3#愛妻は何処へ・・・?

 「オマーーーーーー!!オマーーーーーー!!居たら返事しろーーーーーー!!」


 雄トラのショジはジャングルをどんどん分け入って、何処へ行方不明になった愛妻のオマを探し回った。


 「オマ・・・やっぱ、ぐうたらな僕に愛想つかせて逃げちゃったのかなあ・・・ごめんねオマ・・・今度は僕が狩りに行くからさあ・・・戻っておいで・・・オマ・・・!!

 オマ・・・オマ・・・」


 雄トラのショジの目から、責念と自責の大粒の涙が零れて頬に流れてきた。


 「オマ・・・オマ・・・オマ・・・オマ・・・オマ・・・オマ・・・オマ・・・オマ・・・」


 「何を探しかね?そこのトラ。」


 後ろで声がして振り向くと、一匹のヒョウがやってきた。


 「お前さん、虎の王のお妃を嫁にめとった噂の『ショジ』だよな。」


 ヒョウのカタリは、座った目でトラのショジを睨み付けていた。


 「は・・・はい・・・」



 ばきっ!!



 ヒョウのカタリは渾身の力を込めてトラのショジの頬にネコパンチでぶん殴った。


 「!!!」


 トラのショジはもんどりうってバウンドして、地面に転がった。


 「虎の王にコネでお妃を嫁にしだんだろうが!!許嫁を守れないへなちょこ孤児トラが、こんな高貴な身分のお妃を許嫁とは、不幸過ぎて可哀そうだぜ!!」


 怒髪天のヒョウのカタリは、うつ伏せのトラのショジの顔を前脚で押さえつけて、耳元に怒鳴り散らした。


 


 ・・・・・・


 ・・・・・・




 トラのショジは、幼き頃に人間が進出したジャングルの開発で住処を追われ、両親を毛皮の密猟者に殺され、孤児となって1匹で生きてきたトラだ。


 彷徨う日々の末、虎の王が司るジャングルで侵略してきたチンパンジー軍団と果敢に戦って、虎の王のジャングルを守った貢献を認められて、虎の王のお妃をめとったのだ。



 ・・・・・・


 ・・・・・・



 ・・・ヒョウさん・・・


 ・・・罵りたいなら、どんどん罵ってくれ・・・


 ・・・やっぱり僕は、お妃をめとる身分でもなく資格のないトラ・・・


 ・・・お妃を守れないこのちゃらんぽらんトラなんて・・・



 トラのショジの目から、悔し涙が流れた。




 ふうわり・・・



 ・・・空に青い大きな風船・・・はっ・・・!!


 トラのショジは、ヒョウのカタリがを顔を押さえつけている片脚を押し退けてムクっと起き上がった。


 「行かなくちゃ!!あの風船を追いかけて、僕のオマちゃんは行っちゃったんだ!!あの青い風船の側に、オマちゃんがいるっ!!」


 血相を変えて飛びだして行ってしまったトラのショジに呆気をとられたヒョウのカタリは、上空にフワフワと浮いている大きな青い風船を見上げた。


 「風船か・・・。ふ、風船?!」



 ぷぅ~~~~~~~~~~~!!



 「何だよビックリしたー!!いきなり傍で風船膨らますなよ?!黒ヒョウのアルダちゃん?」


 「だって気に入ってるもん。この黒い風船。で、あのトラが追いかけてる雌トラ。本当にあの雌トラはあの青い風船を追いかけて、ここまで来たと思うよ。」


 「風船・・・見つけたら皆はしゃぐ。そして、俺も!!アルダちゃーーん!!俺にもふうせーーーん!!」


  

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る