第150話 女子高生(おっさん)の親衛隊②


〈ケンの部屋〉


 ──さて、風呂も入って時刻はまだ宵(よい)の口。

健全な高校生にとって明日が休日となれば……まだまだ夜はこれからというわけで、わざとエロ可愛い寝間着を着てみんなを欲情させつつ、やる事と言えば一つしかないだろう。


「タケル殿っ!! 『霊峰高校』を真っ先に選ぶのは卑怯でござるぞ!」

「違うって! アシュナが使えるように取っておいたんだよ! ほら、アシュナ使え」

「ありがとう、でも私は『煉豪高校』が好きだから煉豪でいいよ」

「我らもアシュナ殿に『霊峰』を譲ろうと思っていたでござるよ! なにいいところを見せようとしてるでござるか!」


 そう──昭和産まれの陰キャ達に『お泊まりの時に必ずやるTVゲーム』と聞けば、大抵の人間が同じ答えを出すだろう。

 【熱血硬派く●お君】──ファミコンにて発売されたこのレトロゲームは、現代っ子における【スマ●ラ】や【スプラ●ゥーン】の位置にあたる……皆で盛り上がれる中毒性抜群のゲームソフトだ。多くのシリーズが発売されているが……その中でも特筆すべきなのは四人同時対戦ができる対戦アクションゲーム【熱血行進曲それゆけ大運動会】。未来で様々なゲームに触れてきたおっさんでもこれだけは外せない一品。

 主人公であるくにお率いる熱血高校チームをはじめとする全4チームで、クロスカントリーや玉割りなどを行い、得点を競うゲーム。攻撃ありで相手を妨害しながらレースしたり、個人技でバトルしたりと何でもありの運動会。単純ゆえに誰でも心奪われること間違いなしだ。


 ちなみに、先程揉めていたのはチーム選び。4チームの中でチート集団である最強の霊峰高校を誰がとるかというのはこのゲームをプレイするにあたり必ず通る……リアルファイトに繋がる一因である。


 筋トレマンは相変わらず筋トレしてるので、ちょうど四人プレイになり懐かしのゲーム時間に心踊らせる。実はこのオタク集団……かなりのゲーマー達であり、前世ではよくボコボコにされていたものだ。


 だが、伊達にあれから二十も齢を重ねてはいない。様々なストレス発散にありとあらゆる対戦ゲームの経験を重ねた俺(アシュラ)に死角なし。


 二十年もの月日(アドバンテージ)、無双して見せてあげよう。


「下水道待ち伏せハメはなしね」

「…………」

「あぁっ! そういえばこのキャラ棒持つと輝くんだった、えぃっ!」

「…………ぅっ」

「やったー、連続1位だー! 熱中しすぎて暑っつい、胸の谷間汗すごいや……」

「──ぐはっ……」

「アシュナ君っ! 素晴らしいゲームの筋肉(うで)だね!」

「へへ、未来でもこつこつ一人で……じゃなくて、これやり込んだからねー」

「………コアなゲームにも精通する可憐女子……」

「いや、それよりも可愛すぎるだろ……」

「アシュナちゃん……前、閉めて……」

「え、あ、ごめん。ちょっとブラ外す……うわ、いつの間にかパンツまでぐしょぐしょだー……ちょっと気持ち悪いから脱いでいい? ……って、うわぁぁっ!? みんなどしたの?! 血塗れになってるけど!」

「皆、鼻血を出して気を失っているようだね! 過度なトレーニングのしすぎかな!?」


 どうやらゲームどころか、現実でも無双し過ぎてしま ったようで──結局、コミケの詳しい具体案は聞けずじまいで何も決まらなかった。

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