08-ED 次回予告

 テントなど持ち合わせていないマジカル☆ドリーマーズの面々は、李紗の部屋にそれぞれ布団を敷き眠ることとなった。(もちろん布団は魔法のペン……もはや説明不要だろう)


 心地よい筋肉の疲労を感じながら蝶介が眠りについている頃。


 李紗は一人部屋を抜け出し、海岸の岩場に腰掛けて海を見つめていた。満月が真上に登り、空と海と李紗を照らしている。真っ暗なはずの空は綺麗な紺色に染まり、海がきらきらと輝いていた。



「眠れないのですか、お姉様」



 気がつけば李紗の後ろにマーヤが立っていた。そして自然と隣に座り、肩をくっつけた。


「お父様とお母様のことを思い出してしまってね……」

 李紗がそう言って空を見上げる。


 最後まで夢喰い(本体ではないけど)と戦った父と、自分の命を犠牲にしてまで(死んでないけど)自分を人間界へと逃してくれた母。二人のことを忘れたことはない。(といいながら海に遊びにきているけど)早く助けてあげなければという思いは日に日に高まっていくのだった。



「お姉様、私……明日にでもマジカル王国に戻り、夢喰いを倒してまいります」



 マーヤの決意に満ちた声に、李紗がびっくりして彼女の方を向く。

「何言ってるの! 自ら死ににいくようなものだわ!」


「元はと言えば、全て私が原因なのですから」


 マーヤは少しうつむきながら、自身の心の内を正直に話し始めた。周囲に誰もいない、月明かりの夜の静かな雰囲気が彼女の心を開いたのかもしれない。



「私は、ずっとお姉様に憧れておりました……。どんな魔法もすぐに習得して簡単に使いこなすお姉さまに」

「……」


「私もお姉様のようになりたい。お姉様と同じ魔法を使えるようになって、すごいねって褒めてもらいたい。そう思って魔法の練習もがんばりました。でも私が魔法を使えるようになった頃にはもう、お姉様は先へ先へと……どんどん新しい魔法を習得し、手の届かない存在になっていたのです」

 マーヤがぎゅっと拳を握る。少し体が震えているのは、夜の寒さのせいではなかった。



「……マーヤ」

「そんなときでした。お城の地下から悪魔の囁きが聞こえたのは。夢喰いの封印を解けば、お姉さまを超える魔力を手にすることができる……私はそんなバカな誘惑に乗ってしまったのです。それからあとはお姉様も知っての通り……決して許されることではないとわかっています。ですから私はけじめをつける意味でも……」


「それは違うわ、マーヤ」




 ※ ここらへんから、いつものエンディングテーマではない劇中歌(適当にインストゥルメンタルをご想像ください)とエンドロールが流れ始める。イメージは「Hugっとプリキュア十八話エンディング」(youtubeで検索すれば出てきます。ここにアドレスを載せていいのかわからなかったので、興味のある方は是非検索を)のような感じ。




 李紗はマーヤの握りしめた拳を自分の掌で優しく包み込みながら話し始めた。

「私は……あなたの魔法の才能に嫉妬して……怯えていたの。私が苦労に苦労を重ねて習得した魔法を、年下のあなたがいとも簡単に使いこなしているのを見て……あなたの才能と魔力は私とは比べ物にならない。それを認めるのが怖かったの」

「お姉様……」



「だから私はあなたの見ていないところで必死に練習して、新しい魔法を覚えていったのよ。そうしないと簡単にあなたに追い抜かれてしまいそうで……」


 李紗の手もわずかだが震えていた。これまでこんな心の内を誰かに明かしたことなんてなかったが、マーヤの気持ちがわかった今、自分も伝えなければいけないと感じたのだ。



「もしかしたら、私が夢喰いの誘惑に負けてしまっていたかもしれない。悪いのはあなたじゃないわ、夢喰いよ」


 下を向いていたマーヤが、顔を上げて李紗の目を見る。目が合うと李紗がにっこりと微笑んで、さらに続けた。

「だから一人で戦うなんて言わないで、一緒に力を合わせましょう。あと二人、マジカル☆ドリーマーズを見つけて、みんなで夢食いを封印しましょう」



「お姉様……う、ううっ……おねえさまぁっ!」

 マーヤが顔をぐしゃぐしゃにして李紗に抱きついた。李紗はそれをしっかりと受け止め、「よしよし」と頭を優しく撫でた。




「ひぐうっ……ぅぅ……」

「ちょっと、アネゴ! 聞こえちゃいますよ!」

「……ぐすっ」

「アニキまで!」

 蝶介たちも少し離れたところから、月明かりに照らされる二人を涙ながらに見つめていた。




 <次回予告>

 マーヤです。リーサお姉様と二人っきりで話ができて、すっきりしました。はっ、もしかしてお姉様ったら私を元気付けるためにみんなで海に行きたいって言ったのでしょうか……。

 私もこれから、悠花お姉様たちと一緒に力を合わせてできることを頑張りたいと思います。って、私も人間界では魔法が使えないんですけどね!


 次回、「魔法少女マジカル☆ドリーマーズ」

 第9話「マッスル★ナイトメア襲来! バタフライと筋肉対決!」

 二月下旬更新予定です。

 なんだかとっても暑苦しい感じがいたしますわ!

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