メリークリスマス(恋人の正逆位置)

「流石に二人共寝てるよね……逆位置さんに関しては気付かないと思うし、一応ここに置いておいて明日渡すか……」


 次に向かったのは恋人さんたちの部屋。恋人さんにはアロマキャンドル、逆位置さんにはペアリングを用意した。人一倍恋愛や美に関してストイックな彼女に、一息つける時間を作れるように。逆位置さんは恋人のヒロさんとのお揃いのものが何もないと言うので、二人の愛の証になるように。恋人さんの部屋と、逆位置さんの部屋は別のフロアにあるので、先に恋人さんの部屋の前に置き、立ち去ろうとした瞬間。


「……こんな時間に、何をしているの?」


 物凄く怖い笑顔を浮かべてこちらを見ている恋人さんと、目が合った。びっくりして声が出ず口をパクパクさせる私を前に。彼女は私の格好をじっと見て、ため息をついた。


「貴女ね、乙女ともあろう人が夜更かしはする、こんな格好をしてうろつくって……どういう神経をしているの?」

「だって……今日はその、クリスマスだから! それに私は主じゃないし、えっと……」

「……仮に貴女が主じゃないとしたら、不法侵入者ということになるけれどいいのかしら?」

「すみません私です、みんなにプレゼントを配ろうと思って……」

「……今回は大目に見るわ、貴女の考えあってのことなのはわかるから。でも次は事前に話しなさい、いいわね?」


 恋人さんはそう言って、私からプレゼントを受け取った。その後逆位置さんの部屋の前にプレゼントを置いてから、次の子の世界へと向かったのだった。


「……主様、何か置いていったみたいね」


 主が去ったあと、ゆっくりとドアが開き、青白い手だけが出てきてプレゼントに触れた。その手はそのままプレゼントをつかむと、部屋の中に戻り、またゆっくりとドアが閉まるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る