三章 4.写真
青木の爺さんを殺害した犯人はまだ捕まっていない。
青木の爺さんの葬儀が終わった後、大内藤子さんを訪ねた。
藤子さんと弥生さんの関係を目撃してしまった。
その日、藤子さんから、弥生さんとの関係を打ち明けられた。
衝撃が大きかった。
弥生さんが、大内さんの塾へ来ない日を選んで、大内さんを訪問する事になった。
確かめたいことがあった。
岡島さんは、青木の爺さん、米原の爺と米田に、写真の少女に見覚えがないか尋ねていている。
「尋ねられていません」
藤子さんには、少女の写真を見せていない。何故だろう。
「ただ、青木さんからも同じ事を尋ねられました」
青木の爺さんは、去年の年末に封筒を届けに来た。
兄の淳也さんに宛てた見合写真だという事だったので、兄の部屋へ置いていた。
喫茶店の森岡サチさんが青木の爺さんに送った見合写真は、淳也さんに届いていた。
正月に大内淳也さんが帰省した。
藤子さんが見合写真の事を伝えた。
しかし、淳也さんには、神戸で結婚しようと思っている人がいるという事だった。
淳也さんが、日を改めて青木の爺さんへお詫びに伺うと云って、神戸へ戻った。
暫くして、青木の爺さんが、大内さんを訪ねて来た。
青木の爺さんは、先方から、写真を間違えて送ったかもしれないと連絡があったと云った。
藤子さんは、青木の爺さんと封筒の中の写真を一緒に見た。
「青木さんから、この写真を見たのか?と尋ねられたんですけど、兄が後日、青木さんにお詫びすると言って居間へ置いていました。封筒のまま、一度も見ていませんでした」
青木の爺さんも藤子さんも、その時、初めて封筒の中の写真を見たそうだ。
「先方に連絡して、また届けると云って、持ち帰ったんです。それが、あんな事になって」
青木の爺さんの家に少女の写真は残っていない。
喫茶店の森岡サチさんが云っていた。
青木の爺さんは、写真の少女が誰だか分かったと云った。
その人に渡すという事だ。
だから、写真は、その少女が持っている事になる。
「ところが、弥生さんは、封筒の写真をこっそり見ていたそうです」
須賀は驚いた。
居間の郵便置きに、青木の爺さん宛ての封筒があった。
送り主は覚えていないが、東京からだった。
封筒は開封されていた。
中にもう一通、封をしていない封筒が入っていた。
中に写真が入っていた。
と云う事だった。
「五歳か六歳くらいの少女の写真だったそうです。ただ、青木さんと見た時は、分からなかったのですけど、揚羽蝶の指輪を持っていたって言うんです」
写真の少女が揚羽蝶の指輪を持っていたそうだ。
五歳か六歳くらいの少女が写っていたというのは、藤子さんが青木の爺さんと一緒に見た写真と同じだ。
勿論、同じ少女が写っていた筈だ。
「言われてみれば、手に持っていたのが指輪かもしれないけど、模様が揚羽蝶だとは分かりませんでした。弥生さんが見間違えたのか、私が気付かなかったのか」
青木の爺さんと藤子さんが、少女の写真を見た時、揚羽蝶の指輪だとは気付かなかった。
弥生さんの勘違いか、青木の爺さんと藤子さんが気付かなかったのか。
それとも写真が、すり替わったのか。
誰かが、写真をすり替えた。
須賀は、言葉にしなかったが、そう思った。
恐らく藤子さんも、そう考えているに違いない。
写真をすり替えたとしたら、岡島さんしか居ない。
岡島さんが、大内医院を訪問したのは、写真をすり替える事が目的だったのだろうか。
何のために?
岡島さんが探していた写真の少女と、青木の爺さんが探し出した写真の少女は同じ少女なのだろうか。
森岡サチさんが、間違えて青木の爺さんへ送った写真と、岡島さんが持っていた写真に写っていた少女が、同じ少女だろうか?
森岡サチさんは、岡島さんに写真を渡してはいない。
もし、同じ少女だったとしたら、岡島さんは、どうしてその写真を持っていたのだろうか。
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