女子高生が王子に転生するのはアリですか?

天霧 音優

第1話 王子に転生?

「……危ない!」

どこか遠くから、私の危険を知らせる呼び声が聞こえた。

でも振り向いても、もう遅い。大きなトラックは、スピードを落とさずにまっすぐと向かってくる。

あ、私……もう、死んじゃうんだ。

私の死は、案外一瞬だった。痛みもなかった。

おそらく即死だったのだろう。

でも死んでしまったという実感がなく、これからどうなるのだろうということばかり考えてしまっていた。


「僕はどうしてここに……」

頭が痛い。

どこかも分からないその場所は、とにかく広い。


……このベットすごいフカフカ。いいやつなのかな。

そんなことを思っていると、ふと体に違和感を覚えた。

なんだか私らしくない小柄だけどちょっとがっしりした体型。

……ていうか、そもそも……あったはずの胸が、ないのよ。

これは……私の予想が的中しているならば……。



……私、転生したんだ。しかも男の人。しかも王子!

やっと状況が理解できた。

私、男の人になっても中身は女なんですからこれからどうしろと……? 特にトイレ! ……あぁ、考えただけでも顔が青ざめてしまいそう。

神様~、どうか私にもう一度転生のチャンスをください……!

こんな体じゃ町も出歩けないよ……。

日頃の行いのせいなんですか私がこんな状況に至ったのは……!


ていうかベットにいるのは転生ものでお決まりの……頭を打って記憶を思い出した……的な奴ですかね?

だから私は今ベットに?

あぁ…んだから変な記憶がめちゃめちゃに入り込んできてるのか。

名前が…ん「ラルフ・アンデ」ん…?

名前からしてもう異世界じゃんここ。

やっぱ異世界転生しちゃってますわ。

あ~あ、女としての人生を前世でもっと味わっておけばよかった。


そしてまた思い出したの。

……私には婚約者がいるってこと。

しかもめちゃめちゃかわいい銀髪にロングヘアーの緑色の目の女の子!

女としても惚れてしまいそうなくらいにかわいい。

あんなかわいい子と結婚できる将来が待ってるかもしれないなら私はこのままでいいかな。ゲームだと男女問わず人気の出るキャラだよね~。

名前は「アンネ・ヘンケル」

アンネはなんか日本にもいそうだね。

でも名前がかわいいのよもう。

あぁ~、今の記憶を思い出す前はさぞかしいい思いしてきたんだろうなぁラルフ~?

私は一人ニヤッと笑いながら自分に問いかけていた。

王子に転生したのにこんなことしてる女子は私だけだと思う。


「……よいしょ」

私はそういうとベットから降りた。

どうも、頭を打ったからなのか、この自分の記憶があいまいになっている。

前世の記憶はいくらでも入ってくるのに。

今は自分の顔すらどんなだったか覚えていない。婚約者の顔は憶えているのに。

鏡……はここか。

鏡を見つけ出すと私は鏡に映る自分の姿をじっと眺めた。


白い肌に小柄な体型。

それでもって後ろに結ばれた髪の毛。

……女の子、かな?

自分がどう見ても女の子にしか見えないことに驚愕する。

あ、でも今私は15歳くらいだからこんなでもおかしくはない……のかな。

二次元のキャラみたい……。


「……ラ、ラルフ様っ! もう大丈夫なのですか……!?」

突然飛び出してきたメイドさんの姿に私は驚き、はねるように体を震わせる。

「あ、うん。僕……はもう大丈夫だよ。だからもう仕事に戻ってて」

私はそう言ってメイドさんに微笑みかける。

メイドさんは安堵したようにほっと胸をなでおろし「では失礼します」と部屋を後にした。


はぁ……。

やることがなさ過ぎて今すぐ倒れたい……。

すると部屋のドアが開かれ、お母様が入ってくる。

「ラルフ、アンネちゃんが待ってるわよ。頭も大丈夫そうだし客室まで行ってあげなさい」

「……アンネが? あ、うん。わかった。今すぐ行くよ」

私はそう返事をすると帰っていくお母様のあとをお見送りそのあとに部屋を出て客室に向かう。


「あ、ラルフ! 頭うったみたいだけど大丈夫なの? ちょっと心配で来ちゃったのよ」

そう言いながら少し恥ずかしそうに顔を赤らめる彼女。

せっかくの機会だからと、私はアンネと出かけることを提案した。

「うん。大丈夫だよ。ありがと。……そういえば、今度さ、一緒にどっかでかけない? もちろんお母様にも許可とるからさ。最近暇してるって聞いたし。たまにはこういうのもいいでしょ」

私はアンネにそう言うと、アンネは目を輝かせて満面の笑みで「えぇ! もちろんよ!」と乗り気でうなずいた。

「……そっか、ならよかった」

僕は安心してそうつぶやくとアンネに微笑みかける。

「じゃあ……私はこれで失礼するわね」

「うん、……また。日時が決まったら伝えるよ」

そう言いながら私はアンネを見送った。


……ふう、やれやれ、いまだに転生したっていう自覚が持てていない。

というか私には女友達がたくさんいること思い出してしまったんだけど……これはハーレムで間違いないんですかね?

別に……いいんだけど私も一応女なわけだし……ほら、ね? 恋愛とかも女の子が対象になっちゃうから私はまともな恋愛できないのかなぁ……なんて。

私はみんなかわいいから誰でもいいと思う。


……はっ! これは……最終的に誰か一人を選ばないといけないってことになるよね……!?

もしやこれ……私が何するかで運命を決める……的な?

本格的なギャルゲーじゃんこれ。

……できれば乙女ゲーがよかったかな。



なんで……そんな! こんな人生の始まり方いやだ〜……!

私はこれからどうすれば……!?

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