第162話 女子高生(おっさん)と皇めらぎと百合の時間②


 征服したい──男の子に産まれればそんな歪んだ思想を誰しも心の奥底に秘めているのかもしれない。

 全てを自分の思い通りに動かし、支配し、自由にしてみたい──そしてそれを相手も望んでいるのならば、相手も征服されたいと密かに願っているならば……それはWin-Winであり、皆が幸せになりえよう。


 現在、18禁の壁により描写できない光景が、皇めらぎの部屋にて行われている。

 穢(けが)れを知らぬ女子高生が、目隠しをされあられもない姿で昼日中から口にはできない道具(めらぎがネット通販で購入)を使われ、精神がおっさんの俺に征服されているのだ。


 おっさんの秘めたる性癖──征服欲。

 甘々いちゃいちゃとは一線を画す……女の子を束縛し、一方的に好きなようにする行為。

 普通の行為に物足りなくなったカップルが刺激を求めるためによく手を出すやつ──互いに強固な信頼関係がなければ『変なことをすると嫌わてしまうかもしれない』と二の足を踏んでしまうだろう。実際にモテるようになった俺(アシュナ)でも、今まで踏み込めなかった領域だ。


 だが彼女は『中年のおっさんにいいようにされたい』という歪んだ性癖を秘めているため、これは決していけない行為ではなくなり……需要と供給が奇跡的に一致した愛の営みへと昇華する。

 遂に、おっさんはこのレベルまで到達したのだ。


 しかし、これは間違いなく18禁の領域。

 既に皆の年齢は公(おおやけ)に知れ渡っており、『実は成人でした』など今更に注釈してもネットポリスの眼は誤魔化せない。

 けれど……夏休みを彩る思い出の一ページが、規制の壁によりこのまま『事後』の描写へ突入するのはあまりにも味気ない。


 だが心配なかれ、奇しくもおっさんは未来からタイムリープしてきた存在である。今と比べものにならないくらい大規制時代となった令和──女子高生が広告に載るだけで猛抗議を受けた未来……そんな監視化社会を生きてきたおっさんに2000年台初頭なぞ生易しい難易度である。


 やってみせよう、かつて週刊少年ジャンプでありながらギリギリのえろを攻めた先人達のように………18禁の壁を越えずにこの愛ある行為をいつの日か語れるように〈変換(コンバート)〉させてみせよう。




 これはゲームである。

 俺とめらぎは今、刺激を求め『目隠しをして縛られながら何をされているか当てる』という芸人さながらのゲームに興じている。もう一度言おう、これは遊戯である。


「あんっ……アシュナっ……だめっ……そこはダメっ」


 チェリーを乗せた大きな柔らかプリンが揺れる、さすがお嬢様の家──おやつも上質だ。口に含むと……『そんな食べ方、はしたないですわっ』と顔を紅くした彼女がびくんと跳ねた。

 瞬間、滴る汗が──蛇口から落ちる水滴のように雫となりて弾け飛ぶ。

 透明度の高い水滴の向こう側には……『謎の割れ目』が反映されているが、これは単に『謎の割れ目』でしかない。水滴は世界の如何なるものも反射で映し出すのだ。


「ふふ……こんなに濡らして……いけない娘だね……」


 俺は彼女の太ももに滴る水滴を見てそう言った。

 まるでオッサンのような台詞だ、それはそうか──俺はおっさんなのだから。

 まぁそれはさておき、俺が指摘した太ももの水滴とは彼女がチェリーを食べて口からこぼした果汁である。まったく人に食べ方を注意しておきながらなんと行儀の悪い娘か。


「ぅ………ぁ……ご……ごめん……なさいっ……」

「お仕置きしなきゃね……この大きなモノで掃除しながら……栓(ふた)をしてあげる……」


 うねうねと縦横無尽に動きながら、妖しく光る道具を手に持った──クイックルワイ●ーである。これ一つで床掃除がはかどるお手軽アイテムだ。

 目隠しして縛られている彼女の手にそれを握らせる──それが何か直ぐに理解したようで……紅潮と蒼白、矛盾した色味を顔に滲(にじ)ませた。


「こ……こんな大きなものっ……絶対入りませんわっ」


 彼女はクイックルワイ●ーの凄さを知らないようだ、どんな隙間の埃(ほこり)をも掃除できる便利道具だというのに。

 床掃除、もといお仕置きをしなければなるまい──否定の懇願は期待の現れと同義である、と彼女の言葉を無視し……指一本入れるのが精一杯の小さな隙間にゆっくりと道具を侵入させた。


「っ……ぅあああぁぁっん……!!」


 ぬるぬると──濡れた箇所を拭き取りながら隙間に埋もれていくクイックルワイ●ー。

 そんな様子を肌で感じとった彼女は思わず悲鳴に似た叫びを漏らす。

 まったく技術の進歩は凄まじい──きっとそんな想いをクイックルワイ●ーに馳せているのだろう。


 入り口付近を何度往き来しただろう。

 しかし、濡れた床は更にその光沢を拡げるばかりで一向に収まらない。きっと何処かで水漏れしているのだろう。


「──っ……はぁっ……はぁ……はぁ……アシュナっ……アシュナもっ……脱いでっ………」

「もう脱いでる……じゃあ初めるよ……」


 新たなゲームの始まり──それは『貝合わせ』。

 平安時代末期から行われている貝殻を合わせる遊戯であり、貝の形・色合い・大きさ・種類の豊富さで優劣を競う貴族たちの遊びである(※Wikipedia参照)


 絶対に、現代における女性同士の性遊戯のことではない。


 まったく……さすがお嬢様、遊び一つにおいてもブルジョワだ。俺も成り上がりとはいえ、肩書や持ち金においては上流貴族の仲間入りを果たしたと言えなくもない。そのため、それを体験するために自前の貝を持参して貴族の遊戯に興じようと言うわけだ。


「んっ……柔らかいっ……めらぎの貝……こんなになってるっ……!」

「あっ………アシュナっ……!! アシュナのもっ……! 固くなってきてますわっ……!」


 お互いの貝をゆっくりと擦り合わせると……徐々に身体が高揚し、更に火照りを増す。

 どちらの貝がより優れているかの勝負──などは最早どうでもよく……ただただ、お互いが気持ち良くなればもうそれで満足だった。


「あっあっあっ……アシュナっ……もっ……だめっ──!!」

「うんっ……私もっ……──!」

「──ぁぁぁああああっ!!!」


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「──てな感じで描写してみたんだけど……どうかな?」

「………ふふっ、うふふふっ! ごめんなさいっ……でもっふつうに描写されるよりも余計に恥ずかしいですわよっ……うふふっ……!」


 ベッドで余韻に浸りながら先ほどの行為を言葉に乗せて語ってみると、めらぎは可笑しそうに声を上げて笑った。

 う~ん、やはり難しい……如何に先人達のギリギリラインのエロを攻める技術が凄まじいか思い知らされたのだった。





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