹以外気にしないから大丈夫よ』と返ってきた。
(妹とは……仲が良いのかな)
そう思ったがヒナタの家はちょっと複雑そうだったので、ナツキはそれ以上介入せずに、相槌だけ打った。さて、そうなってくるとあいにくと家には2人分の食材がない。買い足さないといけないなぁ……と、思ってナツキは最寄りのスーパーの前で足を止めた。
「スーパーに寄っていい?」
「良いわよ。でも、どうして?」
「もう今日の分の食材が無くてさ」
と、ナツキが言うと、ホノカがびくっと動いた。
「それなら私がご飯を作るわ」
「え、良いの?」
ホノカの作るご飯は味付けがちょっと海外っぽい以外は100点満点。
美味しさの権化みたいなご飯を作るのだ。
「ええ、だってナツキと私は
やけに友達という部分を強調して、ホノカが
「待って。ここは私が作るわ。
「え? 別に気を使わなくても……」
と、いいかけたナツキの口が動かなくなった。
ヒナタの『
(ちょっと? ヒナタ??)
ナツキはヒナタに思念を送るが、ナツキは
「遠慮しなくて良いのよ、
「ふへぇ」
口が開かないので「すげぇ」と言ったら変な音になった。
ちなみにナツキは5段階中「3」である。良く悪くもなくなんとも面白みにかける成績だ。
「はぁ? 学校の成績で料理の味が良くなるわけないでしょ。ナツキは私のご飯を美味しいって言ってくれたんだけど」
「日本人じゃないあなたには
「はんふぇふぇんふぁふんふぉ」
なんで喧嘩すんのと言いたいのに口が動かない。悲しい。
「じゃあナツキに決めてもらいましょう。どっちが作るご飯が食べたいのか」
「それもそうね。
そういって『
「「どっち?」」
口を
当然、ナツキの答えは決まってる。
「……俺が作るよ」
そういうと、2人は「ぐぬぬ」ともらして互いを見た。
仲間なんだから仲良くしてよ……と、思うが、ユズハとホノカの仲も悪いので、異能とはこういうものなのかも知れない。そういえば、かつて異能は仲間を助けないと言っていたので、異能に取って仲間とはお互いにメリットがあるから組んでいるドライな関係なんだろう。
(……殺伐としすぎだろ)
異能の仲が悪いのはその通りなのだが、ホノカとヒナタの仲が悪い理由を微妙に外していた。
さて、そんなナツキが彼女たちの喧嘩の真相を知ることは無くスーパーに入ろうとした瞬間に、見慣れた金髪の少女がタイミング良く店から出てくると、ナツキの姿を見てぱっと笑顔を咲かせた。
「あ、お兄ちゃん! と、お姉ちゃんも……」
「なんで私を見て露骨にテンションを下げるのよ」
「だってあかり、今からお兄ちゃんの家にご飯作りに行こうと思ってたんだもん」
そういってアカリは、両手に抱えたスーパーの袋をナツキたちに見せつける。
だが、ナツキと手の甲をくっつけているヒナタを見て、明らかに不機嫌そうなまま、低い声で尋ねた。
「……で、誰このお姉ちゃんは」
アカリの疑問も、ごもっともである。
――――――――――――――――
「え、つまり……その『
アカリの代わりにスーパーの袋を両手に抱えたナツキの説明で、アカリは事情を飲み込んだのか、しばらくの間なんとも言えない顔をしていた。
「な、なんでそんなことに……」
「色々あって……」
事情を話せば長くなるのでナツキがそういうと、「お兄ちゃんがそういうなら仕方ないけど……」と、アカリは納得してくれた。物分りが良くてとても助かる。
「お兄ちゃんには、あかりが女の子を教えるって約束したのに……」
「……ごめん」
「でも、だいじょーぶっ!」
急に大きい声を出してびっ! と人差し指をナツキに向けてくるヒナタ。
「まだ昨日の今日なら女の子が何かなんて分かってないもんね、そうでしょ? お兄ちゃん」
「え? うん、まあ」
実際には一緒に寝て、シャワーまで浴びているのだが。
「だからあかりに任せてね! 全部教えてあげるから」
そういってドヤ顔で胸を張るアカリ。
彼女の言う『女の子を教える』というのを、ナツキはいまいち理解できていないのだが、今まで女の子と縁のなかったナツキには願ってもないチャンスだったので彼女のしたいがままにしてもらっている。
「そういえばアカリ」
「どうしたの?」
「今日は何を作ってくれるつもりだったんだ?」
「ふふふ、あかりはね。お兄ちゃんへの愛と感謝を込めて、ちょっと奮発しちゃったよ」
そういってアカリはにやりと微笑むと、
「今日はね、すき焼きだよ!」
そういって嬉しそうに跳ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます